・・・・・・あわぞうの覗き穴・・・・・・

気が向いたときに、覗いてご覧ください。
何が見えるかは、覗く方々のお眼め次第です。

くじら尺

2012年11月15日 | つぶやきの壺焼

くじら尺という便利な計測単位がある。

換算の必要などないのだが、参考に測ってみると1尺が約38センチ、1寸が約38ミリ、ものさしは1分刻みなので1目盛り約3.8ミリの荒い目盛りになっている。

呉服の仕立てに使ったものだが、ほかの用途にもこれが便利なのである。
何が便利かというと、まず視力の衰えた老人にもよく見えること。
見やすいから、ものさしに数字は不要、目盛り面がすっきりしている。

それに、荒い目盛りで計測値の桁数が小さいから覚えやすい。
ちょっと何かを入れる隙間の寸法だとか、手作りの小箱などは、ミリ目盛りの測り方よりはるかにわかりやすい。

機械加工でないものの寸法の精度は、この程度で十分なのだ。
しかし、「適正な計量の実施を確保し、もって経済の発展及び文化の向上に寄与することを目的」とする「計量法」という法律ができて、「法定計量単位」以外の計量単位は、取引又は証明に用いてはならないとされ、違反内容によっては一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金を科せられることになった。

「法定計量単位」とはいうまでもないがメートル単位である。
取引にかかわることなので「経済の発展」はわかるが、実生活に便利なものを排除して「文化の向上」のどういうところに寄与するのかは理解できない。
懲役、罰金の脅し文句も、くじらの面に何とかと言いたくなる。

くじら尺などがいくら便利でも、取引にも証明にも使えないから、その目盛りのものさしは一般市場から消え、いつの間にかそんな計測単位があることすら忘れ去られてしまった。

ただ1本我が家に残っている便利なものさしを見るたびに、何が何でもの精神で進められたあの単位統一は、世紀の愚策であったように思うのだがどうだろうか。

ここまで書いて、本当にないかと調べたら、巻尺の形で売られている。
「伝統の積み重ねられたところに文化が残る」(伊藤貫)のだった。

___もうないと思ったくじらが生き残り___



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