阿武山(あぶさん)と栗本軒貞国の狂歌とサンフレ昔話

コロナ禍は去りぬいやまだ言ひ合ふを
ホッホッ笑ふアオバズクかも

by小林じゃ

大行院正楽寺 保井田薬師堂 縁日

2020-02-12 13:56:15 | 寺社参拝
2月11日は保井田薬師堂の縁日、貞国が文化十二年(1815)に狂歌に詠んだ薬師如来をお参りすることにした。なお、山号の「岩くろ山」の「くろ」は石偏に単という字でPCで見つからずタイトルでは省略した。そして、狂歌については次の記事で書くことにして、今回はお参りの始終を書いてみたい。

いつものように昼飯片付けてから12時41分の芸備線で出発。広島駅で13時15分の山陽本線岩国行に乗り換えて13時半過ぎに五日市着、北口のバス乗り場を確認してから、ここは20分以上あるので福屋の地下で乾物等の買い物をして、バス停に戻って13時57分彩が丘団地行きのバスに乗った。多分初めて通る道で、細い川に沿ってバスは北へ、十分ちょっとで保井田についた。保井田を我々が読むと「保」にアクセントがいってしまうが、バスのアナウンスは最後の「田」にアクセントがあった。しかし地元の発音は確認していない。



バス停を降りるとすぐに右手の丘の上にお堂が見えて、しかも西側は壁になっていて登るのは南側からとすぐにわかった。いつも道に迷っている人間にとってはありがたかった。



そのお堂の南側には何軒か露店が出ていて、石段は上が見えているからそれほど苦にはならない。もっとも、足が悪くて薬師如来にお願いという方には大変かもしれない。



登り切ったら右手に薬師堂、そして地元の方が甘酒のテントを出していらっしゃった。



まずはお参り。肉眼では暗くて薬師如来のお顔は見えにくかったが、デジカメにはかろうじて写っていた。ぱっと見さえん顔・・・いや、中世風で個性的な顔立ちの御仏だろうか。






  南無薬師瑠璃光如来 おんころころせんだりまとうぎそわか


  里人のかたるを聞けは浄るりのほとけも古き時代ものなり 貞国


貞国の歌については次回書くことにして、ここは引用だけに留めよう。もう一度よく見ると、慈悲心にあふれる表情で衆生を救い給う御仏に違いない。二度目は心を込めて、病気平癒を色々とお祈りした。甘酒をいただいた地元の方によると昔は参道にぎっしり露店が出ていたそうだ。今は賑わいとまではいかないけれど、それでも決して広いとは言えない境内に参拝の方が途切れることなく石段を登っていらっしゃった。



この薬師堂は昔は今薬師が丘団地になっている所にあり、明治になってからこの場所に遷されたという。しかし、お薬師さんは何百年も変わることなくあの表情で参拝者の願を聞き続けていらっしゃったのだろう。貞国が狂歌に詠んだこのお薬師さんが名残惜しくもあり、またこのコンパクト感が私には居心地が良く、結構長く境内に留まっていたと思う。御仏を見た時の第一印象からすると少し不思議な感じもするけれど、又の二月十一日にお参りしたい気持ちが強くなった。

保井田を14時59分のバスで五日市駅に戻り、少し時間があるから海老山公園に寄ってみようと思った。晩メシ当番のため五日市16時16分がリミットというのを確認してから南口に回り宮島街道を少し西に歩いたところが公園の入り口、しかしここにある、めん長州という麺類のお店にふらふら入ってしまった。常々、大手のチェーン店は避けて地元の小さなお店と思っているせいで、道の途中にこういうお店があるとつい入ってしまう。保井田にも気になるカレー屋さんがあったのだけど、休日はやってなくて残念だった。ここのラーメンは、広島ではスタンダードなとんこつ醤油、帰って調べたらおでんも美味しいそうで、次回食べてみたい。



これで時間をロスしたため、時計を見ながら海老山を登った。海抜60メートル足らずの小山で南北に長く、私は北側から登って南の展望台を目指したせいか、勾配はそれほどきつくなく、わりと簡単に展望台にたどりついた。しかしラーメン食ってしまったのが響いて展望台まで早足で往復しただけになり、途中の石碑などをスルーしてしまったのが残念だった。途中に宍戸氏城址の立札があってもどこが城あとなのかじっくり確認できなかった。せめて帰りにラーメンにすればよかった。いや、ここはもう一度ゆっくり訪れたいものだ。





展望台は草が茂っていて展望はもう一つだったが、もう一段高いところに登ると海が良く見えた。



思えば、最近は山と川ばかりで海を眺めることは無かった。これは貞国に海の歌が無いことも影響していると思う。もっとも師匠の貞佐は江田島で歌と絵を残しているし、貞国も水主町に住んでいたのだから、海に出なかったはずはない。今回保井田のお薬師さんにお参りしたことで、あと貞国が歌を詠んだ所というと加計とか豊平とか山間部の自力で行きにくい場所ばかり残った。できれば海沿いも、どこかないものか、調べてみたい。