雨の日にはJAZZを聴きながら

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Alessandro Galati Trio Live at Motion Blue

2007年04月23日 18時28分04秒 | ライブ
先週の土曜日,Alessandro Galati (アレッサンドロ・ガラティ)のライブをモーション・ブルー・ヨコハマに観に行ってきました。僕にとってガラティは,1995年の『 Traction Avant 』以来,恋い焦がれていた憧れのピアニストでしたが,こんな無名なミュージシャンがまさか来日してくれるとは思ってもみなかったので感激も一塩でした。これは絶対見逃せないぞ,といつもはライブ嫌いな僕も遥々横浜まで(とは言っても電車で1時間なのですが,出不精の僕にとっては大移動なんですよ)出かけてきました。

仕事を早めに切り上げ,京浜東北線に飛び乗り関内駅に着いたときには既にFirst set の始まる6時30分を20分程過ぎていました。いつもなら駅から赤レンガ倉庫まではぶらぶら徒歩で移動するところですが,そんなのんびり横浜の町並みを楽しんでいる暇もないので急いでタクシーに乗って赤レンガへ直行。ライブ会場の重たい扉を開けると既に演奏は始まっていて,何とも言えない張りつめた空気が漂い,一気にライブ鑑賞モードに突入,気持ちが高ぶります。ステージではちょうど <Falling in love with love > の演奏が始まったばかり。奇麗なウエイトレスさんにカウンター席まで案内され一息つき,改めて会場を見渡すとほぼ満席状態。よかった~。主催者でもないのに妙にホッとしたりして。それにしても若いカップルの観客の実に多いこと。この人々は本当にジャズを聴くのか? 甚だ疑わしい限りですが,まあ,仮にジャズを聴くカップルだとしましょう。でも,本当にこの人々はガラティを知っていて観に来ているのか? ガラティがイタリア人であることすら知らないのではないか? ガラティのことなどジャズを長年聴いてきたジャズ・ファンでもなかなか知らないのに,こんな若い人たちがどうみても『 Traction Avant 』に感動して今日,ここにやってきたとは思えないのですけどね。

でも誤解してもらいたくないのは,決して僕はそういう観客が良くないとは思ってないのです。こういうジャズの裾野を形成してくれている多くの<おしゃれな店でジャズを聴きながらお酒を楽しむ>人々,つまりは非マニア系ジャズ・ファンがいればこそ,欧米の無名のミュージシャンの来日が実現するわけで,僕のようなオタクばかりしか足を運ばないようなジャズ・ライブハウスでは,あっという間に潰れてしまいますからね。それに,この人々の数人は,ガラティのジャズに感動し,来年の今頃にはコルトレーンとは言わないまでも,エヴァンスくらいを聴いていてくれれば,それはそれで良いわけですから。ジャズの入り口は様々,ですからね。

閑話休題。僕は結局,First setの途中からSecond set の最後まで観たのですが,ほとんどMCが無かったので正確な曲名はわかりませんでしたが,知る限りの曲目を挙げておきます。

<First set >
最初の3曲は聴いていませんが,monakaさんによると3曲オリジナルをやっています。
4) Falling in love with love
5) I should doubt in autumn ( 『 Cubicq 』から )
6) Andre ( 『 Traction Avant 』から )


<Second set >
1) Cubicq ( 『 Cubicq 』から )
2) Stella by starlight
3) Noir ( 『 Cubicq 』から )
4) Rover de te voir ( 『 All Alone 』から )
5) Stringimi forte I poisi ( 『 Cubicq 』から )
6) アップテンポのスタンダード?
7) アンコール Nuovo cinema paradiso  ( 『 Cubicq 』から )

個人的には,CDで聴かれるような<究極の静寂美旋律のファンタジスタ>としてのガラティを期待していたのですが,やはりライブということもあり,静謐感とは対極にあるような情熱的で激情的な演奏がほとんどでした。特に-嫌な予感はしていましたが-大坂さんのドラムの音が激しすぎて,ガラティのピアノの音が打ち消されて聴き取れませんでした。時にはガラティと大坂の格闘的対話もあり,かなりCDのイメージとはかけ離れた音楽になっていました。Blue Gleam で見せる彼の姿はもしかして表向きの商業的仮面でしかないのか,と思わせる程のジキルとハイド的な乖離に兎に角びっくり仰天のライブ・パフォーマンスでした。まあ,それはそれで迫力があって楽しめましたし,ガラティの静寂音楽を聴きたければ家に帰ってCDを聴けばいいわけですしね。実際帰宅後僕は『 All Alone 』を聴きながら飲み直しましたが。

オリジナル中心の選曲の中でも,個人的に感激したのが,あの『 Traction Avant 』からの名曲 <Andre > を演奏してくれたことです。おそらく,最新の Blue Gleam レーベル録音の2枚からの選曲だろうと予想していただけに,First set の最後に <Andre > のメロディーが流れてきたときには比喩的な表現ではなく本当に体が震えました。この曲でガラティのファンになった方,多いですからね。また,スタンダードの選曲が <Falling in love with love > と <Stella by starlight > ということで,< 日本人はキース・ジャレットがお好き > ということをちゃんとリサーチした上での選曲で(共にキースお気に入りのスタンダード),意外に考え抜かれていて感心しました。<Stella by starlight >の構成など,キースの『 Standard Live 』のそれに似ていたしね。

ベイ・ブリッジを渡る車のヘッド・ライトの絶え間ない流れを窓から眺めながら,最高のジャズを聴き,そして旨い酒を飲み,やっぱりここが僕のかけがえのない居場所なんだな~とあらためて実感した一夜でした。

ガラティさん,また次回の来日を楽しみにしています。今度はぜひ都内のライブ・ハウスでやってくださいね。待ってます。それから,Blue Gleam の方々,今回の素晴らしい企画とジャズに対する新しい価値観を提示してくれたことに感謝するとともに,今後のリリース作に大いに期待しています。

Alessandro Galati discography

1995 Traction Avant ( VVJ )
1997 Jason Salad! ( RCA victor )
1999 Europhilia ( arci )
2005 All Alone ( Blue Gleam )
2007 Cubicq ( Blue Gleam )