Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

限りなく低い「愛」のハードル(2)

2024年08月08日 06時30分00秒 | Weblog
(以下ネタバレご注意!)

 舞台上には、椅子に腰かけた一人の男(宮崎秋人さん)があらわれる。
 この男がこの芝居の主人公である。
 設定は朝のニューヨークで、忙しい時間に”地球の裏側”にいる母から電話がかかってくる。
 「パウリが死んだの。すぐ帰ってくるように
 パウリというのは主人公の弟である。
 弟の訃報に接した彼はこう呟く。
 「俺たちはみな生まれる。俺たちはみな死ぬ。なんでもないことだ。わざわざ何か言うほどのことではない。
 どうやら主人公は人生を諦観した人物のようであり、また、弟との関係性も深くはないようだ。
 早速主人公は空港に向かう。
 彼はヘッドフォンを装着するが、音楽を聴くのではなく「自分の息」に耳を澄ませる。
 ここは重要なところで、彼が自我の奥深く沈潜するタイプの人間であることを示している。
 どうやら彼は、他者との関係に問題を抱えているようだ。
 飛行機に乗ると、コニーアイランド上空に来るまでに3杯のカクテルを飲んだというから、彼はアル中のようである。
 飛行機が到着したのはアムステルダムで、ここが彼の故郷である。
 彼は故郷を離れ、ニューヨークの金融機関でエリートビジネスマンとして働いているのである。
 アムステルダムに着くと、彼は突然、
 「アイザックに手紙を書かなきゃ!
と思い付くが、この時点では行動には移らない。
 その後彼は、なぜか実家に帰らず、ロイドホテルにチェックインする。
 母親は実家に来るよう勧めたのが、主人公は、
 「どうせ家に帰っても、お前の部屋に泊まるしかないだろ?
という理由で拒否する。
 この時点で、主人公の独白は弟:パウリに対する語り掛けに変わっている。
 スタート地点はよく覚えていないのだが、主人公は、亡きパウリに手紙を書いており、それを朗読する形式で芝居が進行しているのである。
 ホテルに入った彼は、再びアイザックのことを思い出し、アイザックにメールを送るが、すぐには返信は来ない。
 次に彼は、シャワーを浴びてカクテルを飲むと、
 「シャワーとカクテルのおかげで、爽やかな気分になった
と呟く(やはり『アル中認定』は正しかった)。
 このあたりまでを見る限り、彼は、「感覚を重視し、自我の最深部に潜むことを好む、静かなエピキュリアン」のように見える。
 ところが、彼は単なるエピキュリアンではなかった。
 その後、彼はホテルを出て、街中にある、彼がかつてよく通っていたゲイバーへと向かう。
 


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