雨の日にはJAZZを聴きながら

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浅草ジャズ喫茶 『 がらん ( 伽藍 ) 』 閉店

2008年10月22日 18時08分12秒 | JAZZ

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60年代に都内でジャズが聴ける店は有名なところだけあげてもこれだけあった。あれから約50年あまり経った現在、都内で営業しているジャズ喫茶は吉祥寺の『 MEG 』や高田馬場の『 マイルストーン 』など、十件たらずとなってしまった。全盛期の何分の一かは知らないが、ジャズ喫茶が滅亡の一途を辿っていることだけは明らかだ。そしてここにまた一軒の老舗ジャズ喫茶が14年の歴史に幕を下ろした。

外国人観光客で賑わう江戸情緒を今に残す街、浅草。その街の中心地、雷門前の交差点すぐ傍の古びたビルの地下1階にジャズ喫茶『 がらん 』はある。『 がらん 』がオープンしたのは14年前。当時会社員(出版か新聞関係にお勤めだったと記憶している)であった里井幸康氏は58歳で退職し、この地に店を開いた。15人も入れば満席になってしまうほど小さく狭い店内に鎮座するのはJBLエベレストDD5500。この巨大な箱を駆動するのに里井氏はマッキントッシュC34V+MC7300 を選んだ。プレーヤーはオラクルのDELPHI MKII ( のちに別のものに変更になったかも)。

私が初めて『 がらん 』を訪れたのは確か5年ほど前だったと思う。それ以前から存在は知っていたが、見知らぬジャズ喫茶に入るのはそれなりに勇気がいるもので、なかなかドアを開けることができないでいた。たまたま浅草のすき焼き屋『 ちんや 』で食事会があり、その会の後に酔った勢いで入ったのが最初だった。以来、年に3~4回のスローペースでジャズを聴かせてもらった。そんなわけで常連としてカウンターに座ることはなかったため、氏とは話をする機会はとうとうやってこないまま閉店してしまった。

高価な酒を飲ませて儲けるわけもなく、ライブで集客し儲けるわけでもなく、あるいは執筆業でアピールするわけでもない。14年間ひたすら無心に好きなレコードに針を落とし続けた。里井氏はそんな人だった。だから経営的にもきっと厳しかったであろう。しかしそれよりもまして70歳を過ぎた老体は限界にきていた。特に膝と腰の痛みはひどかった。彼は遺憾千万の思いを胸に9月12日、店を閉じた。

実は氏は『 浅草ヘラクレス 』というブログを2006年2月より運営していた。氏らしく、ジャズの話にはほとんど触れずに、淡淡と日常を綴っていく静かなブログだ。どこにも『 がらん 』 の名前が出てこないので、まさか管理人がジャズ喫茶のマスターだなんて、誰も思わないだろう。そんなブログを昨日、数か月ぶりに訪れたところ、閉店の告知が掲載されていたので驚いた。この半年ほど、忙しさのあまりお店に行っていなかったのである。知らないうちに閉店していたなんてショックだった。せめて閉店前に浴びるほどジャズを聴いてみたかった。

前田マリさんが書かれた 『 猫はジャズが好き 』 の中にこんな件がある。

≪ 浅草には『 がらん 』というジャズ喫茶がある。雷門のまん前だ。ここもやっぱり地下にある。はじめて店にはいるとき、階段を下りていくというのは、ミステリアスな反面、ちょっと勇気がいる。≫
≪ 『 がらん 』を知って、また浅草に行く楽しみが増えて嬉しいけど、がらんがらんで、閉店なんてことのないように心から祈っている。≫


前田さん、非常に残念ながら、あなたの祈り虚しく、『 がらん 』は閉店してしまいました。


いつもカウンター内の壁にこれが飾ってあった。もちろんLPで。
常連さんがリクエストした時、たまたま居合わせて聴かせてもらったが、
鬼気迫るもの凄い演奏で、腰を抜かした思い出がある。