脳のミステリー

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90.アビリティ、ワン・バイ・ワン、能力のお零れ貰おう!

2006-10-21 09:01:13 | Weblog
 人間は個々に夫々素晴しい能力を持っている。ただ、本人がそれに気付いていないか、はたまた、それを充分に発揮出来るか出来ないか、それだけの事である。
 戦後の日本が長い間大好きだった「横並び現象」即ち「みんな一緒状態」は今や近代日本では首を傾げられるようになってきたが、諸外国では「個の時代」などというようなモットーはお目にかかる事がない。日本では「私も・・・」という言葉は日常茶飯事の頻度差で出没するが、豪州なんかではme, too とか so do I という表現に対してはreally! とか What a coincidence! とか言って奇遇だと思われる事の方が普通だ。だから、色々な人の話はよく聞くのかもしれない。トラベル・ジャーナリストとでも言おうかベテラン女性が面白い事を言っていた。
― 欧米人は考えて、話し合って、実行に移すが、日本人はよく考えて、よく話し合って、それだけで、おしまい! ―
なるほど、考えて話し合って実行に移すには人の意見も注意深く聴く事になるだろうが、最初から「おしまい」の四文字が潜在意識として夫々の頭に潜んでいれば、人の意見なんかいい加減に聞いている事が多いのかもしれない。
 私の子供達が幼い頃、日本人社会と豪州人社会を頻繁に往復したが、母親として「聴く態度」をまざまざと見せ付けられたものである。豪州では、話す相手が大人だったら、まして、子供達は興味津々の面持ちで聴き入る。騒がしくても、ちょっと大人が「シーッ!」と言って口に薬指を当てると、途端に静かになる。
英語指導の中で、私は小学校高学年の子供達や中学生には必ず言ったものだ。
「学校での授業中、先生の話はよく聴くように!」
日本の子供達はとかく頭でっかちになっているので「知ってるもん!」とか「分かってるもん!」とか言って、貴重な授業に真剣な耳を傾けない。知っているなら、試験はみんな100点! 分かっているなら、全員花丸! ところが、解答用紙を貰うと半数が首を垂れてしょげる。そんな光景を懸念に思った私は言ったものである。
「ここで習ったからと言って、全部知ってるつもりにならない事。一時間足らずの学校の授業で先生が全く知らなかった事を例に出すかも知れないでしょ。たった一分間の知らぬ事柄の為に一時間の授業を全て逃さずに聴くという事はとても大切!」
嬉しい事に、あの当時、真面目にしっかり私の話を聴いていた生徒や学生は今現在、あらゆる分野で輝かしい活躍をしている。
 ところで、今朝テレビをつけると「盗作だ!」と何やらワイワイ騒いでいた。人気ミュージシャンが人気漫画家の台詞を無断使用したというのである。日本は何と平和な国だろう! 私は松本零士のアニメ「銀河鉄道999」は殆ど知らないが、ゴダイゴの歌はよく聞いたものである。私の子供が生まれた頃に流行った歌だ。
The Galaxy Express three nine
Will take you on a journey
A never ending journey
A journey to the stars
この素敵なフレーズはとても記憶に残っている。私だったらもしかしたら、銀河鉄道はThe Galaxy ExpressでなくThe Milky Way Train なんて使って「陳腐!」てな事になってあんな爆発的な人気にはならなかったかも知れない。後半のフレーズA never ending journey
A journey to the starsは最高だ! シンガーソングライターの槇原敬之は80年も前の宮沢賢治著「銀河鉄道の夜」を想ってか「銀河鉄道の999のタイトルも先人が創った言葉だ」と言っているらしい。なるほど! なるほど!
 おふたりさん、自分の能力を信じて大きな気持ちになろうよ。宮沢賢治が「先人の英知に学べ」と笑っているかもよ。槙原の歌詞「夢は時間を裏切らない 時間も夢を決して裏切らない」が松本の台詞「時間は夢を裏切らない 夢も時間を裏切ってはならない」にそっくりなんだって!「流れ進むのは我々であって、時ではない」という名言を残したトルストイもきっと笑っているに違いない。かつての名言は現代に活きてこそ、改めて褒めたくなるものである。「夢は見るものではなく、叶えるもの」これは私の台詞。でも、槙原敬之ではないけど「記憶上のものを使用したかもしれない」という事は比較的よくある事だと思う。ちっぽけな私なんかは、始終名言を引用されるトルストイにあの世で会ったら、滅多斬りかも・・・ でも、文豪の豪は、豪語の豪、豪快の豪、豪華の豪、ふたりとも豪物(えらぶつ)(偉物)になって下さいよ! そうか。豪州の豪は大層なという意味で、州は日本で古くから用いた地域単位としての国、つまり豪の州、大層な国という事だったのか。日本人って、やっぱり、頭いい!
 とにかく、宮沢賢治は自分が見た夢、即ち多くの謎を秘めた銀河鉄道の夜の面白さと、素晴しい言葉や深い思想、更に世界観を童話に移行して見事に次代に残したのである。
 話は全く変わるが、安倍総理の「美しい国へ」は川端康成の「美しい国、日本」のパクリだと言う人がいるだろうか! 日本人初のノーベル文学賞に輝いた川端康成がその授賞式で「美しい日本の私」というテーマで講演した時、現総理は多感な中学生だった筈だ。「美しい国、日本」は総理の記憶に特別に残っていたのかもしれない。それより何よりその四半世紀も後に大江健三郎がノーベル文学賞受賞講演の際「曖昧な日本の私」でジョージ・オーウエルの言葉を借りて「人間味あふれhumane」「まともな sane」「きちんとしたcomely」「上品なdecent」日本人でありたいと語っている。大江氏とて文豪川端康成の「美しい日本の私」を念頭に自らの講演に「曖昧な日本の私」と題したのだろう。ならば、私は「いい加減な日本の私」とでも掲げようか? まさに陳套な趣向だ、と皆から貶されるに違いない!
名言、名台詞、名歌詞はいつの世も誰にでも常に海馬の協力を得て引っ張り出して貰いたいものである。昭和の売れっ子ベテラン漫画家も、人気歌手も夫々違った時に、異なった場所で大きな気持ちで自分の能力に自信を持って平成の次代を担う子供達に伝えて欲しい。
 日本語が乱れて汚くなってきている今だからこそ「夢も時間も裏切らない!」とおふたりに正しい言葉で伝えて貰いたいと願うのは私だけではないと想う。