今日の108円

1日1冊108円・・・・・・最近そうでもない。

チップス先生 さようなら ヒルトン 菊池重三郎訳 1956年7月30日 新潮社

2015-11-12 06:16:19 | その他小説
霧深い夕暮れ、炉辺に坐って回想にふけるチップス先生の胸に、ブルックフィールド中学での六十余年の楽しい思い出が去来する。腕白だが礼儀正しい学生たちとの愉快な生活、美しく聡明だった亡き妻、大戦当時の緊張した日々・・・・・・。愛情に満ち、しゃれの名人でもある英国人気質の老教師と厳格な反面ユーモアに満ちた英国の代表的なパブリック・スクールの生活を描いて絶讃された名作。
裏表紙より。
袖の写真を見るに、どうやら映画化もされているらしい。
半世紀以上前に『絶讃された名作』、はたしてその内容は・・・・・・?




「コリー、君は・・・・・・あーム・・・・・・遺伝の・・・・・・あーム・・・・・・素晴らしい実例だ。わしは君のお祖父さんを覚えているが・・・・・・あーム・・・・・・お祖父さんはな、ラテン語の絶対奪格が最後まで分らずじまいだった。つまり、頭が悪かったんだな、君のお祖父さんという人は。ところが、君のお父さんは、その壁ぎわの向こうの机にいつも坐っていたんだが・・・・・・ま、似たり寄ったりというところだった。しかしだ、わしの考えで、これだけは絶対だと思うんだが、ね・・・・・・コリー君や・・・・・・君は・・・・・・あーム・・・・・・三人のうちでズバ抜けて頭が悪いよ!」
ちくしょうめwww
こんな教師だったらしいです。




 それはある意味では真実だった。なぜなら、新しい世紀が始まるころには、チップスは、目につく癖と聞き慣れた冗談とが、渾然一つの調和をつくる円熟の境に到達したからである。
チップス先生は1848年生まれ。
50歳で『円熟の境に到達した』と言えるものがあるかどうか。
亀の甲の方が役に立つような人間になっていたらと思うとゾッとする。
どうする・・・・・・どうすれば・・・・・・
「四の五の言わずにやりゃあいいんだよ」




 静かな、ものに感じ易い少年だったが・・・・・・。後日、チップスがお悔みを述べるような運命になった相手は、父親のグレイスンで、この息子の方ではなかった。
(´・ω・)
「そういう時代」と流すのは簡単だけど・・・・・・
100年も経たない程度の誤差なんだよね。




「ねえ、わしは若い者と違うんだし、あんまり・・・・・・あー・・・・・・期待をかけられても、困ってしまう。わしは、ほらどこでも見掛けるあの新米の大佐や少佐のようなものでさ、謂わば、戦時僥倖者ですよ。兵士上がりの将校、まあ、そのへんのところですな」
『最後の栄誉』を、『戦時僥倖者』(まぐれあたり)と言い切って振り捨てる。
名誉への執着は金銭への執着よりも厄介らしいしなぁ・・・・・・。
特許大学のような馬鹿げた話もあるし。




「たしかに・・・・・・あーム・・・・・・ある」
こう言えるように、生きたい。




悲しいとか哀しいとは違う・・・・・・
「静かな本」というか、「静める本」というか。
108ページと短い話なんだけど、ゆっくり読んでね!

手元にあるのが1992年5月30日の『八十四刷』。
『絶讃された名作』、看板に偽り無し。


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