先日読んだ本が、とても大部で読みづらかったものだから、今回は、ちょっと読みやすいものをと思い、ヴァージニア・ハミルトンの黒人民話集を読むことにしました。
読み始めは、民話集のよくある形で、人々がこうあってほしいという世界が描かれています。弱いものが知恵を働かせて生きていけば、世の中は何とかやっていけるのだというお話です。
文章も訳者(金関寿夫)の、人が語るような訳のおかげか、まるで、ヴァージニア・ハミルトンが語っているように感じられました。
そして、挿絵(ディロン夫妻)もとても素敵で、美しい黒人の絵なのです。
そうして読んでいくうちに、少しずつお話が複雑になり、最後は、奴隷の逃亡のお話になります。
それらは、とても素敵な事件で、人々はそういうお話を語ることで、生きることの矜持を持つのです。
「人間だって空を飛べる」は、中でもとても素晴らしいお話で、奴隷だった人たちが空を飛べる人になり、「自由の地」に向かって飛んでいくというのです。
飛べなかった人たちは、飛べた人たちのお話を自分の子供たちにしてやりました。自由の身になったときに、暖炉の前で、そのお話をしたのです。彼らは、そのお話が大好きで、「自由」が大好きだったのです。
この本は、簡単に読めるなんて思ったことを恥ずかしく思い、感動に包まれて読み終わりました。
人は、自由でなければならないし、自由であれば、きっとどんなことも乗り越えられるだろうと思ったのでした。