2007年3月21日 焼山(敗退)
天気図に現れた移動性高気圧。北陸地方の天気予報は曇のち晴れ。
シーズン中盤、この天気を逃すと、もうチャンスは巡ってこないかもしれない。
薙刀山行きの予定を急遽焼山に変更して糸魚川を目指した。
今回はオール高速、「おとな走り」である。
高速効果もあり0時30分笹倉温泉に到着した。
翌朝4時45分起床。星が出ていた。
朝は滅法弱いので食欲も無いが、今日は持久戦なので無理してでも朝食。
涙目になりながら20分掛けてやっとおにぎり2個を胃に押し込む。
隣に駐車していた二人パーティは早々に出発して行った。
5時55分。
笹倉温泉出発。
駐車場傍からシール歩行可。トレースに従って橋を渡り、林道を進む。
冬景色をした里の朝
杉林の中、トレースを辿る。
先行者は九十九折れの林道を豪快にショートカット。
全く無駄なく効率的にルートを選ばれている。
かなりこのコースを熟知された方のようだ。
あまりにも急なショートカットで突破していて、敢え無く跳ね返される箇所もあった。
九十九折れ林道を過ぎると緩斜面の林間。
比較的複雑な地形で僕なら確実に迷いそうなルートだが、先行者のパーフェクトなトレースで順調に前進することができた。
林道の途中から焼山、高松山、昼闇山。天気は上々。
焼山の頭を遠望。気分が高揚してくる。
8時00分。
アマナ平入り口。
ここで先行のお二人に追いついた。
ずっとラッセルしてくださったお二人とは、なんとH先生とF名人の最強タッグだった。
どうりであの豪快なショートカットと無駄の無い完璧なトレース…
お二人は火打山まで行かれるそうだが、先生には焼山へのルートを教えていただいた。
アマナ平。先週に引き続き今日もまた大先達のお導き。
8時51分。
焼山北面台地末端に到達。
憧れの焼山・火打と対峙。
ここ数日の降雪でふんわりと雪を纏った周囲の山々も神々しい。
端正な姿を魅せる焼山
白さ際立つ高松山
ここで、再度H先生から焼山への登頂コースのアドバイスを頂く。
ここまでトレースを使わせていただいたお礼を述べて、火打山へ向かう二人の背中を見送った。
9時06分。
北面台地末端出発。
暫くトレースを辿ったあと、右寄り焼山方面に進路を取る。
さぁ、ここからは自分でラッセル!
自然とエンジンの回転は上がり、フカフカの北面台地に板を漕ぎ出す。
なるべくアップダウンが生じないように前進。
初めは快調に飛ばしていたが、そのうち息切れ…
広大な北面台地は歩いても歩いても焼山に近づかない。
しかし天気は最高。快晴無風で全く音の無い世界。
時折立ち止まり、聴こえてくるのは自分の鼓動だけ。
ラッセルが続く北面台地。鉾ヶ岳を振り返る。
複雑な地形の火打山北面
柔らかな雪が斜面を包む
11時00分。
標高1700m通過。
いよいよ焼山の斜面に取り付いた印象だ。
斜面右上トラバースポイントとなる岩を目指し登ってゆく。
表面の雪は50~60cmか。スキーだと脛ラッセルといったところ。
10時を過ぎた頃から雪崩の発生音が山にこだまするようになった。
気温上昇につれて雪崩の不安も高くなる。
この斜面は大丈夫なのだろうか…
いよいよ焼山への登りが始まる。
昼闇山がよく目立つ
時間は経過するがラッセルははかどらない。
時折GPSで高度を確認するが数字を見てガックリ。
11時55分。
漸く目標の岩場の下部に到達。
ここからルンゼを越えて焼山西面に回り込まなくてはいけない。
ルンゼは雪が吹き溜まった状態なので雪崩を発生させないか心配。
最初のルンゼを慎重に渡りきったが、このあたりは1メートル近い積雪。
上部の岩場を窺うが雪がうねっていて怖い。
更に右手のルンゼをトラバースできるのか偵察に向かったのだが…
ルンゼに差しかかった籔のなかでスリップ。氷化した斜面で板が滑ってズルズル降下。
なんとか木の枝にしがみついて難を逃れた。
体勢を立て直して脱出するまで20分間、籔とじゃれあっていた。
敗退地点は標高2,000m。
12時30分。
今日はここが限界点と判断。
無理を押して雪崩でも起こしたら元も子もない。
未練は残るがここでシールを剥がして滑走の準備をした。
12時40分。
気を取り直して北面台地に向けて滑走開始。
適度な斜度。気持ちの良いパウダー。
雄叫びを上げながらフワフワ斜面をゆっくリズムターン。
北面台地俯瞰
点在する岳樺の美しさ
途中で後続の単独さんとすれ違い軽くご挨拶。
滑っては止まり、シュプールを振り返って悦に入ってまた滑る。
北面に描いたシュプール
火打山方面を遠望すると、上部の雪面の中を登高するH先生とFさんの姿が確認できた。
順調に高度を上げている様子。
火打山に向けて斜面を登るH先生とFさん
焼山北面のおいしい斜面が終わると、あとはトレースを直滑降。
幸い登り返しのないコース取りが出来たのであっという間に北面台地末端に帰還。
13時40分。北面台地末端にて。敗退でも上機嫌。
楽しかった北面台地に別れを告げれば、あとは笹倉温泉に帰るだけ。
春の日差しでベチャベチャになったトレースを汗かきながら下った。
午後の林道
14時45分。
笹倉温泉に無事到着。
一日駐車させてもらい申し訳ないので温泉に入って汗を流した。