雨の日にはJAZZを聴きながら

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安達久美クラブパンゲア 『 Little Wing 』 (2)

2007年04月08日 20時25分42秒 | JAZZ
8曲目《 Birthday Card 》は「 ハッピバースデイ トゥー ユー ~ 」で始まるあの《 Happy Birthday 》のギター・ソロがイントロとして使用されています。あのウッドストックで,ジミヘンがゴミ山をバックにギターソロで演奏したアメリカ国歌を真似た訳ですね。それにしてもこのシャッフル,ナニワの頃の清水だったら,絶対,スラップでリズムを刻むはずなのに,ここではちゃんと指弾きしているんですよね。寂しいな~。昔は「お前,ここはどう考えても指弾きだろぉ~」という所でも無理やりスラップで押し切っていたのに。彼も歳をとったということか。そう言えばナニワの《 K-Bone Shuffle 》を必死にコピーしたなぁ~。

9曲目《 Cookie Monkey 》は上野動物園のサルの無邪気に遊ぶ姿を見ていて書き上げた女の子らしい可愛い曲。

とりあえず一通り聴いてみて感じたのが,もっとスコット・ヘンダーソンばりの超絶技巧の変態フージョンを想像していたわりには,意外にも直球勝負のシンプルなロック・フージョンであったこと。スコヘンというよりも,ハイラム・ブロックやロベン・フォード,それからサンタナやラリー・カールトンなど,要はジャズ系フージョンというよりはロック系フージョンに近いテイストであったように感じました。サイドメンに関しては,昔ならフージョン界の対極に位置していたナニワ・エクスプレスとスクエアのメンバーが,20代の若い女性ギタリストをキー・パーソンとして終結しちゃうという不思議さ。時代の流れを感じずにはいられませんでした。

そして,彼女の演奏を聴いていて一人思い出した女性ギタリストがいました。その名は Nori Bucci 。Gamalon という米国のロック・フージョン・バンドをご存知でしょうか。ニューヨーク州バッファローで結成されたツイン・ギターを売り物したインストゥルメンタル・バンドで,1987年にデビュー以来,おそらく4~5枚のアルバムを制作しています。僕は George Puleo (g)が在籍していた初期の頃が一番好きなのですが,2004年から加入したこの女性ギタリスト,Nori Bucci もなかなかの腕前です。彼女の参加したアルバムは(たぶん)まだ制作されていませんが,YouTube で彼女の演奏が観れますので,リンク貼っておきます。その他にもGeorge Puleo 在籍時の Gamalon の映像も貼っておきます。

Gamalon ( Nori Bucci ):http://www.youtube.com/watch?v=VcDqz-yVKEo
Gamalon
 ( George Puleo ):http://www.youtube.com/watch?v=WBTmoepUukc

写真のアルバムは1990年の Gamalon のセカンド。名曲 《 Bleecker ST. 》 が収められた(個人的)名盤。カッコイイです。普段は全然スピードを出さない私ですが,これを聴くと自然にアクセル踏んじゃいます。スティーブ・ヴァイ好きの雑食系ジャズ・ファンにはお薦め。

P.S.  成毛滋さんが3月29日に大腸がんで亡くなられていました。享年60歳。 昔,成毛滋さんのギターの教則カセットテープを,それこそ伸びきってピッチが狂うまで聴きまくった思い出があります。今と違って昔は教材が皆無だったから彼の教則カセットは貴重な情報源だったのです。  ご冥福をお祈りします。


安達久美クラブパンゲア 『 Little Wing 』 (1)

2007年04月08日 20時23分08秒 | JAZZ
ナニワの女ジェフ・ベックこと安達久美率いるユニット「 club PANGEA 」のメジャーデビュー・アルバム『 Little Wing 』が巷で評判がすこぶる良いようで,それじゃあと言うことで昨日買って帰りました。

タイトルが『 Little Wing 』ですから当然,ジミ・ヘンドリックスへのオマージュが窺がえる訳ですし,ジャケットもジェフ・ベックの『 WIRED 』のパクリですから,大体,針を落とさなくても出てくる音は想像できるのですが,やっぱり実際に聴いてみると圧倒的なハード・コアな音圧に吃驚仰天します。まだ何処となくあどけさが残る若き女性の指先から,あんな音が,こんなフレーズが,出てきちゃうんですから時代も変わったものです。

安達久美の経歴はこちらを参照していただくとして,この「 club PANGEA 」のメンバーは現在,安達久美 (g),則竹裕之(ds),清水興(b),河野啓三 (key)の4人ですが,初期の頃にはキーボーディストに佐伯準一が加入していたり,一時期ですがクリヤ・マコトが参加していたりと,やや流動的であるようです。

1曲目の《 Little Wing 》は言わずと知れたジミヘンの名曲。原曲は2分半の短い曲でしかも1コーラスのソロの後にフェイド・アウトという構成でした。安達久美の3コーラス分のソロでのイントロ(原曲では1コーラス)→河野啓三の激情的なシンセソロ→安達久美のソロという構成。キーは原曲と同じEm。DからEへのチョーキングで始まる最初の一音に痺れちゃいますね~。フレーズはマイナー・ペンタトニック主体のかなりオーソドックスな組み立て方ですが,無駄の無いクリアー・トーンで綺麗です。

2曲目は彼女の地元,泉州のだんじり祭りにちなんで作られたファンク・ナンバー 《 Danjiri Funk 》。イントロのカッティング・ギターが左右のチャンネルに振り分けられた洒落たアレンジ。19歳の時に渡米し,スコット・ヘンダーソンに師事しただけあって,ここではアウト・スケールを多用したスコヘン流儀が顔を覗かせています。個人的にはこの曲がベストかな。途中で《 Giant Steps 》を引用するあたりが面白いですね。

3曲目《 狐の嫁入り 》は一転してポップな7/8拍子の軽快でかわいらしい曲。狐の嫁入りとは,晴れているのに雨が降ることを言いますが,そんな不思議な彼女の実体験からできた曲。

4曲目 《 JUNK 》は深いディストーションにワウワウをかけて,まるでジミヘンの《 紫のけむり 》のようなイントロで始まります。重心低く繰り出される清水興の8ビートにゾクゾクします。

5曲目《 Air Poket 》はスピード感,浮遊感のある美しい楽曲。彼女は譜面が書けずに佐伯準一に譜面を書いてもらっていたと言いますが,どうしてこんな複雑な構成の曲を作れちゃうのでしょうかね。不思議です。なんとなくプレーヤーズ(いわゆるコルゲン・バンド)風のドラマティックな曲だと感じましたが。そういう耳で聴くと彼女も松木恒秀に似ているようにも思えちゃう。

6曲目《 Gorilla Gorilla Gorilla 》はパーカッションが入ったラテン・タッチの曲。清水興のベース・ソロが入りますが,垢抜けないフレーズは今も昔も変わりませんね。巧くはなったけど,洗練されていないところが彼の良いところでもあり悪いところでもある訳で。それにしてもこのバンドでは清水興が裏方に徹しているのが不気味です。

7曲目《 PANGEA 》は10分41秒の幻想的なバラード。ゆったりと流れていく気の遠くなるような時間の中で,巨大大陸 PANGEAは徐々に分裂していったというグラフィック映像(NHK番組)からインスパイアされて書いた大作。なんか何処かで聴いたことあるような楽曲なんだけど,思い出せない。鳥山雄司だったかなぁ,あるいは森園勝敏だったかなぁ。と,考えているうちに曲が終わった。

                   つづく