気になるチョイ役召使い(新コーナー)

映画などを観ていると、
「チョイ役なんだけど、この召使いイイなぁ」
そう思わせる使用人がぽつぽつ見受けられる。

セリフもほとんど無い。もちろん役名も付いてない(場合が多い)。

でも、気になる。

そんなチョイ役の召使いにも光を当てようじゃないか。
と、いうわけで、新コーナーを作りました。
題して「気になるチョイ役召使い」

第一回目は、こちらの作品。
本日の気になるチョイ役召使い : 映画「炎のランナー」
(原題 :CHARIOTS OF FIRE )

炎のランナー

1981年に多くのアカデミー賞を受賞した作品ですので、ご存知の方もきっと多いことでしょう。テーマ曲もスポーツ番組のバックミュージックによく使われています。

人より早く走ることで人種偏見に立ち向かおうとするユダヤ人青年と、
俊足の才は「神からの授かりもの」として、神を称えるために走るスコットランド出身の青年。
1924年のパリ・オリンピックで金メダルを獲得した、ふたりのイギリス人青年の実話をもとに描いたスポーツドラマです。

で、気になる召使いはどこで登場するかと言いますと、
主役のユダヤ人青年の級友(ふたりともケンブリッジの学生です)、
リンゼイ卿(Lord Andrew Lindsay)の屋敷です。

まずリンゼイ卿の紹介をしておきますと…
この金髪の青年、絵に描いたような「貴族のお坊ちゃま」です。
淡白というか、余裕があるというか、ガツガツしてないんですね。

ユダヤ人青年と同じく陸上競技にいそしんでいますが、
彼にとって陸上競技は“楽しみ(fun)”であって、
「選手にはなれるが、世界一にはなれない」とあっさり認めます。
( “To be a fastest, yes, but not the fastest.” )

オリンピックをめざしての訓練シーン。
ユダヤ人青年は運動場のトラックや路上でのロードワークを重ね、
スコットランド出身青年はひたすら野山や海岸を駆けめぐる。

リンゼイ卿は、どこで訓練をしているのか?
もう、お分かりですね。
自分の邸宅の庭です。
ゴルフ場のような、広大な庭です。

視界いっぱいに広がる青々と艶やかな芝生。
丘を下ってしばらく行くと、そこには一直線に並んだハードルが。

よく見ると、全部のハードルの上部、板の隅っこに、
シャンパン・グラスが一個ずつ、危なっかしげに据えられている。

ひとりの若い使用人(男性)が、
最後のグラスにシャンパンを注ぎ終わると、
遠くスタート地点に立っているリンゼイ卿に向かって、叫ぶ。

「用意できました」( “Ready, my lord !” )

リンゼイ卿は身につけていたガウンとスカーフを脱ぐと、
ゴール前方に顔を向けたまま、そばに控える執事にそれらを無造作にポイポイと手渡す。
受け取った執事は、さもさも大事そうに、シワにならないように、丁寧にガウンとスカーフを一度伸ばしてから、腕に掛ける。
(この何気ない動作がいいなぁ。)

リンゼイ卿が執事に言う。
「シャンペンをこぼしたら言ってくれ」
( “Now, Coots, if I shed a drop I want to know. Touch but not spill,
what?” )

はー、つまり、ハードル競技の、
横板スレスレに脚を運ぶ、あの美しいフォームを身につけるための練習なのね。
わざわざシャンパンを使うのか。さすが。貴族。

それにしても、坊ちゃまの“楽しみ”のために、
ハードルの設置や手入れ、グラスの用意に後片付けを仕事の一部として遂行しているリンゼイ家の使用人はどう思っているのか。
「他の屋敷ではまず無いだろうな…こういう手間仕事」とか思ってたりするんだろか…。



映画をもとに、
こんなの書いてみました。

リンゼイ卿
「シャンペンをこぼしたら
 言ってくれ」
執事
「………」


執事
「………」




執事
「………!」

←坊ちゃんのフォームを
気に掛けるような、
微妙な動きがタマリマセン。

(ちなみに映像では小さすぎて、表情までは判りません。心眼で観ましょう)

注: 記事中の「」内の太字、及び()内の英文は、どちらもDVD字幕からそのまま引用しました。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
絵、上手いね (くろにゃんこ)
2006-08-26 21:53:42
あはは。

リンゼイ卿の顔が~~!

愛情の重みが執事に偏ってますね(笑)



いましたね~。

執事さん。

静かにたたずむあの姿、覚えていますよ。

リンゼイ家の使用人たちは、お坊ちゃんのお手伝いが出来て光栄と思ってますって。

ハードルにシャンパンのシーンには、「さすが貴族、家の敷地内でトレーニングか」と感心しました。
 
 
 
実は名前がある執事さん (countsheep99)
2006-08-29 07:54:13
おお、あの執事の存在を覚えていらしたとは。

嬉しい!



じつはあの執事、名前がちゃんとあるんです。

リンゼイ卿が執事に「シャンペンをこぼしたら言ってくれ」と言い出す前に、



“Now, Cootes,”と呼びかけています。(英語字幕による)



どうやらクーツ氏らしい。



リンゼイ卿は、スパイクを取ってくるようにとメイドに頼む時にも、用件を言いつける前にちゃんとメイドの名前を呼んでいました。

(マーガレット? マルガリータ? たしかMがつく名前でした。失念。)



それが人を使い慣れている貴族の当たり前の習慣なのか、

リンゼイ卿の人柄を表わしているのか、

それともほんのりと何かしらの意味づけがされているのか(お気に入りの召使い、とか)。



リンゼイ卿の台詞として、召使いへの名前の呼びかけが省かれても、ストーリーにはまったく支障が無い。

それをわざわざ口に出すとは…と、ちょっと気になります。



絵、上手いですか?

へへ…調子に乗ります。







 
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