久々に泣きました。
作品自体がいかにも男気臭くて、解説にもあるがどストレートなまでの冒険小説。たしかにストレートすぎるとこもあるが、自分はこのくらい直球勝負でこられるとたまりません。ラストのほうはそれくらい見事な演出。
主人公の柚木静一郎はパシフィックローズ号の船長として最後の仕事をこなしている途中、インド洋で海賊にハイジャックされる。そのハイジャック犯の目的も不確かなまま、柚木は船長の仕事をまっとうする。
その裏ではロシアで生物兵器が盗まれ、それを追うロシア政府の役人や、最愛の女性をテロで失ったアメリカ人、柚木の娘の海上保安監の夏海、パシフィックローズを追う「かいもん」の矢吹、生物兵器の生みの親のドクターらが絡み合って行く様は、話しが進むにつれ手に汗握る展開となっていく。登場人物の数は相当多くなるが、それぞれの背景や心理描写などが見事に描かれている点も素晴らしい。
特に主人公の柚木をはじめ、パシフィックローズのクルー、「かいもん」の矢吹なんかは最高にかっこいいんですよ! 最後にちょっとしか出てこないロシアの原子力潜水艦のキリエフ艦長なんか最高だったなぁ! 矢吹がキリエフに返答を要請するとこから以降、涙腺緩みっぱなし状態。
とにかく上下巻にわたるかなりの長編ですが、最高におもしろかった。個人的に好きな作家の一人だけど、彼の最高傑作と言っても過言ではないだろう。
評価:★★★★★