秋山小兵衛の若き日の愛弟子が斬り殺された事件と、江戸市中の三か所で女が殺され、陰所と左の乳房が抉られていた事件。二つの事件の接点に浮かび上がった異常な殺人鬼の正体を、復讐の念に燃えた小兵衛が追う「白い鬼」。試合に負けたらその相手の嫁になるという佐々木三冬の話にうろたえる大治郎を描く「三冬の縁談」。もう一人の女剣士「手裏剣お秀」の登場など、シリーズ第5弾。裏表紙より。
元の本は1975年2月。
白い鬼その『可愛い弟子』こと竜野庄蔵は、小兵衛の家に向かう途中、
「そりゃ、うれしいさ。出来のわるい、可愛い弟子が十五年ぶりにやって来るのじゃ。たんと、御馳走をしてやっておくれ」
仕えている沼田藩が追っていた男・金子伊太郎を発見。
その後を追った結果、襲われて重傷を負ってしまったのです。
翌日小兵衛は見舞いに行き、幸い命は助かったかに見えた5日後・・・・・・
顔色青ざめ、蹌踉として居間へあらわれた田中宗作が、そんな・・・・・・
「秋山先生・・・・・・」
がっくりと肩を落し、
「竜野庄蔵、先刻、亡くなりましてございます」
「こうなれば・・・・・・こうなっては、ぜひとも、庄蔵の腕を切り落とした金子伊太郎なる者の身性を聞かねば、秋山小兵衛おさまりませぬぞ!!」小兵衛、激怒す。
沼田藩の役人が検視に来て、顔をそむけた。沼田藩士・田中宗作が話した、金子伊太郎という男の所業。
こいつは普通ではない・・・・・・!
弥七に協力を求めたところ、最近弥七が追っていた殺人鬼の特徴と完全に一致。
すでに江戸でも3人の犠牲者が・・・・・・これは絶対に許せんな。
さて、殺人鬼・金子伊太郎は何を考えて生きているのか?
その日から、伊太郎の様子が一変した。うーん・・・・・・
母親のおりきが、トんだ馬鹿女だった訳だーね。
『邪気』が無いからこそタチが悪いタイプ。
しかし、だからといって伊太郎の所業は許されない。
誰かが止めねばならぬのだよ!
見事な推理で伊太郎の潜伏先を発見した小兵衛。
沼田藩士が伊太郎を捕らえる現場を、大治郎と共に見守るはずが・・・・・・
なんとも凄まじい金子伊太郎の反撃に、たちまち、五人が餌食となった。伊太郎の剣法がどうのというより、殺人の現場を何回となく踏みわたって来た伊太郎の経験が、藩士たちの〔道場剣術〕を、まったく寄せつけぬといってよい。ことに矢部市右衛門が殪れて、討手は動揺した。10人がかりの奇襲をものともせず、『一刀流の名手』と言われた矢部まで返り討ちに。
どうやらこいつは『天魔』笹目千代太郎並の強敵・・・・・・!
小兵衛は愛弟子の敵を取ることができるのか!?
西村屋お小夜三冬がちょっとした現場を目撃してしまったところからスタート。
あわてふためき木立を走り出た三冬は、一散に寮へ向って駆けた。いや、逃げたといったほうが適切だったろう。
その日の夜。
三冬は何者かに襲われるも、あっさり返り討ちに。
町駕籠で、妙な男を運んで来た三冬を迎え、大治郎はおどろいた。イジワルすんなw
「どうなされた?」
「お知恵を拝借に・・・・・・」
「私でよろしいのですか?」
「秋山小兵衛先生は御風邪を召していると、うかがいました」
「さよう。それで、私で間に合わせようと申される?」
三冬の命を狙った連中の正体は?
腹痛で寝込む小兵衛は放置して、大治郎と三冬が鮮やかに事件を解決!
「存じませぬ!!!」「言わせよう」って趣向じゃなかったの?( ^ω^)
と、怒ったような一声を投げるや、三冬は突然立ちあがり、外へ駆け去った。
「はて・・・・・・?」
秋山大治郎は、冷えた茶を一口のみ、考えこんでいる。
手裏剣お秀ジジィwww
「わしはな、子供のころから五、六年置きに、腹ぐあいが悪くなる。そういう体にできているらしい。ほんとうのことよ。そのたびに、こういうやり方で癒してきたのだから、案ずるにはおよばないのじゃ」
などと、おはるに向って大威張りである。
調子のんな!w
そんな小兵衛のところへ、鰻屋の又六が相談に現れる。
「それが先生。こんなことは、まったく、余計なことかも知れねえですがね・・・・・・」完全に無駄の無い世界を、見てみたいようなそうでないような。
「世の中の善い事も悪い事も、みんな、余計なことから成り立っているものじゃよ」
又六の心配事とは、母親が聞いた隣の部屋に住む浪人どもの会話。
「場所は品川台町の外れで、女が、ひとりで住んでいるらしい。それを押さえつけて、な。裸に引剥いて、われわれで、さんざんになぐさみものにする。え、どうだ。それで五両下さる」わかりやすくクズだなぁ。
「ほう、五両・・・・・・」
「どうだ。え、どうだ?」
「わるくない、な・・・・・・」
この襲撃計画の首謀者の正体、そして動機はと言うと・・・・・・
「他家へ土足で駆けあがるとは、無礼でありましょう」自惚れたお坊ちゃまどもが女剣士にあっさり捻られたもんで、
逆恨みで人を集めて・・・・・・ということらしい。
わかりやすくクズだなぁ。
「先生。私、このひとのほうが、三冬さまより、ずっと好きだよう」秀の実力はガチ。
暗殺犬も歩けば棒に当たるように!
かなりの重傷らしいが、
(助からぬものでもない・・・・・・)
と、大治郎はおもった。
助からぬものならば遺言を聞いてやらねばならぬ。助かるものならば傷の手当を急がねばならぬ。
秋山歩けば事件に当たるのである!
結局手当の甲斐なくその若侍は亡くなる。
ま、そういうこともあるさね。
はっきり遺言らしい言葉を残した訳でもなく、もう大治郎には関係無い話。
と思いきや・・・・・・
「いざとなれば、その、秋山某をも葬らねばなるまい」大治郎に危機迫る。
「手強い相手と見えまする」
「手強ければ、その上に手強い者を差し向けるのじゃ。金を惜しむな」
「はっ」
疑心暗鬼怖い。
稲妻が光った。大治郎ーッ!!
「大先生。これで世の中が、すこしは静かになりましょう」わりと手段は選ばない小兵衛でありました。
雨避け小兵衛梅雨の晴れ間とお散歩していた小兵衛でしたが、雨に降られて雨宿り。
「こりゃあ、いかぬ」
どこへ逃げこむ間とてなかった。
ふと見やると、右側の畑の中にわら屋根の小屋が一つ、目に入った。
そこにトンでもない「客」が現れる。
白い雨の幕を掻きわけるように、一人の男が、畑道をこちらへ駆けて来る。小兵衛が押し入れに隠れていることも知らず、小屋に辿り着いた男は追っ手に金を要求。
男は左腕で、十歳ほどの女の子を抱きかかえ、右手に刀をつかんでいた。
こりゃまたクズが出てきよったで。
(こいつ、むずかしいわえ・・・・・・)むむむ・・・・・・!
さすがに、子供を人質にして、大刀を抜きもっている相手を、
(うかつにはあつかえぬ)
と、おもった。
(関山虎次郎も、ずいぶんと老けたものよ。むりもない。あれから三十年にもなるのじゃから・・・・・・)なんとこの誘拐犯、かつて小兵衛が『敗退しかかったほどの激しい試合』をした相手。
その試合は虎次郎の仕官がかかったものでした。
勝ったものの仕官のつもりは全く無かった小兵衛。
その後の虎次郎の転落人生を哀れみ、子供さえ無事なら『見逃してやってもよい』・・・・・・
と思い始めていたのですが・・・・・・
虎次郎の、半白の髪が烈しくゆれうごきはじめた。虎次郎、アウトー。
押入れの戸が引き開けられたのは、実にこのときであった。
「あいつ、これから先・・・・・・わしが、もう、この世にいなくなったとき、どんな生きざまをして行くことになるのか・・・・・・」『剣術つかい』の成れの果てを見て、いつになく落ち込む小兵衛でありました。
たとえ一流と言われても、「それしかできない」人間は・・・・・・脆い。
三冬の縁談三冬は「食べ盛り剣士」の称号を手に入れた!
三冬は、茄子の角切に、新牛蒡のささがきを入れた熱い味噌汁で、飯を三杯も食べてしまい、食べ終わって、さすがに大治郎の視線を外し、
「根岸から、ここまでまいりますと、お腹も空きます」
と、いったものだ。
説明:「その胃ノ腑、底なし。」
「大治郎さま・・・・・・」( ・∀・)ニヤニヤ
三冬が、よびかけた。
以前は「大治郎どの」といっていたのに、このごろは〔さま〕という。いささか、こそばゆい。
そんな三冬に、またしても縁談が。
「それは、め、で、たい・・・・・・」大治郎www
「父も、このたびは真剣でございます」
「なる、ほど・・・・・・」
動揺し過ぎワロタw
ま、どうせ生半可な腕じゃ三冬の相手にはならないし・・・・・・
と思いきや、今度の相手・大久保平蔵は大治郎の知った男で、大治郎の見立てでは、
(勝てぬ・・・・・・あの男には、到底、三冬どのは勝てぬ)
(勝てぬ・・・・・・大久保には勝てぬ・・・・・・)( <〇>_<〇>)カテヌ・・・・・・
動揺した大治郎は小兵衛のところへ。
「三冬どのが負けて、いやいやながら大久保の妻となることを、お前はよろこばぬ。そうなのだな?」【悲報】大治郎、ヘナヘナ
「いえ、それは・・・・・・」
「だまれ!!」
小兵衛が活と両目を見ひらき、すばらしい一喝を大治郎へあびせた。
(はて、今度ばかりは困ったわえ・・・・・・)問題の大久保某は、剣の腕は立つものの非常に傲慢な男。
さすがの小兵衛も、ためいきをついている。
大治郎の話を聞いて小兵衛も三冬のことが心配になるも、さてどうしたものか。
(それにしても、だ。三冬さんのほうは大治郎を何とおもうているのか・・・・・・?)ジジィwww
であった。
剣を通じて親しくしているようだが、もともと三冬は、
(わしのことを好いていたのじゃし・・・・・・)
おもわず、にやりとなった。
ホント調子乗んな!w
三冬の父・田沼意次なら、小兵衛が事情を話せば縁談を取り止める可能性もなくはない。
でもそういう『告げ口』は小兵衛の趣味に合わないところ。
『どうしようもない』と思いつつも、小兵衛は大久保某をその目で確認。
(なるほど。これは到底、三冬どのの手には負えまい)むー。
小兵衛はあらためて、そうおもった。
小兵衛までそう見るなら、もう三冬の嫁入りは確定じゃないっスか。
そっかー・・・・・・はぁー・・・・・・
ところが、である。この話の教訓
「大賢は市井に遁す」
「傲慢が綻びを生むというのか」
たのまれ男安定の「助けた相手が昔の知り合い」パターン。
「小針さん。私の声を、おぼえていないか?」
「な、何ですと?」
「秋山大治郎だ」
大治郎の友人・小針又三郎はわりとどうでもいい。
この話で注目したいのは、大名家の下目付・杉山米次郎。
杉山は当年四十二歳。人柄もしっかりしてい、柳川藩の下目付をつとめていた。この役目は上下藩士の監察に任じている大目付の手足となってはたらくわけで、平素は藩内の勤怠邪正を調査し、これを大目付へ密告する。『平素は物しずかな』この男、いざとなれば・・・・・・
(なるほど・・・・・・大名家の下目付とは、いざとなると、こうしたものか・・・・・・)大治郎が驚くほどの仕事ぶり。
何やら、のみこめたおもいがしたのである。
締めるところは締めていかないとねー。
(緊急時の自分の判断が間違いなら)『腹を切ればすむことでございます』と
『淡々という』のが杉山米次郎。
それだけに、かねてから杉山が、役職の責任を、覚悟が無いからッ!
「いのちがけで・・・・・・」
負っている覚悟のほどが、大治郎にはひしひしと感じられたのである。
杉山さんがいりゃあなぁ・・・・・・。
「そういえば佐々木三冬・・・・・・いや、お前の恋女の始末を、これから、どうつけるつもりかよ?」( ・∀・)ニヤニヤ
「あ・・・・・・父上。小針又三郎が、遠くで手を振っております」
ビリビリからニヤニヤまで盛りだくさん。
以上、『シリーズ第5弾』でありました。
解説ハゲドウッ!
常盤新平
『白い鬼』を読んだのは、これでなんどめだろう。これを読めば、つぎの『新妻』を読みたくなる。『剣客商売』もまたそういう癖がついてしまうシリーズである。
・・・・・・『新妻』だって!?
急げ、ぼおこffへ!!!