<中国ブログ>中国サイコウ 元/上海駐在日本人が綴る日中経済の状況など

中国駐在時代の経験・知識をもとに、
最高(サイコウ)の日中関係の再構築を目指し、
日本と中国を再考(サイコウ)する

中国の自動車販売にみる異変

2011-07-06 | 自動車産業


最近、中国の自動車市場に陰りがみえる。
年初の予想では、史上初の2千万台を軽く突破するとの見方もあったが、このところ前年同月比割れが続いている。
専門家の間でも、さすがに悲観的な見方が広がっているようだ。

原因として、東日本大震災による部品供給の停滞なども挙げられるが、やはり燃料の高騰や不動産価格(駐車場を含む)の上昇、ナンバープレート規制など国内の要因のほうが大きいように感じる。
上海のような大都市で生活していると、もはや自動車は「保有していれば便利な道具」との位置づけだろう。
高くなったと言ってもタクシーは安いし、万博の開催を契機に地下鉄網が充実したし、最もコストを抑えようと思えば2元のバスもある。
自動車保険など、自動車保有にかかるコストは増大する一方だ(先進国でも同様なので、仕方ないと言えばそれまでだが・・・)。

都心部の渋滞も深刻で、規制を好まない上海ですら「本格的な交通規制の導入を検討している」との噂が絶えない。
また、新米ドライバーが急増したことで、追突事故を目撃する回数が格段に増えている。

こうした状況を睨みつつ、賢い消費者たちは値下げ競争に発展するのを待っているのでは・・・との見方もある。
もしくは、政府が経済成長目標達成に向けて、今年後半に新たな経済刺激策を発表するのでは・・・との期待もあるようだ。

産業面からみると、もっと深刻な問題が浮かび上がってくる。
中国の大手自動車メーカーは、外資企業との合弁による海外ブランド車に経営を依存しており、自社ブランドの育成が遅々として進んでいない。
端的に言えば、経営はやっているが、開発・製造の根幹は握っていないのである。
民営企業はコピーメーカーからの脱却を図っているが、やはり有名ブランドとの関係からコンパクトカー分野での躍進にとどまっているのが現状だ。
BYDなどは親会社が電池メーカーということもあって大きな期待を集めたが、結局のところ自動車の性能面で見劣りするため、急速に業績を悪化させている。
要するに、中国は世界最大の自動車市場に成長したものの、一番おいしいところは外資に持っていかれている状況なのだ。

では、日系メーカーはどうなのか・・・?
総じてみると、残念ながら芳しい状況にあるとは言えない。
各社とも、震災による部品調達の影響もあって、前年実績割れが懸念されている。
そんな中、ひとり気を吐いているのが日産である。
6月の自動車販売実績も前年同月比で22%増と他社を圧倒している。
報道によると、新型サニーの売上げが好調とのこと。
日本では「サニー」なんて死語に近いような。。。
もっとも、トヨタでも日本では売れない「カムリ」が世界戦略車として位置づけられている。
世界と日本では感覚が違いますからね。

たかが自動車の売上げじゃないかと思われるかもしれないが、侮るなかれ。
既に中国でも自動車関連がGDPの十数%を占めるに至っているのである。
自動車や住宅といった高額商品の消費動向は、そのまま景気の行方に直結することが多い。
不動産バブルの行く末とともに、今後も注意が必要だろう。