阿武山(あぶさん)と栗本軒貞国の狂歌とサンフレ昔話

コロナ禍は去りぬいやまだ言ひ合ふを
ホッホッ笑ふアオバズクかも

by小林じゃ

原野商法

2020-02-17 17:41:57 | 日記
 もう一つ母方の祖父の話。やはり私が小学生の時、祖父は訪ねてきた業者から別荘用の土地をすすめられて、百万円で購入した。これも五十年近く前の話だ。しかしその後業者と連絡が取れなくなってしまった。土地は当地から遠く離れた離島にあって、祖父はその島と同県在住の友人に調べてもらうべく、契約書等を郵送したようだ。ところが程なく祖父は癌をわずらって亡くなり、その数年後に祖父の友人のじーさんが訪ねてきてうちに一泊したのを覚えているけど、島の土地については調べてもよくわからなかったと言っていた。その時書類を返してもらったかどうかは、私はまだ中学生ぐらいであったし関わっていない。もちろん業者からは音沙汰もなく、百万円持ち逃げされたものと思っていた。

 ところが、9年前のこと、ある空港の管理事務所から母宛に突然封書が届いた。開けてみると、所有の土地の立木が空港の高さ制限に引っかかるから入って木を切る同意書にサインして送り返してほしいと書いてあった。母名義の土地がその島に確かに存在していることがわかった。そして、番地が書いてある。グーグルアースで調べたら、空港の近くの小山だろうか、トンネルの上の林に赤い矢印がついた。なるほど地下はトンネル、上は立木が空港の高さ制限となれば、全く利用価値の無い土地で、税金も来ないはずだ。持ち逃げではなく、祖父は原野商法に引っかかったものだと、やっとわかった。

 この出来事は、祖父から五十年ぶりに手紙が来たような感じもして懐かしくもあり、すでに笑い話みたいなものだった。母も先方に電話をかけて、言っても仕方がないいきさつをくどくど話していた。管理事務所の方にはさぞかし迷惑な話を聞かされたのではないかと思う。そして、五十年前に祖父がだまされて購入した土地を写真で眺められたことも感慨深かった。今の時代はこういう原野商法に引っかかる人はまずいないのではないか、その分新手の詐欺が増えているのだろうけど。

 残る問題は、この土地を将来私が相続するかどうか。なにせ権利書も何もないのだから、現地に行って手続きするような事なら、ほっといた方が良いかなとも思う。森林税みたいな税金がかかるようになったら、物納したいかもしれない。その前に一度訪れて、いや、グーグルアースで見れば十分だ。もしその島に行くことがあったとしても、その時は他の名所を見てまわりたいものだ。


【追記】相続について調べてみたところ、税金かからないならほっとけと書いてあるものもあり、また、所有者不明の土地が増えていることから所有権放棄できる制度を政府が検討中との話もあった。早くそうなってほしいものだ。また、原野商法の詐欺は過去のものではなく、売ってやるなどと言ってさらにお金を要求する二次被害は今も続いていることがわかった。笑い話ではなかった。ここにそういうコメントが来たりするのだろうか。