雨の日にはJAZZを聴きながら

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Matt Dusk 『 Back In Town 』

2007年10月15日 23時19分50秒 | JAZZ
トロント生まれの若き Crooner、マット・ダスクのメジャー第二作目にして本邦デビュー盤。Swing Journal 誌 や Jazz Life 誌などにレビューやインタビュー記事が掲載され、更には見開きカラーの大々的な広告も打たれているので、このジャケットには見覚えがある方も多いのではと思います。セクシーで都会的な美声にこのイケ面。これは売れるとレコード会社 DECCA は彼に商品としての価値を見出し、二作目にしてなんとビッグ・バンド+ストリングスとの共演盤を制作したのです。大概この手のコマーシャリズムとメジャー志向に根ざした作品は、豪華な音作りなだけで飽きやすい内容であることが多いのでいつもならスルーするところですが、よく記事を読むとアレンジャーとしてなんとPatrick Williams (パトリック・ウイリアムス)、 Sammy Nestico (サミー・ネスティコ)、そしてVince Mendoza (ヴィンス・メンドゥーサ)らが名を連ねているではありませんか! こんな贅沢なアレンジャーを揃えた作品はあまり聴いたことがありません。それだけで絶対買い、です。

パトリック・ウイリアムスといえば、86年の『 10th Avenue 』が有名ですよね。リチャード・ティー、マイケル・ブレッカー、ランディ・ブレッカー、ビル・ワトラスらなどを擁した超豪華ビッグ・バンドの傑作でした。主に映画音楽、TV音楽畑のアレンジャーなので、あまり知名度は高くありませんが、硬質で堅実なアレンジをする名手です。サミー・ネスティコは知らない人はいないでしょう。カウント・ベイシー・オーケストラのアレンジャーとして一世風靡したビッグバンド界のマエストロ。兎に角、踊りたくなるようなご機嫌なアレンジをするジャズ職人です。そして、ヴィンス・メンドゥーサは僕がもっとも尊敬する現代のコンテンポラリー系アレンジャーです。エリントンやベイシーにやや食傷気味だった80年代末に耳にした彼のデビュー盤『 Vince Mendoza 』が衝撃的でした。「こいつは天才だ!」と興奮し、死ぬほど聴いた名盤でした(次回、取り上げることにしましょう)。実はもう一人、Cliff Masterson (クリフ・マスターソン)というアレンジャーが参加しています。僕は知らなかったのですが、オアシス、マイケル・マクドナルド、ライオネル・リッチーらのアレンジなどを手がける Rock/Pops 界の方のようです。

更には、レコーディング・エンジニアにアル・シュミット。ミキシング・エンジニアにクリス・ロード・アルジ、とくれば、悪いはずがありません。ちなみにドラムはヴィニー・カリウタです。

さて、内容ですが、プロモーション・ビデオも制作されているオリジナル曲 M-1 ≪ Back In Town ≫ とM-2 ≪ All About Me ≫がこの作品の目玉で、M-1 がパトリック・ウイリアムス、M-2 がクリフ・マスターソンのアレンジ。共にジャズというよりも“ Pops with Horns and Strings ”的なアレンジで、いかにもヒットチャートを視野に入れたサウンド・デザインです。個人的にはけっこう好きですが、好みが分かれるところでしょう。僕はこの2曲を聴いて95年にリリースされた Chicago の『 Night and Day 』を思い出しました。これはビル・ワトラス・ビッグバンド(ピアノは近年俄かに人気のシェリー・バーグ)をバックに Chicago がジャズのスタンダードを歌った異色作でしたが、この『 Night and Day 』のサウンドを連想させるポップなアレンジで、この2曲だけでかなりセールスが見込めそうです。

     つづく。


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2 コメント

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好き嫌いがでそうな (Sugar)
2007-10-16 21:13:26
あれれ。こういうのもお聴きになるのですね。
というわけで、私も聴いています。
この声は、好き、嫌いが出そうですね。
まだ1回しか、聴いておりませんですので、なんとも言えないのですが・・・。
パトリック・ウィリアムズは、懐かしい名前です。
私も良く聴きました。(^^ゞ
アル・シュミット先生がエンジニアで、キャピトルスタジオとくれば、悪くなりようがないのですが、日本盤の記録レベルがちょいとおかしいのと、たぶんプロツールズの使いすぎで、ボーカルのレンジが無くなっているのが惜しいです。
日本でこの様な音楽が売れなかったんですが、最近はどうなんでしょうか。売れて欲しいのですが。
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ご無沙汰してます。 (ciss to sugar)
2007-10-20 08:13:17
>あれれ。こういうのもお聴きになるのですね。

いつもなら聴かないんですよ。これは、アレンジャー買いですから。ヴォーカルはやっぱり圧倒的に女性物が多いですね。でも、最近、歳のせいか、このような男性ヴォーカルも違和感なく聴けるようになりました。

彼のサイトからPVを見ましたが、下着姿の美女と抱きあう、エッチなヴィデオでびっくりしました。やっぱり今回は売れ線狙いのようですね。古い作品の試聴もしましたが、以前はしっかりジャズしてましたよ。

>日本盤の記録レベルがちょいとおかしいのと、たぶんプロツールズの使いすぎで、ボーカルのレンジが無くなっているのが惜しいです。

僕が買ったのは輸入盤ですが、記録レベルのことは気が付きませんでしたけどね。ディスクが今、車のなかなので聴けませんが、今度、気にして聴いてみます。Pro Tools のおかげで、美音が巷に溢れていますが、使いすぎるのも問題ですね。でも、正直、僕は耳が悪いので音に関してはわかりません(笑)。
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