[ロンドン/ワシントン 1日 ロイター]
- 米議会が提案している企業税制改革が実行されれば、国際的な貿易ルールに違反することはほぼ確実で、世界貿易機関(WTO)史上最大の紛争が引き起こされる恐れがある─。
米国での税制改革論議に関し、法律の専門家はロイターに対して、こうした見方を示している。
トランプ政権で保護主義的な傾向が強まることが懸念される中、欧州企業には貿易戦争につながるリスクを懸念する声も出ている。
米下院の共和党議員が検討している改革案は、現行の法人税を廃止する代わりに売上高に20%の課税をする内容。
その際、売上高から米国で生み出されたモノ・サービスの購入コストと労働コストを控除できる仕組みで、米国製品の輸出は非課税扱いだ。
一方で、輸入した部品を使って生産したり、輸入品を転売したりする企業にはこうした控除は認めないという「国境調整」を実施するのが特徴だ。
トランプ大統領は、複雑な仕組みだと批判的だが、こうした手法が米国の貿易赤字を削減する上では役に立つとも認めている。
税制を扱う米下院歳入委員会のブラディ委員長(共和党)は、この改革案はWTOルールに沿ったものであることに自信を持っていると強調する。
しかし、WTOをめぐる訴訟経験のある、米国、英国、欧州を拠点に活躍する6人の弁護士の見方は違う。
国内製品に対する違法な補助金や、輸出補助金もしくは、輸入品に対する事実上の関税だとみなされる可能性が高いという。
6人の弁護士全員が、検討されている税制は、WTOの複数の規定に抵触すると予想。
きわめて深刻な違反行為だとされ、不服とする加盟国が提訴した後、通常なら数年掛かる手続き期間の短縮が正当化される可能性すらあると指摘する。
通常、WTOに持ち込まれる問題は特定の産業や企業に限定されているが、通商の専門家は、この税制案は米国へのすべての輸入と、米国からのすべての輸出に関わるだけに、提訴されれば、WTOが扱う過去最大規模の紛争になると話す。
ホワイト・アンド・ケースの弁護士、スコット・リンシコム氏はこの改革案では「すべて国内で生産された製品に対する実効税率は、輸入品よりも低くなることになる」と指摘。
これは、WTOの関税および貿易に関する一般協定の第3条に違反することになる。
協定では、海外から入ってくる商品に対し課税することは可能だが、売り上げや収入に対する課税に関連する形で国内製品を輸入品よりも優遇することは認められていないからだ。
弁護士らはほかにも、補助と対抗手段に関する協定に基づいて訴えることも可能だと指摘している。
欧州の企業グループは、共和党が検討している改革案は、国際的な貿易ルールを覆すものだとし、欧州各国政府が米国に対し思いとどまるよう説得に乗り出すことを望んでいると強調。
英国最大の輸出企業のひとつ、ジャガー・ランドローバーの役員で海外販売の責任者を務めるアンディ・グロス氏は、英国政府が米政府に対し、英企業の立場を訴えることに期待を表明している。
WTOは加盟国に対し報復の手段を用意してはいるが、手続きには何年も掛かる可能があり、他の手段に訴える国も出てくるかもしれない。
モルガン・スタンレーのアナリストは一例として中国を挙げ、巨大な同国国有企業に対し「米製品不買」政策をとるよう命じる可能性があると指摘している。
欧州の企業関係者の中には、米国がこの改革案を実行に移し、欧州の雇用などに影響が波及したなら、政治的な圧力が高まって全面的な貿易戦争に突入する危険性を指摘する声もある。
(Tom Bergin、David Morgan両記者)
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恐れていたことが記事になり始めましたが、トランプ政権は国際貿易ルールを犯してでも「アメリカ・ファースト」を貫く可能性が高く、そうなりますと全面的な貿易戦争に発展してしまいます。
要はドル安にして、アメリカの貿易赤字を縮小したいわけですから、全面的な世界貿易戦争を回避するには、やはり第二次プラザ合意しか手はないように見える。
トランプ政権の政策やFRBの金融政策は、ドル高になる政策ばかりであり、1兆ドルのインフラ整備にしろ、ブッシュ政権の3倍にものぼる減税案にしろ、FRBの利上げにしろ、どう見てもドル高にしかならず、貿易赤字と財政赤字の双子の赤字は増加せざるを得ない。
このままならばドル高に金利高は目に見えている。
なのに貿易赤字を減らしたいと言っても無理な話であり、そもそもがトランプ政権の政策は矛盾を内包しています。
この矛盾を自我でゴリ押ししていきますと各国と軋轢を生むことになるでしょうし、国際協調主義を放棄したかに見えるトランプ政権ですが、一度ここは基軸通貨の影響力を行使して、各国と協調の上に第二次プラザ合意を模索した方がいいのではないかと思う。
「アメリカ・ファースト(米第一主義)」のトランプ大統領ですから可能性は低いかもしれませんが、この場合、「最後の審判」を予測している投資家は多いです。
このままならばドル高・金利高は避けられず、それが「最後の審判」を招来します。
債券王・ビル・グロース氏もその一人です。
いずれ中央銀行は資産価格を支えきれなくなる。
10年債利回りが「2.6%」を突破すれば、それが転換点になると言っています。
ビル・グロース氏がクレジットをショート、「最後の審判日」に備え ブルームバーグ
ビル・グロース氏は、投資家としての自身の直感と受けた訓練に反しているとしながらも、クレジットのショートを試みている。
中央銀行が資産価格を支えられなくなり、投資家が市場から引き揚げる「最後の審判日」が訪れるだろうと考えているからだ。
「そのように努力している。私はシステムを究極的に信じる投資家だが、システム自体がリスクにさらされていると考えるからだ」
新債券王・ガンドラック氏は「2.6%」ではない、「3.0%」だ、と言っています。
ガンドラック氏:10年債利回り3%になれば「強気相場におさらば」 ブルームバーグ
ジェフリー・ガンドラック最高経営責任者(CEO)は、10年物の米国債利回りが3%を突破すれば30年続いた強気相場の終わりを意味するとの見方を示した。
「ほぼ確実に2017年中に10年債利回りが3%の水準になるのを目にするだろう。
そして、17年に10年債利回りが3%になれば、債券強気相場におさらばだ」
ビル・グロース氏は、別の水準を節目として考えている。
10日早くに発表した投資見通しで同氏は、2.6%がそうした水準だと指摘した。
ガンドラック氏は「最後の境界線は10年債利回り3%だ」と強調。
「古典的チャートの見方からすると、そこが債券強気相場の最期と位置づける水準だ。
2.60%じゃない」と述べている。
米10年債利回りがトランプ大統領の1期目が終わるまでに6%に到達する可能性を指摘。
今年の米利上げ回数は2、3回と予想し、原油相場については大きく変動しないとの見方を示した。
ガンドラック氏は金利が6%に上昇すると見ておりますが、これは4、5年後の話です。
債券の下落ですね。
Gundlach: Bond Yields to Hit 6 Percent in 5 Years as Inflation Will Roar
轟くようなインフレの中、債券は5年で6%を達成する、という題ですが、ここでは10年債利回りは4~5年で6%に上昇する可能性がある。
トランプ政権は債券相場に損失しかもたらさない。
今後、インフレ率は3%、対GDP比で4%~6%の名目成長率を生み出す可能性がある。
名目GDPが4%、5%、さらには6%に向かって押し上げられている時、債券利回りを2%以下にする方法はない、と言っています。
すなわち「最後の審判」です。
どうも終末くさい政権です。