デヴィッド・ヘイゼルタインのビーナス通算5枚目の新作はバド・パウエル集で,そのタイトルも『Cleopatra’s Dream 』です。<クレオパトラの夢>を入れれば日本人が飛びつくと思ったら大きな間違いですよ,原さん。そろそろバド・パウエル=クレオパトラの夢という発想はおしまいにして欲しいものです。1998年の1作目がビル・エバンス集で,2000年の2作目がホレス・シルバー集で,さて3作目はバド・パウエル集でも持ってくるのかなと思いきや『 Pearls 』では<マスカレード・イズ・オーバー>や<ダーン・ザット・ドリーム>などのスタンダードを中心にオリジナルの楽曲を3曲挟み込み,がっちり絞めた硬質な仕上がりのアルバムで,ほっとしていたのに,とうとう今回バド・パウエル集を作ってしまいました。しかもまたもや裸ジャケで中年親父を餌食にしようとしていて,原さん,やることがちょっと下品です。有名ジャズ雑誌には決して書かれないけど,みんなこの路線には食傷ぎみですよ。そろそろ気づいてくださいね。
ということで,分かっていながら本作も買ってしまいました。個人的にはバド・パウエルはあまり好きではない部類のピアニストなので,まずはバド集というだけで,一歩引いてしまうところですが,まあ,出来はそれなりに合格点なのではないでしょうか。というか,ヘイゼルタインのアルバムには<はずれ>が皆無なんですよね。そのかわり<大当たり>も無いのですが。いつも82点ぐらいとって試験をすり抜ける優等生的ミュージシャン。技術はすごいが,保守的な演奏スタイル。冒険は決してしない。原さんに「バド演ってよ~。」と言われれば,素直に1枚アルバム作ってあげちゃう人の良さ。僕の中ではそんな印象があります。
でも<はずれ>がないということは素晴らしいことではあります。忙しい時間の中で,Jazzを聴く時間は限られています。家に帰れば子供をお風呂に入れなくてはなりません。ベランダの植物には水もやらなければなりません。妻のくだらない世間話の相手もしなければならないのです。そんな多忙な生活の中でJazzを聴けるのはせいぜい1時間から2時間でしょう。<はずれ>は極力避けたいのです。名前も知らない,しかも読み方も分からない欧州ジャズメンのアルバムで貴重な時間を無駄にはしたくないのです。そんな時に,ヘイゼルタインは良質なJazzを保証してくれる頼もしいピアニストなのです。という安心感からか,僕のCD棚には,彼のアルバムが13枚もあります。ここで,全部は紹介できないので,ビーナスの5枚を好きな順に載せておきます。
★★★★★
2004 『 Alice In Wonderland 』George Mraz(b), Billy Drummond(ds)
選曲がとにかく好み。<Beautiful Love>,<Alice In Wonderland>,そして大好きな<Danny Boy>が入っているので,つい手が伸びてしまう。ここでのムラーツとドラモンドは凄く良い。ちなみにジャケットの少女の後ろ姿が昔(あくまで昔)の妻の後ろ姿に似ていて,何故か愛着があるアルバムです。
★★★★
2001 『 Pearls 』Peter Washington(b), Joe Farnsworth(ds)
「原さん,たまには好きな曲を演らしてよ。」とだだをこねて(?)作ったビーナス3作目。ヘイゼルタインの堅実なハード・バピッシュなソロが爽快です。こういうアルバムをヘイゼルタインに期待しちゃいます。GO JAZZに吹き込んだ『 After Hours 』に通じる最も硬派なヘイゼンタインが聴けます。
★★★★/2
2000 『 Senor Blues 』Peter Washington(b), Louis Hayes(ds)
ホレス・シルバー集です。ホレス好きの僕としては<The Back Beat>,<Song For My Father>など,よだれが出そうな曲がいっぱい詰まっていて,楽しいアルバムです。ピーター・ワシントンとルイス・ヘイズの,いわゆる「The Classic Trio」のメンバーを起用したことも成功してます。こういう楽曲にはムラーツは絶対合いません。今回の『Cleopatra’s Dream 』もピーター・ワシントンとルイス・ヘイズで聴きたかった。
★★★
1999 『 Waltz For Debby 』George Mraz(b), Billy Drummond(ds)
ビル・エバンス集ではあるけれど,何故か聴き終えた後,エバンスを聴いた感じが希薄。当たり前で,ヘイゼルタインはエバンスの楽曲を素材として使用したに過ぎず,ソロになればお得意のバピッシュ・フレーズの連発。全然エバンス風には聴こえません。本作を聴くなら,エバンスのアルバムを聴いた方がずーといい。当たり前か。でもジャケット・センスはピカイチ。結構売れたんじゃないでしょうか。
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「how it is」「waltz for debby」「a world for her」「senor blues」「blues quarters vol.1」「the classic trio vol.2」「pearls」「good herarted people」「the classis trio meets eric alexander」「manhattan autumn」「close to you」「alice in wonderland」「modern standards」「cleopatra's dream」
私もなんだかんだ書いておりますが、やっぱりかなり好きなのは確かなんですな。
昨年マリーナ・ショウで生ヘイゼルタインを観たのですが、打ち上げにも参加させてもらってAlice In Wonderlandにしっかりとサインを頂戴しております(^^)
classic trioは,vol1は持ってますが,vol2は持ってません。意外に僕はピーター・ワシントンとルイズ・ヘイズのトリオが好みです。
エリアレからみや、サイドでもっているのですが、何故かリーダー持ってないとおもいます。
別に理由はないのですが、なんとなく、今日に至る!って感じです。
Eddie Higgins についで、クリスマスアルバムだしてくれれば、ヴェーナスだって即決買いま~す。
ヘイゼルタインの追っかけするとお金がいくらあっても足りませんです。だから最近はエレアレの追っかけは止めました。まあ,大体音は想像できますし。
てな事言ってると,ほとんどのアルバムは聴く前に大体の想像できてしまうんですよね。最近はハッとするアルバムになかなかめぐり合えません。
エディー・ヒギンズは嫌いじゃないんですけど,刺激が少ないと言うか,甘すぎるのか,あまり愛聴はしてません。クリスマス・アルバムはあまり僕,聴かないんですよね。
そうそう,ダイアナ・クラールのクリスマス・アルバムもまだ買ってないし。
興味あるアルバム全部、買えないモン。
サニーサイドからでてるTHOSE QUIET DAYSは愛聴盤ですけど。
今ね、新譜はじから欲しくなるのやっと落ち着いてきた、っていうか、あきらめた。
みなさんの聴いてるの全部一緒に追いかけるの限界あるもん。。
そう、、私もお勧め、って言う感覚ではなくて
個人的愛聴盤、って、ものです。
そんなにみんなの聴いているのを追いかける必要ないように思いますが。
それより,すずっくさんはジャズに対する素晴らしい感性と,それを表現できる文才があるのですから,それで十分魅力的だと思いますよ。
すずっくさんの紹介するジャズは,どれもすばらいいですもの。数じゃなく,質ですよ,要は。
昨日もヤコブ・カールソンやオリヴェ・アントウスあたりでも記事書こうかと思って,検索していたら,既にすずっくさん書いていて,ちょっとくじけました。
いつも後だしじゃんけんみたいでばつが悪いので,書くの止めました。でも好きだからそのうち書いちゃいますね。
「mirukoの時間」ココログのakeminです。
ピーター・ワシントン(b)、ケニー・ワシントン(ds)、について書いています。よろしかったら見に来てください!