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放医研 被ばく線量推計は「道半ば」、しかし国と県が利用する際には、なぜか「正しい情報」になる?!

2014-05-27 09:49:56 | 東京新聞

放射性ヨウ素内部被ばく 線量推計に問題点 政府「正しい情報」強調 



東京電力福島第一原発事故による健康影響で、現状、最も心配されるのが甲状腺がんを誘発する放射性ヨウ素の内部被ばくだ。福島県は「影響は考えにくい」と主張し、政府は周知する。だが、根拠とする独立行政法人・放射線医学総合研究所(放医研)の被ばく線量の推計は、担当者が「道半ば」と認める頼りないものだ。政府は「正しい情報発信」を掲げるが、そう言い切れるのか-。(榊原崇仁)
 



「正しい情報を出すことが大切だ。政府も情報の出し方を検証し、分かりやすくしたい」。安倍晋三首相は今月17日、福島市内の県立医科大(県医大)を視察し、こう述べた。
 

2日後の19日、福島県民の小児甲状腺がんを検査する「県民健康調査」の検討委員会終了後の記者会見で、座長の星北斗・県医師会常任理事は「放射性ヨウ素の内部被ばく線量の推計に照らせば、いま見つかるがんと事故の因果関係は考えにくい」と述べた。 

20日、原発事故に伴う健康管理を扱う環境省の専門家会議では、「特別の仮定を置かない限り、ヨウ素被ばくは50ミリシーベルトを超えない」とする議論のまとめの骨子案が示された。つまり、被ばく線量は、国際原子力機関(IAEA)が安定ヨウ素剤の服用を推奨する50ミリシーベルト超に達していないという趣旨だ。
 

首相発言を受け、「正しい情報」が矢継ぎ早に発信された形だが、違う。今年に入って作られた流れの継続にすぎない。
 

2月に復興庁は、放射線教育用の冊子「放射線リスクに関する基礎的情報」を作成し、「100ミリシーベルト以下の被ばくでは発がんリスクの明らかな増加の証明は難しい」「専門家の見解では原発周辺にいた子どもの甲状腺の被ばく線量は総じて少なく、いま見つかる甲状腺がんは事故の影響と考えにくい」と宣伝した。 

3月には環境省が、「福島県と他県における甲状腺がんの発見率はほぼ同じ」という調査結果を発表した。政府ではないが、4月には国連科学委員会が、「福島県での明確ながんの増加は予想していない」とする報告書を出している。 

一方で、甲状腺がんへの不安を伝える報道には、素早い反論がある。
 

テレビ朝日の番組「報道ステーション」が3月、原発事故3年のニュースで、ニュースキャスターが「事故とがんの因果関係は『考えにくい』ではなく、『まだ分からない』ではないか」と発言した。県医大は放送翌日、「県民健康調査の検討委では『因果関係は考えにくい』が一致した見解」という文面をネット上のサイトに掲載した。環境省もサイトで、放医研がまとめた推計を紹介した。
 

原発事故と健康被害の因果関係や被ばく線量を説明する際、政府と福島県が有力な根拠として使うのが、放医研が「福島県民のヨウ素被ばくは30ミリシーベルトまでにほぼ収まる」と見立てた推計だ。環境省が調査を委託し、昨年2月に報告書をまとめた。
 

ヨウ素被ばくの線量の推計は、①甲状腺にたまった放射性ヨウ素の測定値に基づく②ホールボディーカウンターで調べた全身の内部被ばく線量から割り出す③事故直後にいた場所、生活状況から呼吸や飲食で体内に入った量を想定する─の3つの方法が取られた。
 

しかし、放医研の推計はよりどころとしては相当に頼りない。推計を担った被ばく評価研究チームリーダーの栗原治氏は「こちら特報部」の取材に対し、「実は道半ばというところだった」と明かした。
 

半減期が8日と短い放射性ヨウ素の内部被ばく線量は、被ばく直後に測定しなければ実際の数値は分からない。単純計算で、16日後には4分の1にまで減るため、被ばくから何日後に測定した数値かを踏まえ、線量の最大値を推計した。
 

問題は全ての測定値をかき集めても約1300人分のデータしかないことだ。放医研は、政府の指示で調べた15歳以下の分を推計に使ったが、1080人分しかなかった。事故直後で混乱したためかもしれないが、1080人は県民健康調査が甲状腺検査の対象とする事故時に18歳以下の40万人近くの約0.3%にすぎず、あまりにも少ない。
 

地域的な問題もある。事故当時、いわき市と川俣町、飯舘村にいた15歳以下の測定値しかない。この測定値自体の正確性も疑われる。使われたのは誤差の生じやすい簡易式の測定器だった。放射性物質が付いた服を着たまま測った例もあるようで、栗原氏は「誤差は1020ミリシーベルトになる見込みだ」と指摘した。
 

ホールボディーカウンターで測定した内部被ばく線量からの推計にも問題がある。測定は県内各地で行われ、データも多いが、事故の数カ月後に始まったため、半減期の短い放射性ヨウ素の検出は難しかったが、半減期の長い放射性セシウムは測定できた。
 

まず、川俣町と飯舘村でホールボディーカウンターで測定した放射性セシウムの数値と、この2町村で測定した放射性ヨウ素の数値を比較して割合を計算した。その比率を、県内各地で測定した放射性セシウムの測定値に掛け合せることで、ヨウ素被ばくの最大値を推計した。ただ、川俣町も飯舘村も福島第一原発の北西方向にあり、他の方向にある地域でも同じ割合で拡散したかは分からない。
 

残る一つも、どこまで正確な数値に近づけたか定かではない。聞き取りに基づく避難経路を元に、呼吸や飲食でどれだけ放射性ヨウ素を取り込んだかを判断する手法だが、無数にある避難経路は、推計のために18に絞られた。
 

呼吸分の算出には、放射性物質の大気拡散予測システム「SPEEDI」の世界版を使ったが、「予測データは放射性物質がいつどう飛来したかという点では使えるが、飛散した量の判断は難しい」(栗原氏)。そもそも、個人差が大きいことなどから、飲食分の推計はできていない。
 

栗原氏らは報告書でこうした事情を公表し、推計の問題点も説明している。それなのに、政府と福島県が利用する際には、なぜか「正しい情報」になる。
 

政府と福島県の主張に賛同する人ばかりでない。福島大の清水修二特任教授は19日の県の健康調査検討委で、「100ミリシーベルト以下は問題ないという点を判断基準にするのは、適切ではない」と訴えた。
 

国立医薬品食品衛生研究所の春日文子安全情報部長は20日の環境省の専門家会議で、「福島県に関連して得られた実測データは数的にも地域的にも限られ、不確実性が付随する」と指摘した。春日氏は閉会後にこう述べた。「『福島県で今までに見つかった甲状腺がんと原発事故との因果関係は考えにくい』と、ある程度推測することは可能でも、それが正しいかどうか、早急に結論を出すことはできない。長期的な調査を継続することが重要だ」
 


[デスクメモ] 
2年前、福島県二本松市内の農家の男性に「がんになるのか。記者なら分かるだろ」と詰め寄られた。「精密」と評判の長崎県の大学に行って検査し、体内の放射性セシウムの数値は一般の人の10倍以上だったという。厚労省に取材すると約束したが、「ただちに健康に影響はない」という回答しかなかった。(文)

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