月の岩戸

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ベネトナシュ・10

2016-10-25 04:16:09 | 詩集・瑠璃の籠

逃げてしまった馬鹿が住む
灰色の家がある
糞のような細い虫がうじゃうじゃと棲み
腐臭がする不細工な蔦に覆われた
豚のような形をした家がある

黒い影のような森の奥に
それはある
どぶのような腐った流れに導かれ
背負わなければならない咎から
ネズミのように逃げた馬鹿が
こそこそと走りこんでくる

ここまでくれば
神も追いかけてこないだろう
しつこい法則の借金取りも
まくことができただろう
何も怖くはない
俺は永遠に何もしないで
ここでとぐろをまいていればいいのだ

だがいつまでも安心してはいられない
ともしびを持った白い蛇が
必ずそいつを追いかけてくる
蛇はその家の狭い戸口を訪れて
こそこそと戸を叩きながら言うのだ
入れてくれ
おれはおまえだ
入れてくれ
おれはおまえだ
長いこと会わなかったが
もう離れてはいられない

だが逃げた馬鹿は
決して戸を開けはしない
開ければすぐに
神に居場所がばれると思っているからだ
蛇は繰り返す
入れてくれ
おれはおまえだ
おれはおまえだ

いやなやつだ
いなくなれ
と馬鹿は蛇に言う
そして今も
永遠にそこに住むつもりで
何もしないでいる




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