ウクライナ侵攻の背景にあるプーチンの「ロシア・ファシズム」思想。ロシアは巨大な「カルト国家」だった橘玲の日々刻々】
「イリインの思想とはなんだろう。それをひと言でいうなら、「無垢なロシア(聖なるロシア)の復活」になる。・・・
人間が存在として悪だとしても、いかなる思想も自分自身を「絶対悪」として否定することはできない。イリインがこの矛盾から逃れるために夢想したのが、「無垢なロシア」だった。邪悪な革命政権(ソ連)を打倒しロシアが「聖性」と取り戻したとき、世界は(そして自分自身も)神聖なものとして救済されるのだ。・・・
イリインは、祖国(ロシア)とは生き物であり、「自然と精神の有機体」であり、「エデンの園にいる現在を持たない動物」だと考えた。細胞が肉体に属するかどうかを決めるのは細胞ではないのだから、ロシアという有機体に誰が属するかは個人が決めることではなかった。こうしてウクライナは、「ウクライナ人」がなにをいおうとも、ロシアという有機体の一部とされた。」
イリインの著作を読んだわけではないけれど、この記事を見る限り、イリインの思想は、霊魂不滅説の一種のようだ。
しかもそれは、「無垢なロシア」という目に見えない主体(魂:animus)を観念するものであり、”集合的霊魂不滅説”とでも言うべき思考のように見える
私見では、これは、ジェノサイドにつながりかねない、危険な思考だと思う。
この思考によれば、”永遠に無垢なロシア”という魂は、目に見えないけれど不滅の実体であり、これこそが”ロシア人”を生み出す源泉ということになるだろう。
「イリインの思想とはなんだろう。それをひと言でいうなら、「無垢なロシア(聖なるロシア)の復活」になる。・・・
人間が存在として悪だとしても、いかなる思想も自分自身を「絶対悪」として否定することはできない。イリインがこの矛盾から逃れるために夢想したのが、「無垢なロシア」だった。邪悪な革命政権(ソ連)を打倒しロシアが「聖性」と取り戻したとき、世界は(そして自分自身も)神聖なものとして救済されるのだ。・・・
イリインは、祖国(ロシア)とは生き物であり、「自然と精神の有機体」であり、「エデンの園にいる現在を持たない動物」だと考えた。細胞が肉体に属するかどうかを決めるのは細胞ではないのだから、ロシアという有機体に誰が属するかは個人が決めることではなかった。こうしてウクライナは、「ウクライナ人」がなにをいおうとも、ロシアという有機体の一部とされた。」
イリインの著作を読んだわけではないけれど、この記事を見る限り、イリインの思想は、霊魂不滅説の一種のようだ。
しかもそれは、「無垢なロシア」という目に見えない主体(魂:animus)を観念するものであり、”集合的霊魂不滅説”とでも言うべき思考のように見える
私見では、これは、ジェノサイドにつながりかねない、危険な思考だと思う。
この思考によれば、”永遠に無垢なロシア”という魂は、目に見えないけれど不滅の実体であり、これこそが”ロシア人”を生み出す源泉ということになるだろう。
なので、絶対にこれを守り通さなければならない、という発想になるだろう。
これを脅かすものは敵であるから殲滅しなければならず、そのためには大量破壊兵器の使用も辞さないことになる。
これを脅かすものは敵であるから殲滅しなければならず、そのためには大量破壊兵器の使用も辞さないことになる。
のみならず、この際、現在生きているロシア人(ロシア兵)が犠牲になることもやむを得ない。
なぜなら、”永遠に無垢なるロシア”が存続する限り、それは、新たにロシア人を生み出してくれるのだから。
ここで興味深いのは、イリインは、目に見えない実体を最重視しているように見えながら、精神的要素だけでなく「自然」の要素を重視していることである(面白いのは、同じく不可視の神を奉じるユダヤ教でも、やはり「土地」を極めて重視するところである。)。
「自然」の最たるものがテリトリーであり、例えばウクライナの領土はこれに含まれる。
・・・だが、この辺りの思考は、日本人には分かりにくい。
それは、日本の土着宗教においては、基本的に”目に見える実体”が神聖視されているからではないかと思う。
例えば、「国体」思想も、ある意味では「自然」ないし「身体:corpus」を精神的要素より上位に置いていると考えることが出来るだろう。
そうすると、ウクライナを、例えば三種の神器のうちの一つという風にみれば、プーチン大統領の行動を理解しやすいのではないかと思う。
なぜなら、”永遠に無垢なるロシア”が存続する限り、それは、新たにロシア人を生み出してくれるのだから。
ここで興味深いのは、イリインは、目に見えない実体を最重視しているように見えながら、精神的要素だけでなく「自然」の要素を重視していることである(面白いのは、同じく不可視の神を奉じるユダヤ教でも、やはり「土地」を極めて重視するところである。)。
「自然」の最たるものがテリトリーであり、例えばウクライナの領土はこれに含まれる。
・・・だが、この辺りの思考は、日本人には分かりにくい。
それは、日本の土着宗教においては、基本的に”目に見える実体”が神聖視されているからではないかと思う。
例えば、「国体」思想も、ある意味では「自然」ないし「身体:corpus」を精神的要素より上位に置いていると考えることが出来るだろう。
そうすると、ウクライナを、例えば三種の神器のうちの一つという風にみれば、プーチン大統領の行動を理解しやすいのではないかと思う。