月の岩戸

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トラペジウム

2013-02-20 05:50:58 | 詩集・瑠璃の籠

岩戸の中に ひとり
こいぬの星と 暮らしていると
季節というものは あまりわからない
ただ時々 小窓から吹く風が
木々や雨や花の香りを運んでくる

わたしはそんな香りを玉にして
帳面に静かに歌を書く
紙の上をすべる筆の音が
さらさらと 静けさにはいこんでいく
わたしは書くことに夢中になっていたので
最初はその気配に全く気付かなかった
プロキオンが 妙な鳴き方をしていることには
なんとなく気付いていたが

急に激しい雨の音が聞こえた
すぐ近くで ぱらぱらと激しく
あられの落ちるような音がする
それと同時に甘くまぶしい光も感じた
わたしは紙の上を走る筆を
無理矢理止めて
ふりかえらずにいられなかった

雨が 雨が降っている
光の雨が 小部屋の中に
白い石英の粒のような星が
無数に小部屋の中に降り
ぱらぱらと鳴りながら歌っていた

星が降る
星が降る
雨のように
星が降る
すべての星が やってくる

テッラ!

地球よ おどろけ
すべての星が
あなたに向かい 降ってくる!!

星の雨は 交響楽のように
繰り返し歌いながら
小部屋を光で埋めていく
わたしは驚いている暇はない

真実を見なければならない

わたしは背中の筋肉に力をこめた
見えない翼が動くのを感じた
そうとも わたしは飛べる
このときのために わたしの翼はある

魂は岩戸を出て
翼とともに上昇していく
星の正体を見極めるために
わたしはまっすぐに
天に向かって飛んだ

空の奥で 光の塊のように
寄り集い 歌っている星々が見えた
ああ
トラペジウム!

すべての 星が!!

わたしの目が 燃える炎のように叫び
真実を見抜いた
そのときのわたしは
女神ではなかった



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1 コメント

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絵の解説 (てんこ)
2013-02-20 05:53:56
ハンス・メムリンク、「父なる神と奏楽の天使たち」、15世紀フランドル、初期フランドル絵画、ブリュッゲ派。
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