阿武山(あぶさん)と栗本軒貞国の狂歌とサンフレ昔話

コロナ禍は去りぬいやまだ言ひ合ふを
ホッホッ笑ふアオバズクかも

by小林じゃ

短歌 その17(2019年3月~6月)

2019-03-06 13:10:20 | 短歌(まとめ)

 

 

     豪雨災害から八ヶ月といへる日に

  春雨や捜索ヘリの尾も低く月命日の三篠川ゆく

     さらにひと月後

  九ヶ月前の夏の夜忘るなと月命日に聞くヘリの音

 

     大頭社鳥喰祭の歌について書き終えて

  誰ひとりほめてくれぬが貞国のとぐひの歌を記しおはりぬ

             

      吉田サッカー公園の人工芝の隣、
      サポ捨て山はタイコの人の命名にて、
      老いて頑迷なるサポーターはその
      屈折したる幕や門旗と共にこの山に
      捨てられ、いつまでも休む事なく
      門旗を掲げてバモバモ呟きゐると
      なむ語り伝へたる

  とこしへにうたひつゞけよ吉田なるサポ捨て山に照る月を見て

 

      夜桜追憶

  夜桜も遠き昔となりにけり君の写真のやや霞みたる

 

      木芽和歯痛

  梓弓木の芽も春の筍を噛めば今年も歯ぐきぐらぐら

 

      読書乱心

  図書館のレファレンスなる窓口の清少納言首傾けり

 

      男子生涯成一事耳

  煮えてくる間に一品つくるのは苦手なりけり鍋が気になる

 

      旧三月十八日奉拝人丸神社

  宮島の姫神様に背を向けて人丸さんの森に分け入る

  鴨山の岩根し巻けるさにあらで木漏れ日やさし森の御やしろ

  貞国が願主となりて奉りし歌聞きたまへ春の筆柿

  二百二十九年ぶりに貞国の歌響かさん春の筆柿

  正一位にして歌聖の神様を人丸さんと里人は呼ぶ

  筆柿は碑のみ残りて祭壇の中に幹てふ里人の歌

 

       思病院父

  外泊のもらえぬ父やバラ肉とアナゴの残るチルド悲しも

 

       思慕平成元年

  平成の始まりし日の我といえば除籍間近の七回生なりき

  平成の始まりし日は六畳の炬燵二人でテレビ見居りき

  家賃のみ上がりて時給そのままに家賃のために働きし日々

  頼まれて表紙をみればララはまだ平気なれども少コミはいや

  ただ単に経済的な理由にて二人でシャワー浴びしあの頃

 

       目不合恋

  カウンターに座れば気持ち背が見える君の悲しみいかでとくべき

 

       御譲位改元

  たひらかになれる御代からうるはしくおさまる御代へ悲しみもなく

  

       奉祝令和元年残春

  うるはしくおさまる御代のはじめとて五日かぎりの春を祝はむ

 

       祈夏平穏

  うるはしくおさまるはじめの年なれば水損暴風無き夏をこそ

 

       父入院二ヶ月

  もう一度手術と聞けばはつ夏のあぜ道ふさぐすいば恨めし

  病室で顔を見るなり退院は今日ではないと海ながめ居る

 

       正明院明光寺薬師堂縁日

  はつなつの三篠の土手をひむがしへ歩むおやくっさんの縁日

  新緑の下におはするお大師の杖指すところ薬師堂見ゆ

  五百年前の享禄天文の大蛇退治を知る仏さま

  父の病しばし忘れて御仏の四角き顔をながめ居りけり

  楠若葉光る迷彩頭巾着て阿武山飲むや亀崎の森

 

       五月真夏日

  三十度ぐらいで暑い言うなかれ去年思えば爽やかな春よ

 

       陳腐夢

  ありがちな悪夢真暗き君の背の消えゆく先を追う三篠橋

 

       詰所隣病室

  鬼悪魔痛いやめろは平気でも暇人言われ怒る看護師

  数日で慣れるだろうがその前に声出てほしい父の筆談

  胃ろうてふ言葉を聞けば父も母も強く否みて下を向きけり

 

       親子生別

  バス来たよ道の向かいに声かける我は通院母は看病



       バス待

  夕陽映す君のナンバー過ぎゆきて十分待てどまだバスは来ず

 

 

    



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。