2007年5月3日 (1日目) 飛越トンネル~北ノ俣岳~左俣~太郎平小屋
前夜、飛越トンネルまでは車で入ることが出来た。事前の小屋からの情報では手前2キロから歩きとのことだったが、GWも後半。好天の後の降雨で一気に雪解けが進んだのか、行動時間が短縮できて大助かり。
朝、準備をしていると駐車スペースでGW前半に御一緒したHさんと再会。Hさんは黒部五郎小屋ベースで黒部から薬師までの広大なエリアを満喫されるとのこと。これから3日間お互い楽しい山スキーができればいいですね。
5時55分。飛越トンネル出発。
暫くはスキーを担いで夏道を歩く。
程なくして雪は現れたが、アップダウンが続くようなのでスキーは履かずに担ぎを継続。1時間程歩いてからスキーを履いた。
7時38分。神岡新道分岐。
この辺りで先行されているご夫婦と単独行さんの姿があり、会釈。
8時30分。寺地山。
薬師岳の展望が得られる。写真を撮っていると先程のご夫婦、単独行さんが到着され、会釈。
これから登る北ノ俣岳の斜面。
9時10分。避難小屋附近。
長かった尾根歩きを終えて北ノ俣岳の広大な斜面に取り付く。先行しているHさんの姿を探したが分からなかった。
快晴のもとで広い雪の斜面を登るのは実に爽快だ。
10時45分。北ノ俣岳山頂。
稜線に出ると、東側に広がる大パノラマ。午前中に目にしてきた景色とは全く異なる山岳景観が僕を圧倒する。頂上にはHさんが到着されていた。
まだ時間が早いので、このまま太郎平小屋直行で終了するのは勿体ない。薬師岳も考えてみたが時間的にも体力的にもかなり厳しいので、どこか楽しい所が無いか教えを請うと、「ちょっと冒険してみますか?」と左俣へ滑り込むルートを地図で丁寧に教えていただいた。
沢の下部は雪が割れている心配があるとのことだが…ここは一丁挑戦してみるか。
黒部五郎小屋へ向かうHさんの背中を見送ったあと、東に広がる大展望をボーっと眺めて過ごす。
Hさんが向かった黒部五郎方面。
黒部源流が見渡せる。
水晶岳のスカイライン。雲が次第に多くなる…
11時33分。
冒険の始まり。少し不安に揺れる気持ちを整えて北ノ俣岳東斜面にドロップイン。
気持ちいい~。
東斜面は上部を含めて傾斜は緩い。雪は硬く締まっているのでターンは快適だった。
広大な斜面に一人ぽつんと立つ。ここから下部は未知の世界だ。不安を前に僕の冒険心は竦んでしまう。登り返した方が安全だろうか…
沢筋に直接下りるとどんな地形に阻まれるか不明なので、やや高巻き気味にトラバースして谷の様子を窺う。
暫くトラバースを続けたが、次第に高巻きのし過ぎで谷との標高差が広がり過ぎた感あり。どうやら沢はしっかり雪が埋まっている様子なのでここで沢まで下ってみる。
沢はやや広め。初めのうちはデブリも無く順調に進むことが出来た。標高2,150mに記された滝も雪の下なのか気がつかなかった。
開放的な沢。滝はどこ?
標高2,080m以下では所々に大きな穴が現れる。ホールの下を雪解け水が流れ行く。附近に割れ目が走っているところは結構不安。ドカンと雪が陥没しないように場所を選びながらソロソロ通過。
標高2050m。沢が右に折れる地点は雪が崩れて前進困難のよう。丁度ここは太郎山へ向かう沢の方へ小尾根を乗り越えるポイントのようだ。一本のトレースに従って尾根に上がった。
12時10分。
尾根上は絶好の休憩ポイント。黒部源流地帯の片隅に身を置き、静寂を味わう。
休憩していると単独スキーヤーの方が到着された。静かに写真を撮りながら体を休める。
お昼寝していたいポイント。
12時45分。太郎平小屋に向けて登り返し。
トレースが残っていたのでこれを辿る。暫くしてトレースは沢寄りに降りていたが、僕は雪割れを心配して沢に降りなかった。これがちょっと失敗。その先で崖の上に出てしまう。足元に2,074mの平が見えるのでここは沢に下った方がよさそうだ。下りられない傾斜ではないので斜滑降で沢に下りる。丁度、北ノ俣岳から北北東に延びる尾根を滑降してこられたパーティーも沢に降り立ったところだった。
13時10分。
先を失礼して前進。少し先で再び沢が割れていたので、地形図上の夏道尾根へ登り上げているトレースに従う。ここから稜線までは標高差300m弱だが、これが結構キツイ。重い足をエイコラエイコラ掛け声をかけながら持ち上げる。
やっと太郎平小屋が見えてからも太郎山までの道が長く感じられた。
時折水晶岳の雄姿を振り返っては慰める。
14時15分。
小屋までの少しの斜面を滑ろうと太郎山でシールを剥がしていると上から白いものが…霰が降ってきたようだ。急いでザックを担いでスキーを履く。
小屋までひと滑り。急に天気が崩れてきた。
14時18分。
太郎平小屋到着。小屋の前にスキー板は意外と少なかった。
それでも個室は満室のようで、単独行は大部屋へ割り当てられる。
ひんやりとした大部屋の一角に腰を下ろして部屋着に着替えるが…迂闊にも持参したのは普通のジャージ…。この時期ならダウンやフリースを持って来るべきなのに、久しぶりの小屋泊まりに感覚がズレていた。冷たい布団に潜り込み夕食時間を待つ。トタン屋根を霰が激しく叩きつけ雷鳴が響く。
夕食の折、隣に座られた単独テレマーカーさんとお話しする。朝、寺地山あたりを同時刻に歩いておられた方と判明。失礼いたしました。
明日の行程をお聞きすると、薬師岳へ向かわれるとのこと。僕も薬師岳へ向かうと述べると、寺地山あたりでお会いしたご夫婦と薬師方面を滑られるとのことで、僕もメンバーに混ぜていただけることになった。
夕食後、食堂で地図を広げて作戦会議。地図を見ながらコースを組み立てるのはとても楽しい。時折全く違う山域の話題に脱線して盛り上がりながらも、明日は薬師岳から雪の状況をみて圏谷群を選んで滑り、最後は右俣を滑って小屋へ帰着するルートに決定。
このあとは、単独テレマーカーさんが振舞ってくれたバーボンで乾杯。
部屋に帰ってからもバーボンをいただきながら21時の消灯まで話し込んでしまう。
バーボンをいただいたおかげで体は温まり、冷たい布団の中でも凍えることなく朝を迎えることができました。
つづく
前夜、飛越トンネルまでは車で入ることが出来た。事前の小屋からの情報では手前2キロから歩きとのことだったが、GWも後半。好天の後の降雨で一気に雪解けが進んだのか、行動時間が短縮できて大助かり。
朝、準備をしていると駐車スペースでGW前半に御一緒したHさんと再会。Hさんは黒部五郎小屋ベースで黒部から薬師までの広大なエリアを満喫されるとのこと。これから3日間お互い楽しい山スキーができればいいですね。
5時55分。飛越トンネル出発。
暫くはスキーを担いで夏道を歩く。
程なくして雪は現れたが、アップダウンが続くようなのでスキーは履かずに担ぎを継続。1時間程歩いてからスキーを履いた。
7時38分。神岡新道分岐。
この辺りで先行されているご夫婦と単独行さんの姿があり、会釈。
8時30分。寺地山。
薬師岳の展望が得られる。写真を撮っていると先程のご夫婦、単独行さんが到着され、会釈。
これから登る北ノ俣岳の斜面。
9時10分。避難小屋附近。
長かった尾根歩きを終えて北ノ俣岳の広大な斜面に取り付く。先行しているHさんの姿を探したが分からなかった。
快晴のもとで広い雪の斜面を登るのは実に爽快だ。
10時45分。北ノ俣岳山頂。
稜線に出ると、東側に広がる大パノラマ。午前中に目にしてきた景色とは全く異なる山岳景観が僕を圧倒する。頂上にはHさんが到着されていた。
まだ時間が早いので、このまま太郎平小屋直行で終了するのは勿体ない。薬師岳も考えてみたが時間的にも体力的にもかなり厳しいので、どこか楽しい所が無いか教えを請うと、「ちょっと冒険してみますか?」と左俣へ滑り込むルートを地図で丁寧に教えていただいた。
沢の下部は雪が割れている心配があるとのことだが…ここは一丁挑戦してみるか。
黒部五郎小屋へ向かうHさんの背中を見送ったあと、東に広がる大展望をボーっと眺めて過ごす。
Hさんが向かった黒部五郎方面。
黒部源流が見渡せる。
水晶岳のスカイライン。雲が次第に多くなる…
11時33分。
冒険の始まり。少し不安に揺れる気持ちを整えて北ノ俣岳東斜面にドロップイン。
気持ちいい~。
東斜面は上部を含めて傾斜は緩い。雪は硬く締まっているのでターンは快適だった。
広大な斜面に一人ぽつんと立つ。ここから下部は未知の世界だ。不安を前に僕の冒険心は竦んでしまう。登り返した方が安全だろうか…
沢筋に直接下りるとどんな地形に阻まれるか不明なので、やや高巻き気味にトラバースして谷の様子を窺う。
暫くトラバースを続けたが、次第に高巻きのし過ぎで谷との標高差が広がり過ぎた感あり。どうやら沢はしっかり雪が埋まっている様子なのでここで沢まで下ってみる。
沢はやや広め。初めのうちはデブリも無く順調に進むことが出来た。標高2,150mに記された滝も雪の下なのか気がつかなかった。
開放的な沢。滝はどこ?
標高2,080m以下では所々に大きな穴が現れる。ホールの下を雪解け水が流れ行く。附近に割れ目が走っているところは結構不安。ドカンと雪が陥没しないように場所を選びながらソロソロ通過。
標高2050m。沢が右に折れる地点は雪が崩れて前進困難のよう。丁度ここは太郎山へ向かう沢の方へ小尾根を乗り越えるポイントのようだ。一本のトレースに従って尾根に上がった。
12時10分。
尾根上は絶好の休憩ポイント。黒部源流地帯の片隅に身を置き、静寂を味わう。
休憩していると単独スキーヤーの方が到着された。静かに写真を撮りながら体を休める。
お昼寝していたいポイント。
12時45分。太郎平小屋に向けて登り返し。
トレースが残っていたのでこれを辿る。暫くしてトレースは沢寄りに降りていたが、僕は雪割れを心配して沢に降りなかった。これがちょっと失敗。その先で崖の上に出てしまう。足元に2,074mの平が見えるのでここは沢に下った方がよさそうだ。下りられない傾斜ではないので斜滑降で沢に下りる。丁度、北ノ俣岳から北北東に延びる尾根を滑降してこられたパーティーも沢に降り立ったところだった。
13時10分。
先を失礼して前進。少し先で再び沢が割れていたので、地形図上の夏道尾根へ登り上げているトレースに従う。ここから稜線までは標高差300m弱だが、これが結構キツイ。重い足をエイコラエイコラ掛け声をかけながら持ち上げる。
やっと太郎平小屋が見えてからも太郎山までの道が長く感じられた。
時折水晶岳の雄姿を振り返っては慰める。
14時15分。
小屋までの少しの斜面を滑ろうと太郎山でシールを剥がしていると上から白いものが…霰が降ってきたようだ。急いでザックを担いでスキーを履く。
小屋までひと滑り。急に天気が崩れてきた。
14時18分。
太郎平小屋到着。小屋の前にスキー板は意外と少なかった。
それでも個室は満室のようで、単独行は大部屋へ割り当てられる。
ひんやりとした大部屋の一角に腰を下ろして部屋着に着替えるが…迂闊にも持参したのは普通のジャージ…。この時期ならダウンやフリースを持って来るべきなのに、久しぶりの小屋泊まりに感覚がズレていた。冷たい布団に潜り込み夕食時間を待つ。トタン屋根を霰が激しく叩きつけ雷鳴が響く。
夕食の折、隣に座られた単独テレマーカーさんとお話しする。朝、寺地山あたりを同時刻に歩いておられた方と判明。失礼いたしました。
明日の行程をお聞きすると、薬師岳へ向かわれるとのこと。僕も薬師岳へ向かうと述べると、寺地山あたりでお会いしたご夫婦と薬師方面を滑られるとのことで、僕もメンバーに混ぜていただけることになった。
夕食後、食堂で地図を広げて作戦会議。地図を見ながらコースを組み立てるのはとても楽しい。時折全く違う山域の話題に脱線して盛り上がりながらも、明日は薬師岳から雪の状況をみて圏谷群を選んで滑り、最後は右俣を滑って小屋へ帰着するルートに決定。
このあとは、単独テレマーカーさんが振舞ってくれたバーボンで乾杯。
部屋に帰ってからもバーボンをいただきながら21時の消灯まで話し込んでしまう。
バーボンをいただいたおかげで体は温まり、冷たい布団の中でも凍えることなく朝を迎えることができました。
つづく