バネの風

千葉県野田市の「学習教室BANETバネ」の授業内容や、川上犬、ギャラリー輝の事、おもしろい日常を綴ります。

ハイブリッドスターライスプロジェクト(仮称)第1回作戦会議

2017-02-09 14:40:21 | NPO法人アルファバドミントンネットワーク
 第1回作戦会議が居酒屋で行われた。
 たいていこういうことの始まりは居酒屋なんだよね。
 こういうことって、それは「みんなでわいわい何かをやること」。

 2年前NPOの企画でアルファハイブリッドマラソン大会を行った。
 バドミントン部と陸上長距離部がマラソンで競う。持久力ではひけをとらないと豪語するシャトラーが多かったが、さすがに天下の長距離部にかなうわけがないから、ハンディてんこ盛りでのマラソン大会だった。
 この大会は、種目の異なる部活が交流し、教室で机を並べる仲間の部活動での顔を知る日があってもいいじゃね? 的な理由付けはあった。しかし個人的には、「みんなにすいとんをふるまう」が目的だった。真冬に走ったあとなら一層美味しいだろうと思い、マラソンがセットされたというのが本音。
 スタートを写真に収めてから、寸胴鍋2個分のすいとんづくりにとりかかった。
 お手伝いの人と一緒に家で食材をカットしてきたので、当日は煮込んですいとんを入れるだけ。

 寸胴鍋で煮込むとはいっても、実際やるとなると場所の確保、コンロの準備、鍋に水入れ、そして湯をわかす。結構これらに時間がかかった。
「チャッカマンどこ?」
から始まるんだから。

 さてこうしてようやく灰汁を取り出した頃、

「最初の人、ゴールしちゃいました!」

 スタートとゴールの写真はしっかり撮るつもりでいたから、ゴールに見張りの人を立てていた。
全部作り終え、しばし談笑した後、ゴールする彼らを写真に収め労う、そんなイメージをしていたのに、
「なんだって!」
鍋の管理を他の人に任せゴールとなっている校門まで走ると、もうすでに陸上部が数名ゴールしていた。

「ゴール写真撮るから、もう一回あのあたりから着順通りに走って!」

とお願いすると、陸上部員達は笑顔を引きつらせながら走り直してくれた。それからバタバタとすいとんの完成に向けたのだから
「あんな忙しい思いはもうこりごり」
となり、去年も今年度もこの企画は流れた。正確にいうと、流した。

 そのお蔵入りさせていたハイブリッド再び!

「うちの田んぼで米作りませんか?」
なんて話が舞い込んだ。
「やります、やります」
となり、バドミントン部と陸上長距離部合同で稲作体験することとなった。

 田んぼ持ち主の星野さんとの打ち合わせ、すなわち作戦会議を行った。
 星野さんがあらかじめ打ち合わせ資料を作ってくれていたので、我々はそれを元に話し合いを進めた。
 子ども達が田植えや稲刈りをして米を収穫する、これがこのプロジェクトの目的。できればなんでも手作りで、というロハスなロマン路線で行こうとする我々に、できる限り寄り添ってくれる星野さん。
「今は皆機械植えなんだよね」
とぽつりと言ったけど、皆で体験したいという思いを受けとめそれに合わせて話を進めてくれるのだった。
 打ち合わせを進めいろいろ質問するうちに、これは植えて刈り取って、収穫できました!なんて簡単なことじゃないぞと思い始めた。米作りって八十八回の手がかかるんだよね。植えるまでの準備、途中の手入れなど残りの86回の手はどうするのか。結局星野さんにおんぶに抱っこになってしまいそうだなどと思うけど、星野さんはそれらに頓着することなく終始ニコニコ顔だった。
 そのくせこちらは「あーしたい、こーしたい」、と思うままにおもしろそうな企画を語ると、それに対して「大変だからやめとけ」とか「それは無理だ」などと否定する言葉は一切発せず、突拍子もないアイディアに対して、
「じゃ、こうしよう」
と実現可能路線で提案してくれる。
 そうして我々のテーブルには「夢」を詰めた気球がボワンと浮き上がり、プランを語るたびに大きく膨らんでいくのを感じた。

 夜9時を過ぎた頃、星野さんをお宅に送りがてら現地を視察することにした。

 10アールの田んぼって、いったいどれくらいの広さなのか検討がつかない。
 1アールは10m×10m。それが10個分。ということは10m×100m。田んぼの形としては20m×50mかなとプリントの裏に図を書きながら話し合っていた。じゃ、バドミントンコートいくつ分? 16面分くらい? と頭で描いたけど、具体的にイメージできない。
「米はどれくらい収穫できるのですか?」
と質問すると、
「480キロくらいかな」

 関東平野の真っ平らな地に、10アール単位で区画されたと思われる田んぼが並ぶ。月明かりに、狐の影が浮かび上がるような気配と、幹線道路の音と人家のたたずまいが近い里山。

「ここから、むこうの少し黒い線が見えるあたりまでだよ」
 ここで横1列に40人が並び田植えする。
 畦ですいとんとかカレー炊き出ししようと思う。

「(義父さんが)プリントまで用意してくれているとは思いませんでしたよ」
と星野さんの婿にあたる齋藤先生が言った。

 30年前。結婚してすぐの時に、夫は夏合宿を別所温泉でやりたい、その時子ども達に山登りやバーベキューを体験させたいと語った。父は夫のプランに楽しそうに乗り、その準備やら後片付けにも積極的に関わった。
 あの時の義父と婿の姿が蘇る。

 星野さんが終始笑顔でわたしたちの思いに寄り添ってくれること。あの時の父が夫の思いに全面的に協力し、一緒に楽しんでくれたこと。

 きっと楽しいことになる、と思う。
 田植えではミミズや蛙投げ大会になってしまうかもしれないけど。

パンとサタデークラブ

2017-02-05 18:23:21 | 野田市オープンサタデークラブ
 野田市主催のオープンサタデークラブ、川間小のバドミントン講座を担当している。

 年間15回程度の講座なので、どんどん練習新ネタ入れるより、ある程度ルーティンの方が子ども達は楽しめると思う。でも毎回同じではマンネリになるから、ほんの少し新しいエッセンスを加えることにしている。
 では今日は何をエッセンスとするか。
 それはその時の参加者顔ぶれ、指導者の様子、天候等で決まるから事前に準備することはしない。仮に事前準備したとして、大抵その時はその場の空気に合わないことが多く、指導空振りで終わりやすい。だから全員整列して始まりの挨拶している最中に「今日何いれようか」と頭の裏側でグルグル考えたり、行き当たりばったり新ネタ入れたりする。

 今日は参加状況にかかわらずやることが二つも決まっている。
 一つ目は、1月末に行われた野田市小中学生バドミントン大会に出場した子の結果発表と表彰をする。
 そしてもう一つは、みんなにパンを配ること。

 パンを配るって。

 オープンサタデークラブ川間小バドミントン講座が、千葉県教育庁による「企業と連携した子供応援事業」モデル教室になった。 平成28年~30年度の3年間、企業との連携の仕組みについて、地域の実態に応じた試行が行われということで、今年度は2/4と2/18に、地元企業パスコのパンが参加者全員に配られることとなった。

 朝8時過ぎた頃にパスコにパンを受け取りに行った。
 初めてパスコの門を入った。
 出勤の人たちがぞろぞろ入るのと一緒に門をくぐった。
 すでにパンは準備されていて、守衛さんと一緒に車に積んだ。一瞬、車に積みきれるか?思うほどのボリューム。箱にどさっと入ったパンが渡されるのかと思ったら、一つのトレーに10個程度がつぶれないようにとていねいに並べられていて、トレーの10枚ほどの量だった。

 パンはできたてと見え、ほんわか湯気が立っていた。

 川間小体育館に到着すると、すでに何人かの子供が来ていて、

「今日、パンもらえるんだよね?」
って駆け寄ってきた。
パンはどこにあるんだ、見せてくれとまとわりついてきた。

 事前に各家庭にパン配布連絡が届いているから、子ども達は今日パンが配られることは知っている。
 この調子では、配り方を失敗すると奪い合いになるかもしれない。
 以前川間ジュニアをやっていたときに、子ども達にバナナを配ろうとしたら、大きなバナナの房を持ったわたしは子ども達に一斉に群がられ、バナナとともにもみくちゃになったことがある。
 そうならないよう、事前準備が必要だなと思う。

 市民大会の表彰を終え、
「今日はもう一つお知らせがあります」
というと、
「パンでしょ」
「パンもらえるんでしょ」
とあちらこちらから、パン、パンと声が上がり、終いにはパーン、パーンと声を合わせ始める。

 子ども達の期待感、ハンパない。
 これはいよいよ配り方考えないと、大混乱の図!とこちらは警戒モード。

 千葉県や野田市の担当者の方が、会場視察を兼ねてみえた。
 今日のパン配布を子ども達に説明する文言を、
「近くの工場のパスコさんが、子ども達のことを応援するためにパンを用意してくれました」
と説明するつもりですが合っていますか? と県担当者に確認すると、

「いいですね。とてもわかりやすいです。応援という言葉がいいですね」

 視察の人がいるのに、練習が始まると子ども達は周囲の状況は全く目に入らないと見えいつも通りの練習が始まった。終盤パン準備で会場抜け出したりしているのに、子ども達は大人の動きには頓着していない様子。
 しめしめと思いながらこっそりパンを準備する。

 車から運び出す際気づいたが、用意されたのは3種類。チョコ、ミルク、クリーム系。これはチョコ人気だろうな。チョコは先着順ということになりそうだね。

 ・最初に用意されている3種類を子ども達に見せ、事前に選択しておいてもらうこと。
 ・子供が直接とるのではなく、スタッフが希望のパンを手渡すこと。
 ・パンと一緒に県が用意したアンケートを配ること。
このような段取りを決めた。

終わりの挨拶の頃にはみなそわそわし始めた。
戸口に山盛りになっているパンを見ている。

「一列になって順番に受け取ろう」
というと、
「1年生からでしょ?」
と大きい子が言う。
そして「チョコはなくなるな・・・・・・」とつぶやく。

 きちんと説明したし、1列を作ったから、バナナ争奪戦のような地獄絵図は再現せず、とても和気あいあいと、ルンルンと、ワーワーと、なんていうか超ハッピーに全ての参加者にパンを手渡すイベントは終了した。

 何かもらえるって、とっても嬉しいことなんだなって思う。
 子ども達はすぐに帰らず、体育館で車座になっておしゃべりしていた。



 パンは途中で食べたりせず家に帰って食べることと事前にプリントで説明されているから、その場で食べ始める子はいなかったが、皆嬉しそうにおしゃべりしている。

 終了後パスコにケースを返しに行き、家に戻る。
 交差点でさっきまでサタデークラブにいた女の子発見。
 手にパンとアンケート用紙持っている。
 一旦自宅に戻り荷物を置いて、パンとアンケート用紙持って近所のおばあちゃんちに行くんだな、と勝手に想像する。
 交差点を通るとき運転するこちらに気づいたその子は、「あっ」て顔で、パンを持っている手を挙げた。

 スタッフも全員一つずつ好きなパンを受け取り、何かみんなほんわかした気持ちになった。

静脈に響く映画

2017-02-01 12:57:27 | バネ
沈黙を観てきた。

と中学生に言うと、

サイレンス!と間髪を入れずに英語苦手君が言った。
映画のタイトルを知っていて、サイレンスと呼応したのか、それとも知っている単語だから他の子に言われる前にあわてて発したのか、その真偽は定かではない。
叫んだ後のドヤ顔からして、恐らく後者だと思う。


遠藤周作原作「沈黙」の映画化という下知識だけで映画館に突入。

予告編を見ながら待っていると、ゾワッとしてきた。
これって、もしかしてホラー?
日曜の午後なのに映画館ガラガラ。だからそう思わせたのか、何かおどろおどろしい雰囲気が漂う。
オープニングはドラキュラをイメージさせる。
ホラーだったら途中で出よう、と思う。

色のない映像に、侍が動いている場面を見届け、日本の映画だと安堵して腰をすえて観ることにした。

感想はというと、「なんかねー」としか言えない。
隠れキリシタンを弾圧するシーンがリアルで、リアルすぎて血管が痛い。
なのに「信じる心」という壮大なテーマがあるのに、わたしの心に届く前に何かに遮られた感だけが残り、「うーむ」という気持ちで映画館を後にするのだった。もう少し、人の業を掘り下げてほしかった。あとは各自考えよというスタンスでいいから、そのための余白がほしかった。
後半ですすり泣く人がいたけど、自分としてはそこに行くまでに何か蓋がされてしまった感じだった。

「で、(映画)どうだったんですか?」
と中学生が聞くから、

「動脈には響いたけど、静脈には響かなかった」
と答えると、
皆「??」状態。

よく分からない説明をスルーして話は隠れキリシタンだの、踏み絵だのと歴史話に飛んだが、先の動脈について納得いかない子が食い下がってきた。

「動脈って理科で習ったけど、どういうことですか?」
「それはね心臓から出て酸素運ぶ血管で、静脈は心臓に戻る血管ですよ」
ってさっきのサイレンスドヤ顔君がはりきって完全には正しくない説明をつける。
(おれは今そんなこと聞いているんじゃねぇ!)と心でさけんだかどうかは知らないけど、食い下がり君はドヤ顔君の説明はスルーしてしつこく聞いてくる。
「だから、どうして動脈なんですか?」

「ほら、欧米のホラーは怖いけど、日本のみたいにゾクッとこないでしょ」
というと、
「先生、この前もそんなこと言っていたよね」
って他から相の手が入る。
子ども達って、ちょっとした雑談いつまでも覚えてやんの。

でもこの説明で少しは分かったくれたみたいで、
「なんか、分かる気がします」
とめでたく雑談は終了し、本来の授業に戻ることができたのでした。