今日の108円

1日1冊108円・・・・・・最近そうでもない。

剣客商売 白い鬼 池波正太郎 1989年9月25日 新潮社

2015-11-15 09:26:37 | 剣客商売
秋山小兵衛の若き日の愛弟子が斬り殺された事件と、江戸市中の三か所で女が殺され、陰所と左の乳房が抉られていた事件。二つの事件の接点に浮かび上がった異常な殺人鬼の正体を、復讐の念に燃えた小兵衛が追う「白い鬼」。試合に負けたらその相手の嫁になるという佐々木三冬の話にうろたえる大治郎を描く「三冬の縁談」。もう一人の女剣士「手裏剣お秀」の登場など、シリーズ第5弾。
裏表紙より。
元の本は1975年2月。



白い鬼

「そりゃ、うれしいさ。出来のわるい、可愛い弟子が十五年ぶりにやって来るのじゃ。たんと、御馳走をしてやっておくれ」
その『可愛い弟子』こと竜野庄蔵は、小兵衛の家に向かう途中、
仕えている沼田藩が追っていた男・金子伊太郎を発見。
その後を追った結果、襲われて重傷を負ってしまったのです。

翌日小兵衛は見舞いに行き、幸い命は助かったかに見えた5日後・・・・・・
 顔色青ざめ、蹌踉として居間へあらわれた田中宗作が、
「秋山先生・・・・・・」
 がっくりと肩を落し、
「竜野庄蔵、先刻、亡くなりましてございます」
そんな・・・・・・


「こうなれば・・・・・・こうなっては、ぜひとも、庄蔵の腕を切り落とした金子伊太郎なる者の身性を聞かねば、秋山小兵衛おさまりませぬぞ!!」
小兵衛、激怒す。


 沼田藩の役人が検視に来て、顔をそむけた。
沼田藩士・田中宗作が話した、金子伊太郎という男の所業。
こいつは普通ではない・・・・・・!

弥七に協力を求めたところ、最近弥七が追っていた殺人鬼の特徴と完全に一致。
すでに江戸でも3人の犠牲者が・・・・・・これは絶対に許せんな。


さて、殺人鬼・金子伊太郎は何を考えて生きているのか?
 その日から、伊太郎の様子が一変した。
うーん・・・・・・
母親のおりきが、トんだ馬鹿女だった訳だーね。
『邪気』が無いからこそタチが悪いタイプ。

しかし、だからといって伊太郎の所業は許されない。
誰かが止めねばならぬのだよ!


見事な推理で伊太郎の潜伏先を発見した小兵衛。
沼田藩士が伊太郎を捕らえる現場を、大治郎と共に見守るはずが・・・・・・
 なんとも凄まじい金子伊太郎の反撃に、たちまち、五人が餌食となった。伊太郎の剣法がどうのというより、殺人の現場を何回となく踏みわたって来た伊太郎の経験が、藩士たちの〔道場剣術〕を、まったく寄せつけぬといってよい。ことに矢部市右衛門が殪れて、討手は動揺した。
10人がかりの奇襲をものともせず、『一刀流の名手』と言われた矢部まで返り討ちに。
どうやらこいつは『天魔』笹目千代太郎並の強敵・・・・・・!
小兵衛は愛弟子の敵を取ることができるのか!?





西村屋お小夜

 あわてふためき木立を走り出た三冬は、一散に寮へ向って駆けた。いや、逃げたといったほうが適切だったろう。
三冬がちょっとした現場を目撃してしまったところからスタート。

その日の夜。
三冬は何者かに襲われるも、あっさり返り討ちに。
 町駕籠で、妙な男を運んで来た三冬を迎え、大治郎はおどろいた。
「どうなされた?」
「お知恵を拝借に・・・・・・」
「私でよろしいのですか?」
「秋山小兵衛先生は御風邪を召していると、うかがいました」
「さよう。それで、私で間に合わせようと申される?」
イジワルすんなw

三冬の命を狙った連中の正体は?
腹痛で寝込む小兵衛は放置して、大治郎と三冬が鮮やかに事件を解決!
「存じませぬ!!!」
 と、怒ったような一声を投げるや、三冬は突然立ちあがり、外へ駆け去った。
「はて・・・・・・?」
 秋山大治郎は、冷えた茶を一口のみ、考えこんでいる。
「言わせよう」って趣向じゃなかったの?( ^ω^)





手裏剣お秀

「わしはな、子供のころから五、六年置きに、腹ぐあいが悪くなる。そういう体にできているらしい。ほんとうのことよ。そのたびに、こういうやり方で癒してきたのだから、案ずるにはおよばないのじゃ」
 などと、おはるに向って大威張りである。
ジジィwww
調子のんな!w

そんな小兵衛のところへ、鰻屋の又六が相談に現れる。
「それが先生。こんなことは、まったく、余計なことかも知れねえですがね・・・・・・」
「世の中の善い事も悪い事も、みんな、余計なことから成り立っているものじゃよ」
完全に無駄の無い世界を、見てみたいようなそうでないような。


又六の心配事とは、母親が聞いた隣の部屋に住む浪人どもの会話。
「場所は品川台町の外れで、女が、ひとりで住んでいるらしい。それを押さえつけて、な。裸に引剥いて、われわれで、さんざんになぐさみものにする。え、どうだ。それで五両下さる」
「ほう、五両・・・・・・」
「どうだ。え、どうだ?」
「わるくない、な・・・・・・」
わかりやすくクズだなぁ。

この襲撃計画の首謀者の正体、そして動機はと言うと・・・・・・
「他家へ土足で駆けあがるとは、無礼でありましょう」
自惚れたお坊ちゃまどもが女剣士にあっさり捻られたもんで、
逆恨みで人を集めて・・・・・・ということらしい。
わかりやすくクズだなぁ。


「先生。私、このひとのほうが、三冬さまより、ずっと好きだよう」
秀の実力はガチ。





暗殺

 かなりの重傷らしいが、
(助からぬものでもない・・・・・・)
 と、大治郎はおもった。
 助からぬものならば遺言を聞いてやらねばならぬ。助かるものならば傷の手当を急がねばならぬ。
犬も歩けば棒に当たるように!
秋山歩けば事件に当たるのである!

結局手当の甲斐なくその若侍は亡くなる。
ま、そういうこともあるさね。

はっきり遺言らしい言葉を残した訳でもなく、もう大治郎には関係無い話。
と思いきや・・・・・・
「いざとなれば、その、秋山某をも葬らねばなるまい」
「手強い相手と見えまする」
「手強ければ、その上に手強い者を差し向けるのじゃ。金を惜しむな」
「はっ」
大治郎に危機迫る。
疑心暗鬼怖い。


 稲妻が光った。
大治郎ーッ!!


「大先生。これで世の中が、すこしは静かになりましょう」
わりと手段は選ばない小兵衛でありました。





雨避け小兵衛

「こりゃあ、いかぬ」
 どこへ逃げこむ間とてなかった。
 ふと見やると、右側の畑の中にわら屋根の小屋が一つ、目に入った。
梅雨の晴れ間とお散歩していた小兵衛でしたが、雨に降られて雨宿り。

そこにトンでもない「客」が現れる。
 白い雨の幕を掻きわけるように、一人の男が、畑道をこちらへ駆けて来る。
 男は左腕で、十歳ほどの女の子を抱きかかえ、右手に刀をつかんでいた。
小兵衛が押し入れに隠れていることも知らず、小屋に辿り着いた男は追っ手に金を要求。
こりゃまたクズが出てきよったで。


(こいつ、むずかしいわえ・・・・・・)
 さすがに、子供を人質にして、大刀を抜きもっている相手を、
うかつにはあつかえぬ)
 と、おもった。
むむむ・・・・・・!


(関山虎次郎も、ずいぶんと老けたものよ。むりもない。あれから三十年にもなるのじゃから・・・・・・)
なんとこの誘拐犯、かつて小兵衛が『敗退しかかったほどの激しい試合』をした相手。
その試合は虎次郎の仕官がかかったものでした。

勝ったものの仕官のつもりは全く無かった小兵衛。
その後の虎次郎の転落人生を哀れみ、子供さえ無事なら『見逃してやってもよい』・・・・・・
と思い始めていたのですが・・・・・・
 虎次郎の、半白の髪が烈しくゆれうごきはじめた。
 押入れの戸が引き開けられたのは、実にこのときであった。
虎次郎、アウトー


「あいつ、これから先・・・・・・わしが、もう、この世にいなくなったとき、どんな生きざまをして行くことになるのか・・・・・・」
『剣術つかい』の成れの果てを見て、いつになく落ち込む小兵衛でありました。
たとえ一流と言われても、「それしかできない」人間は・・・・・・脆い。





三冬の縁談

 三冬は、茄子の角切に、新牛蒡のささがきを入れた熱い味噌汁で、飯を三杯も食べてしまい、食べ終わって、さすがに大治郎の視線を外し、
「根岸から、ここまでまいりますと、お腹も空きます」
 と、いったものだ。
三冬は「食べ盛り剣士」の称号を手に入れた!
説明:「その胃ノ腑、底なし。」



「大治郎さま・・・・・・」
 三冬が、よびかけた。
 以前は「大治郎どの」といっていたのに、このごろは〔さま〕という。いささか、こそばゆい。
( ・∀・)ニヤニヤ


そんな三冬に、またしても縁談が。
「それは、め、で、たい・・・・・・」
「父も、このたびは真剣でございます」
「なる、ほど・・・・・・」
大治郎www
動揺し過ぎワロタw

ま、どうせ生半可な腕じゃ三冬の相手にはならないし・・・・・・
と思いきや、今度の相手・大久保平蔵は大治郎の知った男で、大治郎の見立てでは、
(勝てぬ・・・・・・あの男には、到底、三冬どのは勝てぬ)
(勝てぬ・・・・・・大久保には勝てぬ・・・・・・)
( <〇>_<〇>)カテヌ・・・・・・


動揺した大治郎は小兵衛のところへ。
「三冬どのが負けて、いやいやながら大久保の妻となることを、お前はよろこばぬ。そうなのだな?」
「いえ、それは・・・・・・」
「だまれ!!」
 小兵衛が活と両目を見ひらき、すばらしい一喝を大治郎へあびせた。
【悲報】大治郎、ヘナヘナ


(はて、今度ばかりは困ったわえ・・・・・・)
 さすがの小兵衛も、ためいきをついている。
問題の大久保某は、剣の腕は立つものの非常に傲慢な男。
大治郎の話を聞いて小兵衛も三冬のことが心配になるも、さてどうしたものか。


(それにしても、だ。三冬さんのほうは大治郎を何とおもうているのか・・・・・・?)
 であった。
 剣を通じて親しくしているようだが、もともと三冬は、
(わしのことを好いていたのじゃし・・・・・・)
 おもわず、にやりとなった。
ジジィwww
ホント調子乗んな!w


三冬の父・田沼意次なら、小兵衛が事情を話せば縁談を取り止める可能性もなくはない。
でもそういう『告げ口』は小兵衛の趣味に合わないところ。

『どうしようもない』と思いつつも、小兵衛は大久保某をその目で確認。
(なるほど。これは到底、三冬どのの手には負えまい)
 小兵衛はあらためて、そうおもった。
むー。
小兵衛までそう見るなら、もう三冬の嫁入りは確定じゃないっスか。
そっかー・・・・・・はぁー・・・・・・

 ところが、である。
この話の教訓
「大賢は市井に遁す」
「傲慢が綻びを生むというのか」





たのまれ男

「小針さん。私の声を、おぼえていないか?」
「な、何ですと?」
「秋山大治郎だ」
安定の「助けた相手が昔の知り合い」パターン。

大治郎の友人・小針又三郎はわりとどうでもいい。
この話で注目したいのは、大名家の下目付・杉山米次郎。
 杉山は当年四十二歳。人柄もしっかりしてい、柳川藩の下目付をつとめていた。この役目は上下藩士の監察に任じている大目付の手足となってはたらくわけで、平素は藩内の勤怠邪正を調査し、これを大目付へ密告する。
『平素は物しずかな』この男、いざとなれば・・・・・・

(なるほど・・・・・・大名家の下目付とは、いざとなると、こうしたものか・・・・・・)
 何やら、のみこめたおもいがしたのである。
大治郎が驚くほどの仕事ぶり。
締めるところは締めていかないとねー。

(緊急時の自分の判断が間違いなら)『腹を切ればすむことでございます』と
『淡々という』のが杉山米次郎。
 それだけに、かねてから杉山が、役職の責任を、
「いのちがけで・・・・・・」
 負っている覚悟のほどが、大治郎にはひしひしと感じられたのである。
覚悟が無いからッ!
杉山さんがいりゃあなぁ・・・・・・。



「そういえば佐々木三冬・・・・・・いや、お前の恋女の始末を、これから、どうつけるつもりかよ?」
「あ・・・・・・父上。小針又三郎が、遠くで手を振っております」
( ・∀・)ニヤニヤ



ビリビリからニヤニヤまで盛りだくさん。
以上、『シリーズ第5弾』でありました。



解説
常盤新平


『白い鬼』を読んだのは、これでなんどめだろう。これを読めば、つぎの『新妻』を読みたくなる。『剣客商売』もまたそういう癖がついてしまうシリーズである。
ハゲドウッ!
・・・・・・『新妻』だって!?
急げ、ぼおこffへ!!!

剣客商売 天魔 池波正太郎 2002年10月20日 新潮社

2015-10-23 06:44:56 | 剣客商売
音もなく小兵衛の前に現れ、「秋山先生に勝つために」、八年ぶりに帰ってきたとうそぶく役者のような若侍の正体は? 次々と道場を襲い相手を一撃のもとに殺していく魔性の天才剣士と秋山父子との死闘を描く表題作。愛弟子に〔なれ合い試合〕の許しを求められ、苦衷を察して許可を与えた小兵衛が、皮肉にもその試合の審判を引き受けることになる「雷神」など全8編。シリーズ第4作。
裏表紙より。
元の本は1974年9月。



雷神

「うふ、ふふ・・・・・・まるで、二日酔いの古狸を見たような面をしていて、実に、まったく見栄えのえぬ男だがな。あの落合孫六は、わしが育てた剣術遣いの中では、まず五本の指に入るやつだよ」
小兵衛がそう評する当人が、『三年ぶり』に姿を見せました。


「実は、先生。このたび、江戸へ出てまいりましたのは・・・・・・先生に、おゆるしを得なくてはならぬ事ができまして・・・・・・」
「ほう・・・・・・何だえ?」
なれ合いの試合を、おゆるし下さいましょうか?」
ちょいとばかり金が必要で、そのために八百長試合を引き受けるらしい。
『なかなか』なんてレベルじゃなく『物堅い』男よの・・・・・・。


「いいとも、ゆるす」
 と、言下に、秋山小兵衛が、
「それで、お前の剣術が役に立つなら、それにこしたことはないさ」
殺し屋的な役立て方よりはいいやね。
話を聞いた大治郎は『嫌な顔』だけど、そのうちわかるよ(何様)。

ところが、何の因果かその『なれ合いの試合』の審判を小兵衛がやることに。
小兵衛が見届けた試合の結果は・・・・・・?
(ど、どうしたのだ?)
 小兵衛も、それを見て、あわてた。
 こんな試合を、はじめて見た。
気の毒な話やで・・・・・・。




箱根細工

 横川彦五郎は、小兵衛同様に、かつて麹町に無外流の道場を構えていた辻平右衛門直正の門人であった。したがって秋山小兵衛とは、同門の剣客なのである。
その彦五郎の体調がよろしくないと聞いた小兵衛は、
大治郎にお見舞いを頼んだのであります。


(このような気楽なこころで、箱根の山をながめるのは、はじめてだ)
 なんとなく、足取りも軽くなってきた。
今回は相手から助けを求められてってわけじゃないからね。

そんな『気楽なこころ』でいた大治郎、謎の浪人と出会うの巻。
(恐ろしい遣い手だ・・・・・・)
 それだけが、はっきりと大治郎の身内につたわってきていた。
あの大治郎が対峙しただけでそこまで・・・・・・
一体何者なのか。


「わしの一生は、まことに、ひどい。ひどすぎる」
後悔先に立たず




夫婦浪人

「そうだ。久しぶりに・・・・・・」
 今夜の小兵衛と宗哲は、酒をのむ間も惜しみ、碁に熱中していたこともあって、それが帰途についたいま、なんとなく物足りない。そこで、あの〔鬼熊酒屋〕のことをおもい出したのであった。
フラリと立ち寄った鬼熊酒屋から物語は始まるのです。


「いいかげんにしてくれ。お前とおれは、もう十五年もいっしょにくっついているのだ。もう、飽き飽きした。たくさんだ」
「ひどい。あまりに、ひどい・・・・・・」
おやおや、どうやら破局を迎えようとしている客がいるようですな・・・・・・


 こう書いてみると、どうしてもこれは、別ればなしでっめている男女の会話に思える。
 ところが、そうではないのだ。
┌(┌ ^o^)┐


『老人の好奇心』を『もてあます』小兵衛、『ひどいの浪人』にちょっかい。
「や・・・・・・ご老人の割には、よう、肉がしまっておられますな。もっと、痩せておられるのか、と、おもうていましたが・・・・・・あ・・・・・・この辺りなど、こりこりした肉置きで・・・・・・」
ロックオン!
・・・・・・小兵衛は1回くらい痛い目を見た方がいいんじゃないっスかね?


 手紙の中に、一両小判が三枚入っていた。
「これは、いかぬ」
 小兵衛は、あわてて隠宅を飛び出した。
あーららー・・・・・・な話。




天魔

「もし・・・・・・もし、秋山先生。私でございます。笹目千代太郎でございます」
昼寝中の小兵衛の前に現れたのは、『役者のような』美男子の若侍・千代太郎。
会うのは『八年ぶり』だとかなんとか。

この近辺の剣術道場に挑むことを伝え、千代太郎は立ち去る。
「とんでもない奴が、舞いもどって来たものじゃ」
千代太郎は、小兵衛の友人の息子。
それだけなら懐かしい間柄のはずが・・・・・・


「あいつが行くところ、血を見ずにはおさまらぬのじゃ。それも無益の血がながれる。武術の試合をして、負けた者が死んだとて、こりゃもう、罪にはならぬ。ゆえに、千代太郎の好むままに血がながれるのじゃよ。わしもな、昨日、あいつが来たとき、ひとおもいに斬って捨てようか、とも考えた。しかし、それも、な。あいつの父親とは、むかし、しごく仲のよい友だちだったこともあるし・・・・・・それに、大治郎。正直に申して、わしが果たして、千代太郎に勝てるか、どうか・・・・・・」
『人間じゃあない』『中身は怪物』ときて『勝てるか、どうか』だって!?

8年前・・・・・・いやそれ以前から、
千代太郎はその魔性の剣を振るって血をながし続けておりました。
「秋山先生。せがれは魔性の生きものでござる。生かしておいては世のためになりませぬ。た、たのみ申す。先生、千代太郎を討って下され」
そう言い残して亡くなった、小兵衛の友人であり千代太郎の父である庄平。
小兵衛はその言葉を胸に千代太郎を叩きのめしたものの、
友人の息子にはトドメを刺すことができず、結果取り逃がしてしまったのです。

九万之助の道場で昔と変わらぬ性を見せた千代太郎は、
いよいよ小兵衛をご指名。

小兵衛が遺言のように『わしが殺られたら』なんて言い出したところで・・・・・・
「闘ってみたいと存じます。生死は別のことにして、これは修業中の私が、ぜひとも為すべきことではないでしょうか」
大治郎、イケメン!

かつてない強敵に、大治郎はどう立ち向かうのか!?
続きは買って読んでね!




約束金二十両

 目ざめているときは、おもっても見たことがない自分を、三冬は夢の中に見出すのである。
kwsk。


「これでもか、これでもか・・・・・・」
( ・∀・)ニヤニヤ


 ま、それはさておいて・・・・・・。
さておかないでよ!
大事なのはそっからでしょうがまったく!まったくなー!



「これも太さん、剣術の極意というものじゃないかな」
太さんはうっかりすぎるよw




他に『鰻坊主』『突発』『老僧狂乱』の3編を収録・・・・・・
だけど時間切れ\(^o^)/
爆破ポイントは減少傾向、かな!

剣客商売 陽炎の男 池波正太郎 1986年9月15日 新潮社

2015-09-22 06:56:04 | 剣客商売
若衆髷をときほぐし、裸身を湯槽に沈めた佐々木三冬に、突然襲いかかる無頼の浪人たち。しかし、全裸の若い女は悲鳴もあげず、迎え撃つかたちで飛びかかっていった。隠された三百両をめぐる事件のさなか、男装の武芸者・三冬に芽ばえた秋山大治郎へのほのかな思いを描く表題作。香具師の元締のひとり娘と旗本の跡取りとの仲を小兵衛がとりもつ「嘘の皮」など全7編。シリーズ第3作。
ねんがんの 3作目をてにいれたぞ!
そう かんけいないね
殺してでも うばいとる
ゆずってくれ たのむ!!

元の本は1973年12月。
ボムをうまくつかうんだ!



東海道・見付宿

「おはるさん、いや母上・・・・・・」
「母上は、いやですったらよう」
「だが母上は母上だ。父上と祝言をした人ゆえ」
 このごろは大治郎も、これほどの冗談をいうようになってきたのである。
なおエロい展開は一切無い模様。
ま、おはるは大治郎の好みじゃないやな。


 手紙の差出人の名には大治郎、たしかにおぼえがある。
 だが、たどたどしい筆跡は、その人のものではなかった。
剣術修行をしていた頃に知り合った剣士・浅田忠蔵から送られた助けを求める手紙。
飛脚を使わずに届けられ、しかも筆跡は当人のものではないとくれば、
これはもう『ただごとではない』。


(あのような人の危難を、見逃すことはできぬ)
 そのおもいに、大治郎は胸の内が燃えてくるのを感じている。
きゃー大治郎イケメーン!

『風を切って』の『力走』で現地に到着した大治郎を待ち受けていたのは、
やはり『(むずかしい・・・・・・)』事態。
ですが・・・・・・
 こういうところは、なかなかどうして、秋山大治郎の仕様も、
「堂に入ってきた・・・・・・」
 ようである。
様々な事件を乗り越えてきただけはあるのです。

大治郎gj!




赤い富士

 菱栄〔不二桜〕の亭主・与兵衛から、その絵を見せられたとき、
「ふうむ・・・・・・」
 秋山小兵衛の老軀へ、得体の知れぬ戦慄が疾った。
『なんともいえぬ』絵と出会った小兵衛。
ゆずってくれ たのむ!!

「この絵は、私も気に入っておりますので・・・・・・」
「そりゃ、ま、そうだろうが・・・・・・」
「それに、私の店の名にちなんだ絵でございますし、とてもとても、手放すものではございません」
殺してでも うばいとる


小兵衛が諦めきれずにいると、絵の持ち主・与兵衛にトラブル発生。
こういうのを渡りに船といいます

「めずらしい絵でございますね」
ちゃっかりしとるで。




陽炎の男

(このごろ、私は、どうかしている・・・・・・)
 と、おもい、おもわず顔を赤らめることがある。
 そうしたとき、両目を閉じた佐々木三冬の脳裡に浮ぶのは、あれほど慕いつづけてきた秋山小兵衛老人のそれではない。
 ここが、われながら不可解なのである。
次元を越えて思われるのも悪くないですなってお前じゃねーよ

そんな三冬のお風呂タイムに闖入者が!
「あっ・・・・・・」
 と、叫んだのは、男どものほうである。
絶対に許さんぞ虫けらども!!!!!!

その場は追い払ったものの、ただならぬ事態に三冬は小兵衛に救援要請。
しかし三冬の下に現れたのは・・・・・・
 小兵衛ではなく、大治郎が駆けつけたことに、三冬はいささか不満であった。
小兵衛が大治郎に丸投げしたんだから仕方ないヨ。


「それで、駆けつけてまいったのですよ。夕餉を食べずに来たものだから、腹が空いています」
 などと大治郎も、このごろは、こんな口をきくようになっている。
図々しいところも似て来たなこれ。


「相変わらず、いうことが堅いなあ」
「いけませぬか?」
「いいとも、わしだって、お前の年頃には剣術ひとすじ。酒も女も眼中になかったよ」
はい、


 いま、三冬の脳裡に浮ぶ男の顔かたちは、もはや漠然としたものではなくなってきている。
ふーむ・・・・・・
リモコンボムが必要だったか。
いや、いっそ今爆破しておくべきかな?




嘘の皮

 小兵衛は、あきれて舌打ちをした。
「どうしたのだ、これ・・・・・・」
チンピラにボコられていた若い侍・伊織を助けた小兵衛。
事情は実にくだらない・・・・・・
くだらないけど、小兵衛が『むずかしい』『厄介な相手』と言い切るほどの事態。

「これ伊織」
 と、路上に立ちどまった秋山小兵衛の顔色が一変した。小さくて細い両目が突如として、二倍にも三倍にも大きく見ひらかれ、炯々たる光を放ち、伊織の瞳孔へ飛び込んで来るかのようであった。
こんなに厳しく叱るのも珍しい。
でも仕方ないね、東京湾に沈められる系の問題だからね。


 実にどうも、端倪すべからざる父の姿を目のあたりに見て、秋山大治郎は、つぎの言葉も出ない。
大治郎成長したなーと思わせる話が続いたところでこれ。
成長したのは間違いないけど、まだまだ小兵衛のレベルには到達していない。




兎と熊

「これは、よほどにお苦しみのことらしい。宗哲先生が、さほどまでにお困りのことなれば、一大事ということになりましょうな」
 小兵衛がそういったとたんに、小川宗哲が屹と顔をあげて、
「さようさ。まさに、一大事なのじゃよ、小兵衛さん。こうなれば・・・・・・ええもう、きいてもらわねば仕方がない」
小兵衛と仲良しのお医者先生・小川宗哲の『愛弟子』、村岡道歩。
彼は娘を攫われ、毒薬を用意するよう脅されていたのデス!

そんな外道な話、秋山父子が放っておくはずがありません。
 今夜のように屈託があるときでも、六十をこえた秋山小兵衛が、そのおはるの女体に抗しきれない。
「仕方のないやつじゃ」
本当に『仕方ない』のは誰だって話だよ!


 だが、それは三十年も後のことだ。
超長期連載予告
・・・・・・未完だったのかぁ。
こういう「終わりのないのが『終わり』」は残念だ。




婚礼の夜

「それがな、今日は奴め、六郷屋敷を出てから浅草の橋場の先の、汚ねえ剣術の道場を訪ねて行ったよ」
 と、一人がいったのを聞いて、徳次郎は緊張した。
 橋場の、そのあたりの汚ない道場といえば、ほかならぬ秋山大治郎のそれで、ほかには剣術の道場なぞ無いといてよい。
小兵衛の弟子である御用聞き・弥七の『下っ引』(密偵)徳次郎が怪しい連中を目撃。
・・・・・・『汚ない』を強調しないであげて!
大治郎の懐はほぼ0よ!

どうやら連中のターゲットは、大治郎の友人・浅岡鉄之助(35歳)の模様。
大治郎ほどではないにしろ『可成りの遣い手』であり、
『稽古がうまく、人柄が明朗で、いささかの邪気もない』ため若い侍に人気の好人物。
しかも鉄之助はもうすぐ結婚するってな訳で、これは見過ごせぬ!
「これは、お前の友だちのことだ」
「はい」
「わしの出る幕はないようじゃな」
 突きはなした。
うぬ・・・・・・確かに今回は小兵衛には直接関係無い。

だったら大治郎が1人でもやってやんよぉ!
 なかなかどうして、このごろの大治郎は父・小兵衛に似て、芝居気も大分に出てきたようだ。もっとも、これは大治郎自身が意識してのことではない。自然に、そうなりつつあるのは、やはり父子の血というものか・・・・・・。
つまり・・・・・・
大治郎モ爆破シナクチャアァ・・・・・・



「おのれ、何者だ?」
「浅岡鉄之助の親しき友、秋山大治郎」
大治郎、マジイケメン。




深川十万坪

 この日の外出で、小兵衛は、
「かつて見たこともない・・・・・・」
 女を、見ることになるのだが、小船に乗りこみ、のんびりと煙草を吸いながら、大川の川面へ出て行ったときには、そうした事件が、行く手に待ちうけていようとは、むろん、おもってもみなかった。
あの小兵衛も驚く女とは!?



というところで時間切れだーい\(^o^)/
終わってないのに\(^o^)/とはこれいかになんつtt

剣客商売ワールドが着々と広がりつつあると感じられる。
「昔旅に出ていた」って便利な設定だなぁとも思うけど。

剣客商売 辻斬り 池波正太郎 1985年3月25日 新潮社

2015-07-09 06:30:47 | 剣客商売
冷え冷えとした闇の幕が裂け、鋭い太刀風が秋山小兵衛に襲いかかる。正体は何者か? 小兵衛・大治郎が非道に挑む表題作。江戸に出たまま帰らぬ息子を探しにきた信州の老剣客へ温かい手をさしのべる秋山父子――「老虎」。暴漢にさらわれた老舗の娘を助ける男装の武芸者・佐々木三冬――「三冬の乳房」ほか「鬼熊酒屋」「悪い虫」「妖怪・小雨防」「不二楼・蘭の間」。シリーズ第二作。
裏表紙より。
ご覧の通り2作目です。
元の本は1973年5月。



鬼熊酒屋


題名の『鬼熊』とは居酒屋の名前。
亭主の熊五郎がどんな人物なのかと言いますと・・・
「てめえらのようなやくざどもに、安い酒をのませてやっているありがたさを忘れ、つまらねえことをくだくだならべやがると、その鼻の穴へ出刃包丁を突っこみ、鼻糞ぐるみ、その形のよくねえ鼻っ柱をえぐりとってやるからそうおもえ!!」
こういうジジイ。 

そんなジジイに爆発ジジイがちょいとお節介する話。
「わしも、もう六十になったのだもの。若いお前には、おもいおよばぬ屈託があろうというものさ」
「くったく・・・・・・?」
「老人だけがわかるこころもちなのだよ」
「友情」というと安っぽいというか・・・なんか合わない。
『老人だけがわかるこころもち』、ね。



辻斬り

(む、今度は・・・・・・)
 直感したとたんに、突如・・・・・・。
 闇の幕が裂け、するどい太刀風と大兵の男が、矮躯の小兵衛を押し潰さんばかりに襲いかかった。
夜道で襲われるも、逆に襲撃者をあっさりぶちのめした小兵衛。
「またつまらぬものを・・・」で話は終わらず、逃げた襲撃者をつけて火元を探るの巻。

「父上も物好きな・・・・・・」
「いかにも、な。六十になったいま、若い女房にかしずかれて、のんびりと日を送る・・・・・・じゃが、男というやつ、それだけでもすまぬものじゃ。退屈でなあ、女も・・・・・・」
まったく!これだからジジイは!
1回おはるにブッ飛ばされればいい。

そして辻斬り騒動の真相を知った小兵衛、いよいよ命を狙われる。
(ともあれ、いよいよ、ゆだんのならぬことになったわい)
 久しぶりで、血がおどってくる。
どこまでもいつまでも、「剣を捨てる」ことはできそうもない。
だからこそおはるや三冬が夢中になるんだろうけど。

秋山父子の活躍にスカッとする話。下衆共ざまぁwww



老虎

 真崎稲荷裏の、大治郎の道場には依然として入門を乞う者があらわれなかった。
 いや一人、いる。
 女武芸者・佐々木三冬が大治郎へあずけた飯田粂太郎少年は、このごろ、道場へ泊りこみのかたちになってしまったようだ。
     ∧_∧
 /\( ・∀・)/ヽ
( ● と   つ  ● )
 \/⊂、   ノ \ノ
     し’

【祝】大治郎、ようやくまともな門人を獲得


 この日、このとき、秋山大治郎が父の家を訪れなかったら、彼は久しく会わぬなつかしい人に、おもいがけなく出合うこともなかったろうし、ひいては、その人にかかわる事件に巻きこまれることもなかったろう。
 人びとの、日常における何気ない行動にも、その人びとの人生にぬきさしならぬ意味がふくまれ、波瀾もひそんでいるのだ。
もしも・・・もしも・・・
すぐ悪いケースも考えるのがボクの悪い癖。

大治郎が見つけたのは、諸国をまわって修行していたとき世話になった老剣客・山本孫介。
風体は『田舎剣客』でも、『実戦さながら』の流儀・四天流を修めた剣の腕は一流。
江戸に出かけて帰ってこない息子を探しにきたらしい。
秋山父子が息子探しに力を貸すも、事の真相はやりきれないものがある。


 いつであったか、小兵衛がこんなことをいったことがある。
「わしはな、大治郎。鏡のようなものじゃよ。相手の映りぐあいによって、どのようにも変る。黒い奴には黒、白いのには白。相手しだいのことだ。これも欲が消えて、年をとったからだろうよ。だから相手は、このわしを見て、おのれの姿を悟るがよいのさ」
・・・小馬鹿にした目が見える/(^o^)\


「先生・・・・・・よう、先生・・・・・・」
 灯を消してからも、おはるが、なやましげにささやいてくる。
「なんだよ?」
「明日も、また、客を泊めるの?」
「わからぬ、まだ・・・・・・」
「もう、いや」
「なぜじゃ?」
「だって、もう・・・・・・」
「だって、もう?」
JIJII、BAKUHATUSIRO


「四天流、山本孫介!!」
山本孫介の剣はガチ。




悪い虫

 父の家を辞し、真崎稲荷裏の我が家へ帰って間もなく、客が一人、あらわれた。
 大治郎へ入門申しこみの男であった。
男は辻売りの鰻屋・又六。

 ぺこりとあたまを下げた又六が、緊張のためか、この寒いのにびっしょり汗をかいて、
「剣術を、教えてくんなさるか?」
「教えぬこともないが、なんのために剣術をおぼえたいのかね?」
「む・・・・・・」
 又六の、ふとくてまるい鼻のあたまが、汗に光っていた。
「わ、悪い奴にばかにされたくねえから・・・・・・」
やっとこ貯めた5両(現代の50万相当)で、どうしても強くなりたいと大治郎に頼み込む。
「剣術の修行は10年でもまだ足りない」と話す大治郎だが・・・

「せめて十日のうちに、強くなりたい」
 と、いう。
 それ以上、商売を休んだら、どうにも食べて行けない。
いくらなんでも無茶言うな


 大治郎は、
(ばかばかしい)
 と、おもいはしたが、又六の異常な決意を感じて、無下にもことわれなかった。
「たのンます、たのンます。お前さまがききとどけてくれねえのなら、おれ、死んじめえてえ」
 又六は、そうもいった。口先だけのこととはおもえぬ。
又六の扱いに困った大治郎は、小兵衛に相談。

「やってみることさ。むりにもな。だって、そうしてもらいたいと、又六が申しているのじゃろ?」
「それはまあ、そうですが・・・・・・」
「わしが、手つだってやってもよい。うふ、ふふ・・・・・・」
逃げてー。又六、逃げてー。


 こういう天気の日暮れには、よく鰻が売れるのである。
君もたった10日で強くなれる!
秋山式トレーニング法はここをクr



三冬の乳房
ガタッ


(いかに、わたしが秋山先生を、お慕いしたとて・・・・・・どうにもならぬことじゃ)
 なればこそ、小兵衛に会うのが辛い。
 三冬は胸ひとつに秘めた恋の苦しさに堪えながら、わざと、小兵衛を訪ねようとしないのであった。
三冬、乙女すぎる・・・
しかし小兵衛がおはる(三冬と同い年)とイチャついてる件を知ったらどう動くか。
ドン引き・・・?
いや自分にもチャンスがあると見るか?

ともかく恋する乙女な三冬が誘拐犯をぶちのめすところからスタート。


「先生。また今夜もいないの?」
「うむ」
「せっかく、先生の好きな納豆汁を、こしらえようとおもったのによ」
 さも不満げに頬をふくらませるおはるの、このごろはめっきりと肉置きの充ちてきた腰を下から抱き寄せた小兵衛が、
「そりゃ、お前。ぜひとも食べさせてもらおうよ。それから出て行けばよいのじゃ」
「それだけじゃあ、いやですよう」
「なにを、どうしろというのじゃ?」
「だって・・・・・・」
「だって?」
JIJII explode.


 それは、鶯の声ものどかな、春の昼下りのことであったという。
最後の最後まで題名の件はすっかり忘れていたよ・・・。
緊迫の展開(爆発は含まない)が続き、さらに真相は意外なものでありました。



妖怪・小雨坊

「ふうむ。わしも、こんなに妖怪どもがいたとは知らなんだわえ」
 小兵衛は、おはるにも見せ、
「夜中に出るぞ」
 などと、おどして、
「いや、いやいや・・・・・・」
 おはるにかじりつかれ、よろこんでいたものである。
ジ爆し

小兵衛の周囲に突如あらわれた『小雨坊」の正体とは?

「弥七。すぐさま、やってのけよう。用意をたのむ。なれど、かまえて手出しは無用。もし、わしが化けものに斬られたら、お前たちは逃げよ」
これまた緊迫の展開。
いやあ、小雨坊は強敵でしたね・・・真面目な話でね。



不二桜・蘭の間

「どうも近ごろは、万事が贅沢になり、金また金の世の中になってしもうたが、そのくせ、人の暮しに余裕が無うなったようじゃ」
小兵衛と仲良しの老医・小川宗哲の言。
江戸の時代描写というより、著者の実感なんじゃ・・・
ま、200年前にしろ40年前にしろ、異常ありませんということか。


(こりゃいかぬ。とんだ悪い癖がついてしまったわえ。これも、横川鉄五郎が小判を数えてたのしむのと、同じことなのではあるまいか・・・・・・)
 老顔をしかめ、白髪頭を掻いたのである。
「他人の話を盗み聞き(してさらにお節介)するのはワシの悪い癖」
本当に悪い癖だよ!



3巻目の「陽炎の男」が近所のブックオフに無かった。
仕方ないから、次の休みはちょっと遠くのブックオフに行くとする。
ほ、ほら!外出すると『波瀾』に出合うかもしれないしネ!

剣客商売 池波正太郎 1985年3月25日 新潮社

2015-07-08 05:10:16 | 剣客商売
勝ち残り生き残るたびに、人の恨みを背負わねばならぬ。それが剣客の宿命なのだ――剣術ひとすじに生きる白髪頭の粋な小男・秋山小兵衛と浅黒く巌のように逞しい息子・大治郎の名コンビが、剣に命を賭けて、江戸の悪事を叩き斬る――田沼意次の権勢はなやかなりし江戸中期を舞台に剣客父子の縦横の活躍を描く、吉川英治文学賞受賞の好評シリーズ第一作。全7編収録。
裏表紙より。
漫画で何回か読んだことあるけど原作はどんな感じなのかしらん。
(※7月9日追記、元の本は1973年1月)



女武芸者

 台所から根深汁(ねぎの味噌汁)のにおいがただよってきている。
 このところ朝も夕も、根深汁に大根の漬物だけで食事をしながら、彼は暮らしていた。
 若者の名を、秋山大治郎という。
「これからはな、お前ひとりで。何も彼もやってみることだ。おれは、もう知らぬよ」
 こういって父の秋山小兵衛が、ここへ十五坪の道場を建ててくれた。廊下をへだてて六畳と三畳ニ間きりの住居があっても、道具類はほとんどない。食事の仕度は、近所の百姓の女房がしてくれる。
主役の1人・大治郎登場。現在24歳ながら、剣術道場をかまえる一国一城の主である・・・
なお道場を建てて半年たつも門人はいない模様。

今は明らかに貧乏暮らしのこの大治郎、
剣術の方は老中・田沼意次が開いた剣術大会でちょっとした活躍をするほどの腕前。
そんな大治郎の下に、怪しい侍が現れるところから物語は始まるのです・・・

「人ひとり、その両腕を叩き折っていただきたい。切り落とすのではない。両腕の骨を折っていただきたい」
「斬ってくれ」なら分かるけど、なんだそりゃ。
よくわからない話だけど、報酬は50両。『庶民が、らくらくと五年を暮すことのできる大金』。
ふーむ、これは・・・とにかくおいしい話ですナ。


「どこのだれの腕を、いかな事情にて叩き折れと、申されますか?」
「名は・・・・・・名は申せませぬ。御承知下さるならば、われらが手引きいたす」
こまけぇこたぁいいんだよ!!


 秋山大治郎は、執拗にねばりぬく大垣を、ついに、
「おことわりいたす」
 追い返してしまった。
ああっ、勿体ない・・・
でもここまで(6ページ)で、大治郎がどんな男かはなんとなくわかる。


『怪しげな依頼』を断った大治郎、依頼される原因になったであろう剣術大会への出場を根回ししてくれた父・小兵衛に、いちおうその件を報告す。
さて、小兵衛はどんな人物なのかなー?

 つい一月ほど前に、めずらしく父が道場にあらわれ、
「下女のおはる、な・・・・・・」
「はあ?」
あれに手をつけてしまった。いわぬでもよいことだが、お前に内密もいかぬ。ふくんでおいておくれ」
小兵衛60歳、おはる19歳・・・・・・
ジジイ、爆発しろ

大治郎は小兵衛に依頼の件を話してすっかり忘れるも、気になった小兵衛は調査を開始。
狙われていたのは『田沼意次・妾腹のむすめ』と突き止める。

 むすめの名は、三冬といって十九歳。小兵衛寵愛のおはると同年だそうだが、この三冬、自分を妻に迎えるべき人が自分より、
「強いお人でなくては、いや」
 こういったそうだ。
この三冬、女ながらに通っている剣術道場で『四天王』と称されるほど。
どうやらその辺に「両腕の骨」を狙われた理由があると読んだ小兵衛。
息子の大治郎は依頼を断ったんだから小兵衛には全く関係無いんだけど・・・

「退屈だったからさ」
三冬を襲った連中をあっさりぶちのめして。
ま、年寄りのお節介ってやつですか。

後日、小兵衛に助けられた礼を言いに来た三冬。
「男は、きらいかね?」
 たたみこむような小兵衛の問いに、三冬が「きらい」とこたえ、すぐさま「秋山先生だけは、別」と、いった。口調が急に甘やかなものに変っので、小兵衛がおどろいて、三冬を見た。
 小麦色の三冬の男装ゆえに、妙に少年じみた顔が燃えるような血の色をのぼせているではないか。
小兵衛60歳、おおはる19歳、三冬19歳・・・・・・
ジジイ、爆発しろ

一方息子の大治郎は、小兵衛がそんな事件に首を突っ込んだことも知らず、道場で独り瞑想にふけるのでありましたとさ。おしまい。



剣の制約

「うまい」
 と、秋山大治郎がつぶやいた。
 ひとりごと、なのである。
独りで読書or瞑想の暮らしを続けて『〔ひとりごと〕など、もらしたことのない』大治郎。
一体何があったというのだ・・・!?

 あまりにも長い間、根深汁ばかりの毎日だっただけに、さすがの秋山大治郎も、田螺汁に嘆声を発してしまったことになる。
大治郎25歳。いまだ道場に入門者無し(正確には1人いたけど3日で辞めた)。


そんな大治郎の下に今回も来訪者が。
今度は怪しい侍じゃなくて、『秋山小兵衛の〔弟弟子〕』である嶋岡礼蔵。
大治郎が、小兵衛の師匠の下で剣術修行をしていた時の『〔第二の師〕』とも言える人物。

「大治郎。こたびは、おぬしにわしの、死に水をとってもらわねばならぬ」
なにやらおだやかではない話。


「真剣の勝負をいたす」
「なんと・・・・・・?」
「約定によって、な」
hmhm・・・
今まで2回戦い、1回目は勝って2回目は引き分け。
今回はおそらくいよいよ・・・ということらしい。

「ようきけ、大治郎。好むと好まざるにかかわらず、勝負の決着をつけねばならぬのが剣士の宿命というものだ。おぬしが父の小兵衛どのは、そこを悟って、老の坂へかかったとたんに、ひらりと身を転じたそうな・・・・・・ふ、ふふ・・・・・・小兵衛どのとて、ずいぶんと手きびしく打ち負かした相手が何人もいる。負けたものは、勝つまで、挑みかかってくる。わかるか、な?」
・・・宿命なー。

そしてこの一件で、大治郎もまた『剣士の宿命』を背負うことになる。
「剣客というものは、好むと好まざるとにかかわらず、勝ち残り生き残るたびに、人のうらみを背負わねばならぬ」
うーむ・・・となる話・・・
本当に残念な表現力だな!



芸者転身

(それにしても、この年齢になって・・・・・・)
 孫のような女ふたりに、もてはやされようとは小兵衛、おもってもみなかったことだ。
三冬の来訪は止まず、おはるの嫉妬も止まず・・・
ジジイ、爆発しろ


 もっとも弥七のように、親の代からの御用聞きで、
「おれは、やましいことを何一つ、してはいねえ」
 と、胸を張れるような男は、ほとんど女房が別の商売をやったりして、暮しをささえているわけであった。
小兵衛がちょいちょい手を借りる御用聞き、弥七。
警察とか政治家とか、暮しの心配が無い程度には懐に入らないとどうにもならない訳だね・・・
「老後が心配で」何かやらかされても困るし。
とはいえ、MottoMottoが人間のheartでありsoulでもあるという。
うーん。



井関道場・四天王

 女だてらに剣術のほうは相当なものだが、そこは「世間知らず」の、しかも男女のことについてはまったく少女のごとき三冬であるから、そうしたおはるの態度を見ても、彼女が小兵衛とただならぬ仲であることなど、考えてもみないのである。
[速報]三冬は空気読めない子

三冬が所属する剣術道場の跡目争いが今回の主題。

腕はもう一つだけど門人に人気はある後藤九兵衛。
最古参で1番腕が立つけど人望はほとんどない渋谷寅三郎。
そしてこれも三冬以上に腕が立ち旗本の御坊ちゃまでもある小沢主計。
これに三冬を加えて『四天王』。

三冬にその気は全く無いものの、他の3人に飛び抜けた者がなく、三冬の父・田沼意次の政治的な立場も絡んでややこしい事態に。
道場の後援者として困った田沼意次が、以前から三冬に聞かされていた小兵衛に相談してみようという結論に至り、結果巻き込まれる小兵衛でありましたとさ。

「恐ろしいのう。天罰は、よ」
「へ、へい・・・・・・まことに恐ろしゅうございます」
 弥七は、うつむいたまま、顔をあげられなかった。
黒い、このジジイ、黒いでぇ・・・。
普段ひょうひょうとしている小兵衛の、剣客としてのプライドが感じられる話。



雨の鈴鹿川

 明日は雨でも出発するつもりの秋山大治郎である。雨なら雨、雪なら雪で、難儀の旅をすることは、
(自分の心身を鍛えることになる)
 と信じている大治郎だから、いささかも苦にならぬ。
なんというイケメン・・・!
(寒いと愚痴る周りに対して)「心頭滅却すれば火もまた涼し!」
「涼しくなってどうする」
なんてやりとりを思い出してごめんなさい

そんなイケメン大治郎の安眠を妨害するのは隣の部屋の客。
 大治郎は、夜具をあたまからかぶり、舌うちをした。二十五歳の今日まで、女体を知らぬ大治郎であったが、これは我からのぞんでしていることなのである。亡き恩師も、また父も、
「剣術をもって身をたてるつもりならば、若いうちは女に気を散らしてはならぬ」
 と、いっていたし、また若い自分の肉体に充満するエネルギーは、きびしい剣の修行へ向けて発散され、そこに別のかたちで蓄積されてゆくことを大治郎はたしかめている。若さは、いかなることをも可能にする。禁欲をもだ。
 そして、一定の目的へ振り向けた若い健康な男の禁欲は、かならず収穫をもたらすものなのである。
ヤタースノードリフト倒したよー^^
ちょっ、ちょっと休憩しただけだし!

その後、とある敵討ち騒動に巻き込まれる大治郎でありました。

「さ、それが女という生きものよ。男には、とうてい出来ぬことさ」
「恐ろしゅうございますなぁ」
「そうさ。剣術よりも、むずかしいぞ」
事の顛末を小兵衛に報告して。
こんな迷惑な女は見たことが無い

「それよりも、な・・・・・・」
「はあ?」
「いま、台所で、酒の仕度をしているおはるのことなのじゃが・・・・・・実は、お前のゆるしをうけなくては・・・・・・」
「と、申されますと?」
ジジイ、爆発しろ



まゆ墨の金ちゃん

「そりゃ、まことに危ないのか?」
「秋山大治郎殿の腕前は、私、いささかも存じませんが・・・・・・はい、はい。ちょいとあぶない」
大治郎に「剣士の宿命」が襲いかかろうとしていたのです・・・。


「ふ、ふふ・・・・・・」
 小兵衛が、さびしげに笑い、
「わが手からはなれ、わが手よりはなした一人前の息子の身を按ずるなどとは・・・・・・まさに、笑止のきわみだ。この秋山小兵衛ともあろうものが、さ」
ジジイ・・・
大治郎に刺客が放たれたことを知人から聞かされても、その場では「おのれで片づけるべき」「死んだとしても仕方ない」と言っていたのに。
その言葉通りに放置しておはるとイチャイチャ過ごすかと思いきや、流石に心配なようで。

しかし刺客が襲撃する日時まで知りながら、結局本人には伝えない小兵衛。
(大治郎は、おのれ一人のちからにて、切りぬけるべきである)
 この剣客としての信念から告げなかったのだとすれば、それは父としての愛から発したものなのか・・・・・・それとも、小兵衛の衒いから出た者か、老骨の依怙地からなのか・・・・・・。
どんな時も頼りになるんだけど、完璧超人ではないのが魅力なのかもしれない。

小兵衛の親心の他、「剣士の宿命」そして「(実力がある)剣士の性」が感じられる話。



御老中毒殺

「これ。二度と悪さができぬようにしてやろう」
 いうや、地面に伏せてうなり声をあげている掏摸の右の手ゆびをつかんだ。
 掏摸の悲鳴が起った。
三冬、容赦ねぇな

その三冬が『青ざめて』『あぶら汗』をうかべる事態を、やはり小兵衛が鮮やかに解決。
田沼意次の器の広さに三冬との和解の兆しも見える回・・・で終わらない。


「帰って来てから、いっしょに風呂へ入ろうかえ」
「うれしい・・・・・・」
「背中をながしてやろう、久しぶりでな」
「ううん、背中だけじゃあいやですよう」
「よしよし。みんな、みんな、洗ってやるぞ」
「あい、あい」
 縁先の植え込みに咲き盛っている松葉牡丹の花の色も、夕闇に溶けこんでしまっていた。
・・・・・・
ジジイ、爆発しろ



感想は次の言葉に尽きる。
ジジイ、爆発しろ

小兵衛と(又は「か」)大治郎があれこれやって事件解決、要は水戸黄門的な安心感。
これこそ小説は爆発だってやつです、はい。