12 追い詰められる浩紀
3ヶ月目には26人もの知り合いが亡くなり、その中には浩紀の父親と叔母も含まれていた。
その頃には浩紀に近づくと死ぬという噂が大学中に広まり、殆ど誰も彼に話しかけてこなくなっていった。
それまで、苦しい生活をしながらとは言え、青春を謳歌していた頃の浩紀はもういない。
どんどん周囲から孤立していった。
それは人生が急速に色褪せていくような感じだった。
そう――人生そのものを奪われているような感じだった。
変な噂がつきまとい、バイトは全部、クビになった。
おもしろ半分で都市伝説として、浩紀の事をネットで流した男も人知れず死んでいた。
浩紀の周りからパンドラ以外の人がどんどんいなくなっていった。
いつしか、浩紀はパンドラの入った石棺を彼に渡して死んだ祥吾と同じ顔をしていた。
誰が見ても明らかにわかる死相がくっきりと出ていた。
「みんながね、パンドラの事、悪く言うんだ……」
「……そう……。」
「そんな奴ら……こっちから願い下げだ……」
「そうね……」
「パンドラ……君さえいれば、それで良い……」
「そうだね……」
パンドラにすがりつく浩紀。
パンドラは不気味に笑っている。
だが、浩紀はそれを美しい笑顔と認識してしまっている。
……重症だった。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます