バネの風

千葉県野田市の「学習教室BANETバネ」の授業内容や、川上犬、ギャラリー輝の事、おもしろい日常を綴ります。

静脈に響く映画

2017-02-01 12:57:27 | バネ
沈黙を観てきた。

と中学生に言うと、

サイレンス!と間髪を入れずに英語苦手君が言った。
映画のタイトルを知っていて、サイレンスと呼応したのか、それとも知っている単語だから他の子に言われる前にあわてて発したのか、その真偽は定かではない。
叫んだ後のドヤ顔からして、恐らく後者だと思う。


遠藤周作原作「沈黙」の映画化という下知識だけで映画館に突入。

予告編を見ながら待っていると、ゾワッとしてきた。
これって、もしかしてホラー?
日曜の午後なのに映画館ガラガラ。だからそう思わせたのか、何かおどろおどろしい雰囲気が漂う。
オープニングはドラキュラをイメージさせる。
ホラーだったら途中で出よう、と思う。

色のない映像に、侍が動いている場面を見届け、日本の映画だと安堵して腰をすえて観ることにした。

感想はというと、「なんかねー」としか言えない。
隠れキリシタンを弾圧するシーンがリアルで、リアルすぎて血管が痛い。
なのに「信じる心」という壮大なテーマがあるのに、わたしの心に届く前に何かに遮られた感だけが残り、「うーむ」という気持ちで映画館を後にするのだった。もう少し、人の業を掘り下げてほしかった。あとは各自考えよというスタンスでいいから、そのための余白がほしかった。
後半ですすり泣く人がいたけど、自分としてはそこに行くまでに何か蓋がされてしまった感じだった。

「で、(映画)どうだったんですか?」
と中学生が聞くから、

「動脈には響いたけど、静脈には響かなかった」
と答えると、
皆「??」状態。

よく分からない説明をスルーして話は隠れキリシタンだの、踏み絵だのと歴史話に飛んだが、先の動脈について納得いかない子が食い下がってきた。

「動脈って理科で習ったけど、どういうことですか?」
「それはね心臓から出て酸素運ぶ血管で、静脈は心臓に戻る血管ですよ」
ってさっきのサイレンスドヤ顔君がはりきって完全には正しくない説明をつける。
(おれは今そんなこと聞いているんじゃねぇ!)と心でさけんだかどうかは知らないけど、食い下がり君はドヤ顔君の説明はスルーしてしつこく聞いてくる。
「だから、どうして動脈なんですか?」

「ほら、欧米のホラーは怖いけど、日本のみたいにゾクッとこないでしょ」
というと、
「先生、この前もそんなこと言っていたよね」
って他から相の手が入る。
子ども達って、ちょっとした雑談いつまでも覚えてやんの。

でもこの説明で少しは分かったくれたみたいで、
「なんか、分かる気がします」
とめでたく雑談は終了し、本来の授業に戻ることができたのでした。


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