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60年代初頭にジャズ・シーンに颯爽と登場し、以後アコースティックからエレクトリック、フュージョン、果てはフリー・ジャズまでその守備範囲を広げ、八面六臂な活動で常にオーディエンスを楽しませてきたチック・コリア。その多岐に渡る作品群を今、俯瞰してみた時、70年代に始動したゲイリー・バートンとのコラボレーションは、彼の音楽史の中にあって一大潮流を築いた重要プロジェクトであったと理解できるのではないでしょうか。
そんな2人の名盤『 Crystal Silence 』から35年の月日が流れ、今回彼らのパートナーシップ35周年を記念して2枚組CDが発売されました。
Disc1 は、昨年創立75周年を迎えたシドニー交響楽団との共演ライブ。録音は2007年5月10日、12日に、指揮者にベルリン在住のアメリカ人,ジョナサン・ストックハマーを招き、シドニー・オペラハウスで行われました。オーケストラのためのスコアは、当初はチックとゲイリーで書く予定でしたが、あまりにも二人のスケジュールがタイトであったため、止むを得ずチックが全幅の信頼を寄せているサックス奏者、ティム・ガーランド(チックのOriginやビル・ブラッフォードとのEarthworksでも有名)に一任したようです。演奏曲目は、以前に2人で演奏経験のあるチックのオリジナル曲、≪ Duende ≫、≪ love Castle ≫、≪ Brasilia ≫、≪ Crystal Silence ≫、≪ La Fiesta ≫など。
Disc2は、2人のデュオで≪ Senor Mouse ≫や≪ La Fiesta ≫などの涙もんの名曲に加え、エバンスの≪ Waltz for Debby ≫、ガーシュインの≪ I Love You, Porgy ≫などを演奏しています。ゲイリー曰く。「今回の35周年記念ツアーの目的は、ファンの方々と一緒にこの35年という月日を振り返ることだったからね(こんな選曲になったんだよ)。」2人のライブは75か所にも及んだため、どの音源を採用するか迷ったようですが、最終的には2007年7月に行われたノルウェーでのTHE MOLDE JAZZ FESTIVALでのライブが採用されました。このフェスティバルが開催されたホールは、400から500人収容の比較的小規模のホールで、録音には理想的であったといいます。しかも基本的に2人は暗譜で演奏していたため、たびたびミスすることもあったようですが、このフェスティバルでの演奏はミスもなく完璧であったとのこと。ただし、≪ Senor Mouse ≫だけはミスがあったため、スペインのカナリア諸島、テネリフェでのライブ音源に差し替えたそうです。
さて、肝心の内容ですが、もうテキストにするのが虚しくなるほど、素晴らしい演奏です。こんなブログを読んでいる暇があったら、今すぐ、3000円握りしめてCD屋さんに駆け込みましょう。そしてできる限り高価な装置で、許す限り大音量で彼らの音楽に身を任せることをお薦めします。
と言ってしまうと身も蓋もありませんので簡単にインプレッションを記します。
シドニー交響楽団との共演では、チックのオリジナル曲が壮大なスペクタクル作品に生まれ変わり圧倒的なスケール感をもって迫ってきます。言葉に言い表せないくらい素晴らしい演奏です。オーケストラと二人の相互の音楽に対する信頼、リスペクト、綿密なリハーサル、これらがあって初めて実現するコラボレーションなのでしょう。個人的にはこのDisc1 が好きです(きっぱり)。もう完全に鳥肌ものです。M-2 ≪ love Castle ≫やM-5≪ La Fiesta ≫の終盤に向かうにつれて何重にも畳み掛けるようなオーケストレーション。高まる高揚感。完全にジャズというジャンルの枠を超えた音世界。世の中に星の数ほど多種多様な音楽があれど、これほどの名作は私は知らない(ちょっと言い過ぎ)。
Disc2 は基本的には『 In Concert, Zurich, October 28, 1979 』を踏襲する内容ですが、『 In Concert, ~ 』が最初の3曲≪ Senor Mouse ≫、≪Bud Powell≫、≪ Crystal Silence ≫が素晴らしい出来ではあるものの、後半はやや緩慢な印象が拭いきれない作品であったのに対して今回の新作は、全8曲、終始、緊張関係が持続し、無尽蔵のクリエイティビティーとイマジネーションが止めどなく発露し、『 In Concert, ~ 』よりもスケール感のある硬質なロマンチシズムに貫かれた音世界が繰り広げられています。
いや~、実は今日、お昼頃に本作を含め山中千尋の『 after hours 』、Karel Krautgartner Ochestra、Peter Madsenの『 Three of a kind 』などなど、10枚程買ってきたのですが、この『 The New Crystal Silence 』を最初に聴いたら嵌ってしまい、繰り返しず~と聴いていて、他のCDを聴く気になれません。ホント、感動的な作品をチックは作ってくれました。キース・ジャレットが霞んで見えます。ハンコックなど遥か彼方に遠退いてしまい姿すら見えません。やっぱりチックは凄いわ。
Chick Corea & Gary Burton 『 In Concert, Zurich, October 28, 1979 』 ECM 1980
個人的にはチック・コリアをリアルタイムで聴き始めた最初の作品なので、並々ならぬ思い入れがあります。大学1年の蒸し暑い夏の日、エアコンもないアパートの一室で初めて聴いた時の衝撃と感動は今でも忘れられません。数多くの記憶とリンクする本作。今でもLPで持ってますよ。
60年代初頭にジャズ・シーンに颯爽と登場し、以後アコースティックからエレクトリック、フュージョン、果てはフリー・ジャズまでその守備範囲を広げ、八面六臂な活動で常にオーディエンスを楽しませてきたチック・コリア。その多岐に渡る作品群を今、俯瞰してみた時、70年代に始動したゲイリー・バートンとのコラボレーションは、彼の音楽史の中にあって一大潮流を築いた重要プロジェクトであったと理解できるのではないでしょうか。
そんな2人の名盤『 Crystal Silence 』から35年の月日が流れ、今回彼らのパートナーシップ35周年を記念して2枚組CDが発売されました。
Disc1 は、昨年創立75周年を迎えたシドニー交響楽団との共演ライブ。録音は2007年5月10日、12日に、指揮者にベルリン在住のアメリカ人,ジョナサン・ストックハマーを招き、シドニー・オペラハウスで行われました。オーケストラのためのスコアは、当初はチックとゲイリーで書く予定でしたが、あまりにも二人のスケジュールがタイトであったため、止むを得ずチックが全幅の信頼を寄せているサックス奏者、ティム・ガーランド(チックのOriginやビル・ブラッフォードとのEarthworksでも有名)に一任したようです。演奏曲目は、以前に2人で演奏経験のあるチックのオリジナル曲、≪ Duende ≫、≪ love Castle ≫、≪ Brasilia ≫、≪ Crystal Silence ≫、≪ La Fiesta ≫など。
Disc2は、2人のデュオで≪ Senor Mouse ≫や≪ La Fiesta ≫などの涙もんの名曲に加え、エバンスの≪ Waltz for Debby ≫、ガーシュインの≪ I Love You, Porgy ≫などを演奏しています。ゲイリー曰く。「今回の35周年記念ツアーの目的は、ファンの方々と一緒にこの35年という月日を振り返ることだったからね(こんな選曲になったんだよ)。」2人のライブは75か所にも及んだため、どの音源を採用するか迷ったようですが、最終的には2007年7月に行われたノルウェーでのTHE MOLDE JAZZ FESTIVALでのライブが採用されました。このフェスティバルが開催されたホールは、400から500人収容の比較的小規模のホールで、録音には理想的であったといいます。しかも基本的に2人は暗譜で演奏していたため、たびたびミスすることもあったようですが、このフェスティバルでの演奏はミスもなく完璧であったとのこと。ただし、≪ Senor Mouse ≫だけはミスがあったため、スペインのカナリア諸島、テネリフェでのライブ音源に差し替えたそうです。
さて、肝心の内容ですが、もうテキストにするのが虚しくなるほど、素晴らしい演奏です。こんなブログを読んでいる暇があったら、今すぐ、3000円握りしめてCD屋さんに駆け込みましょう。そしてできる限り高価な装置で、許す限り大音量で彼らの音楽に身を任せることをお薦めします。
と言ってしまうと身も蓋もありませんので簡単にインプレッションを記します。
シドニー交響楽団との共演では、チックのオリジナル曲が壮大なスペクタクル作品に生まれ変わり圧倒的なスケール感をもって迫ってきます。言葉に言い表せないくらい素晴らしい演奏です。オーケストラと二人の相互の音楽に対する信頼、リスペクト、綿密なリハーサル、これらがあって初めて実現するコラボレーションなのでしょう。個人的にはこのDisc1 が好きです(きっぱり)。もう完全に鳥肌ものです。M-2 ≪ love Castle ≫やM-5≪ La Fiesta ≫の終盤に向かうにつれて何重にも畳み掛けるようなオーケストレーション。高まる高揚感。完全にジャズというジャンルの枠を超えた音世界。世の中に星の数ほど多種多様な音楽があれど、これほどの名作は私は知らない(ちょっと言い過ぎ)。
Disc2 は基本的には『 In Concert, Zurich, October 28, 1979 』を踏襲する内容ですが、『 In Concert, ~ 』が最初の3曲≪ Senor Mouse ≫、≪Bud Powell≫、≪ Crystal Silence ≫が素晴らしい出来ではあるものの、後半はやや緩慢な印象が拭いきれない作品であったのに対して今回の新作は、全8曲、終始、緊張関係が持続し、無尽蔵のクリエイティビティーとイマジネーションが止めどなく発露し、『 In Concert, ~ 』よりもスケール感のある硬質なロマンチシズムに貫かれた音世界が繰り広げられています。
いや~、実は今日、お昼頃に本作を含め山中千尋の『 after hours 』、Karel Krautgartner Ochestra、Peter Madsenの『 Three of a kind 』などなど、10枚程買ってきたのですが、この『 The New Crystal Silence 』を最初に聴いたら嵌ってしまい、繰り返しず~と聴いていて、他のCDを聴く気になれません。ホント、感動的な作品をチックは作ってくれました。キース・ジャレットが霞んで見えます。ハンコックなど遥か彼方に遠退いてしまい姿すら見えません。やっぱりチックは凄いわ。
Chick Corea & Gary Burton 『 In Concert, Zurich, October 28, 1979 』 ECM 1980
個人的にはチック・コリアをリアルタイムで聴き始めた最初の作品なので、並々ならぬ思い入れがあります。大学1年の蒸し暑い夏の日、エアコンもないアパートの一室で初めて聴いた時の衝撃と感動は今でも忘れられません。数多くの記憶とリンクする本作。今でもLPで持ってますよ。
いやぁ、本作は本当に素晴らしいですね。
オーケストラ・サイドとデュオ・サイドの両方楽しめて、一粒で二度美味しいです(笑)
それにしてもオーケストラ・アレンジがティム・ガーランドが担当していたなんて、crissさんの記事を拝見するまで思ってもみませんでした。
クレジットをよく見たら確かにそうなってますね。
さっそく追記しておきましたです(苦笑)
ティム・ガーランド。naryさん、けっこう好きではありませんでしたっけ? 彼のリーダー作も記事書いてましたよね。でもこんな素晴らしいスコアが書けるなんて吃驚ですね。本文には書きませんでしたが、意外に一番驚いたのはティム・ガーランドの才能だったりしました。
ということで、こちらからもTBさせていただきます。
naryさんのところも同じですが“In Concert Zurich Oct 28,1979”への思いは同じですね。
今度のアルバムはその雰囲気と違いますが、いいところを探したら、私は記事みたいなことを感じました。
チックとバートン今度のJAZZ批評に書くことにしました。
私はチューリッヒへの思い入れが強く,このアルバムについてはやや違ったトーンで書いていますが,これはあくまでも趣味/嗜好の世界と割りきりたいと思います。
TBさせて頂きます。
曲聴きの特集ですか?
僕も何を書いてよいやら悩んでいますが、
バート・バカラックでいこうかと
考えています。
こちらからもTBさせていただきます。
では、また。
僕もチューリッヒへの思い入れ強いですよ。感受性がまだ鋭かった若き日にリアルタイムで聴いているのでなおさらです。
Disc1に関しては、中年音楽狂さんのような感想を抱く方って多いと、私も思いました。個人的には、年をとるにつれて、シンフォニックな音の響きに興奮するようになってきましたので、こういうオーケストラ物にはすぐに飛びついてしまいます。ビッグバンドも昔はほとんど聴きませんでしたが、最近はめちゃくちゃ好きですし。
もともと、シンフォニックなプログレが好きだったので、、、。
Disc1好き と Disc2 好き。
同じジャズファンでも好みの分かれるところですね。
2800円ははっきり言って安すぎるくらいです。
オケ付きの作品は元手がかかってますからね。
もう少し高くてもよいくらいです。
チックの多作傾向は今後も続きそうで怖いです。
「Return to Forever」というと、カモメのジャケットのファーストが有名ですけど、個人的にはむしろ『浪漫の騎士』の方が印象的でしたね。聴いたことありますか? 未聴ならぜひ聴いてみてください。古典的フュージョンの大傑作だと、思いますが。