Mooの雑記帳

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12月15日(水) 池田町は財政の危機的状況を脱したのか

2021-12-15 22:58:20 | 日記

議会初日、2番目に質問に立った中山議員が、「財政の危機的状況は脱したと感じている」との町長発言の根拠を質しました。

これに対して、答弁に立った町長が根拠として示したのは次の6点でした。
① 国の定める財政健全化法上の財政指標が基準を下回り、すべて健全となっていること。
② 単年度決算で黒字収支であるこ
③ 財政調整基金が標準財政規模の1割(3億3千万円)を超えて、令和8年度までに5億円を確保出来る見通しとなったこと。また、他の基金も積み増しが可能となったこと。
④ 実質公債費比率が令和7年度をピークに年々減少していくこと。
⑤ 今後の課題である経常経費については、人件費削減などの効果が期待でること。
⑥ これらを総合的に考えて、これ以上悪化する方向にないこと。

まず、確認しておきたいのは、この財政危機がどのようにして引き起こされたのかという問題です。主な要因を挙げると次のようになります。
第1は、池田町の人口、財政の規模を超えた、大型事業を含む数多くの投資的事業を行ったために、財政規模を膨らませ借金を増やしたこと。
第2は、この間職員数を増やした(H28 92人→R2 106人)ために、人件費の上昇を招いたこと、さらに隣村の移住定住政策をまねて一件100万円を超える補助事業を年度の途中から行うなど、経常的な経費の急拡大を招いたこと。
第3は、財源不足を補うために9億円近く積み立てていた財政調整基金を億円単位で取り崩し、一時は基金の枯渇が心配される事態となったこと。
これ以外にも、今後の人口急減やインフラの劣化などを見据えた長期的展望に立った財政計画がなく、また現在の計画も見直しに消極的であったことなど、いくつもの要因が挙げられます。

町は、令和2年度に、歳出の「3億円削減プロジェクト」を庁内に立ち上げ、町民サービスの切り下げなどを含むいくつかの予算削減策を打ち出しました。町長は、それらの責任を取って、自らの町長歳費の3割カットを行い、他の理事者もそれなりのカットを行ったのです。

こうした過去の経過を前提に、町長答弁がいかに見当外れの見解を述べているのかを見てみることにしましょう。

①②④ まず、財政指標などについて。
国が決める健全化判断比率は池田町の場合は実質公債費比率しかありません。財政危機が表面化した令和元年度の実質公債費比率は11.8%、町の財政シミュレーションでは令和7年度にこれが16.0%になります。現在でも長野県下の町村で下から4番目ですから、令和7年度にはダントツのワースト・ワンになることは確実(12月5日の記事参照)。要注意ラインの18%を超えていないから「健全」だと判断する感覚が疑われるということです。厳しい状況になったこの数年間でも、財政指標は健全化比率を常に下回っていたのです。単年度決算が黒字なのは、どの年度もそのように操作するのですから、これらはすべて判断の根拠にはなりません。むしろ財政指標はもっと悪化すると捉えるべきです。

③ 財調を5億円程度に戻すことができたのは、交付税が予定より多かったこと、3億円削減プロジェクトでそれなりの努力をして予算削減に取り組んだこと、新型コロナの影響で歳出が抑えられたことなど、ある意味で特殊な要因が重なったためであり、自覚的に積み増しを行ったためにそうなったわけではありません。財政シミュレーションでも毎年度の剰余金の半分を積み増して令和8年度には6億円を超えるところまで持って行けそうだとしていますが、結局町長が根拠とするのは「財調の積み増し」しかありません。
ところが、町には基金に対する基本的な方針がありません。隣の松川村は、財調は3億円程度、あとはすべて特定目的基金と減債基金として積み増すという確たる方針をもって過去一貫して取り組んでおり、池田町とは全く対照的です。その積立額も桁違い。
池田町は、ただ財調をためることが中心で、その他は、令和8年度で減債基金1億円、諸々の目的基金を合わせても基金は微々たるものでしかありません。
財調が数億円になったから財政の危機的状況を抜け出したと強弁するほど愚かなことはありません。財政の根本が分かっていないことの証左といえるででしょう。

⑤⑥ 財政危機の深刻化を最も雄弁に示しているのが、財政シミュレーションに見る令和8年度の経常経費と投資的経費の割合です。
平成28年度にはその比率が80:20だったものが、令和8年度には94:6(1年前のシミュレーションでは95:5)ですから、投資的経費に回すお金がほとんどありません。この状態では道路、橋りょうなどの補修はおろか、施設整備などの予算がまともに組めないことは明らかです。
今後、町は会染西部非農用地(4ヘクタール)を運動公園化するとして、6億5千万円を見込み、会染保育園の新設に6億円を見込んでいます。そのほかにも、役場庁舎の壁面改修、会染小学校の大規模改修(国の予算措置)など大型の事業が予定されているのです。
財政シミュレーションにはこれらも盛り込んだとしていますが、果たしてその通りになるのかどうかは極めて疑わしい。社総交の経過がそのことを示しているのですから。
経常経費を減らすのは、人件費だけをターゲットにすればよい訳ではありません。財政構造そのものをどう変えていくのか、その大方針が問題なのであり、現在の財政構造が続く限りは依然として非常事態のもとにあるという認識でなければなりません。これ以上悪化しないから危機は脱したなどと脳天気なことを口にするようでは、町長としてはすでに終わっています。

次は、12月8日に町が全戸配布した「行財政改革ニュースレター」の裏面(pdfファイルがリンクされています)です。表は町が第一次答申を受け取ったという記事で、裏が委員会が作成した資料になっています。

下は、昨日の地方紙の報道。