じいたんばあたん観察記

祖父母の介護を引き受けて気がつけば四年近くになる、30代女性の随筆。
「病も老いも介護も、幸福と両立する」

じいたんの、愛情表現。

2005-05-18 02:30:05 | じいたんばあたん
ばあたんは、夜中に目を覚まして、
外へ出てしまうことが時々ある。
理由は分かっているのだが解決するのは難しい。
認知症の患者にとって、夜は不安の塊なのである。

先日、彼女はとうとう一階のフロントで保護されて部屋に戻された。

一昨日じいたんに、そのことを報告したら、
彼はすぐ対策を講じた。
眠る前に、玄関のドアの左上にある、くの字の金具をひもで縛って、ばあたんが表に出られないようにするのだ。

今日そのことを知った私は、
じいたんにやんわりと提案を試みた。
『じいたんのやり方は、安全な方法ではないと思うよ。
だって、もし夜中に、じいたんに何かあったらどうするの。ばあたんは電話もかけられないんだよ。私(やマンションの管理人)が部屋の中へ入ることもできない。だから…』

ここまで言ったところで、じいたんは私を制した。
『もう言うな。わしの好きにさせてくれ。』

確かにそうだ。いくら私が心配しようが、
彼らの生活は彼らのもの。
私には、何もできない。
…とぼとぼと、後ろ髪を引かれながら、家路についた。

伯父に、相談の電話をした。
ひとしきり私の話を聞いた後、伯父は教えてくれた。
「それはな、おじいさんの気持ちなんだよ、たま。
『お前さん、ゆっくり休め』ってことだ。」

…そうだったのか。
電話切ってから涙が止まらなかった。

夜中や明け方に、自転車飛ばして
こっそりマンションの外から様子を見にいっていたこと、
じいたんは、気づいていたのかもしれない。

真夜中に電気付けっぱなしで、椅子で寝ていたことが2度ほどある。
私が起こしたのを「覚えていない」と言っていたけれど、
本当は、覚えていたのかもしれない。

じいたんの方がずっと、うわてだ。
祖父母が注いでくれる愛情には、ずっとずっと敵わないまま
私はいつまでも、追いつけないんだろう。

二人が、今夜も無事に過ごしてくれますように…