理想国家日本の条件 さんより転載です。
なぜ中国でコロナが再流行しているのか? 【澁谷司──中国包囲網の現在地】
2023.01.09https://the-liberty.com/article/20225/
《本記事のポイント》
- 虚しく響く習近平のコロナ勝利宣言
- 党大会や北京防衛を優先させた結果
- 中国再蔓延から読み取れるさまざまな実情
虚しく響く習近平のコロナ勝利宣言
昨年2022年12月31日、中国の習近平主席は新型コロナウイルス(以下、コロナ)に対し、「私たちは今までにない困難と挑戦に打ち勝った」と勝利宣言を行った(*1)。
けれども、世界中の誰が見ても、北京政府がコロナを征圧したとは思えない。中国国内では、未だにコロナが蔓延しているからである。ここでは、なぜ中国でコロナが再流行しているのか再考してみたい。
党大会や北京防衛を優先させる中央政府
既報の通り、昨年10月中旬の第20回党大会前から、大都市ではコロナが拡大していた。ところが、中国共産党は、コロナ平定よりも党大会を優先したのである。
昨年12月14日、世界保健機関(WHO)が鋭く指摘したように、北京政府が、同月7日以来、封鎖緩和措置を取ったから、コロナが急に蔓延したわけではない(日本のマスメディアは、習政権の封鎖緩和政策とコロナ再流行を直接、結び付けたがるが、それは必ずしも正しいとは言い難いだろう)。
さて、中央政府が、突如、コロナ封鎖を緩和したが、地方政府はその防疫準備ができていなかった。しかし、習近平政権は、地方政府に北京市への医療スタッフ派遣を強要した(*2)。北京市を防衛するためである。地方はただでさえ、医療スタッフが不足していたので、目下、多くの省市で医療崩壊が生じている。
今回、中国では「オミクロン株の亜種」が強力なウイルスとなり、脅威が増した公算が大きい。そのため、一部の中国人に「白肺現象」(肺の線維化)(*3)、すなわち「間質性肺炎」(肺の一部が硬化して、肺が膨らまなくなる)の症状が起きている
今年1月4日、WHOは中国でのコロナ感染拡大はオミクロン変異株の亜種「BA.5.2」および「BF.7」が主体で、合わせて全地域の感染者の97.5%を占めていると発表した(*4)。同時に、WHOは中国からの亜種に新種は無いと指摘している。
中国再蔓延から読み取れるさまざまな実情
それにもかかわらず、中国でコロナが再拡大したことから、何が読み取れるだろうか。
第1に、中国共産党は、自国産の「シノバック」製と「シノファーム」製のワクチンを世界に宣伝していた。そして、習政権は、アジア・中南米・中東諸国へワクチンを輸出している。ただ、中国製ワクチンが賞賛されたという話は寡聞にして知らない。今回の再蔓延は、中国製ワクチンが本当に効くかどうかを明らかにしてしまったのではないだろうか。
第2に、中国の大都市では大気汚染等がひどいので、呼吸器系統に基礎疾患を持つ人が少なくないだろう。そのため、コロナに感染すると、重症化しやすいのではないか。
第3に、習政権の「ゼロコロナ政策」下、厳しいロックダウンで、住民らに食糧や薬等が十分行き届いていない。だから、コロナに対する抵抗力が不足しているのではないだろうか。たとえ、コロナに罹患しても、抵抗力があれば、重症化しにくいと思われる。
第4に、中国ではコロナ再流行に伴い、黄桃の缶詰やレモンがコロナに効くという噂が流れた。そこで、同国内では、特に、後者が飛ぶように売れ、値段が高騰した(*4)。
一般的に、ビタミンCは免疫力を増すので、確かに、ウイルス撃退には多少役立つかもしれない。ただ、レモンがコロナに効くかどうかは不明である。
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他方、現在、中国では日本製の風邪薬を求める人が多い。
訪日中国人が、薬局で日本製の風邪薬、例えば大正製薬の
「パブロンゴールドA」を買い占めているという(*5)
。おそらく、熱を下げる効果はあるのかもしれないが、
コロナに対し、どれほどの効果があるのか疑問である。
(*1) 2023年1月1日付人民日報
(*2) 2022年12月25日付中国瞭望
(*3) 2022年12月24日付中国瞭望
(*4) 2022年12月18日付華商網
(*5) 2022年12月24日付朝日新聞デジタル
アジア太平洋交流学会会長・目白大学大学院講師
澁谷 司(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~05年夏にかけて台湾の明道管理学院(現・明道大学)で教鞭をとる。11年4月~14年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。
【関連動画】
澁谷司の中国カフェ(YouTube)
https://bit.ly/3FhWU43
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