「一晩中試してみるか」の問いに、かすかな困惑を見せるあのCM、有効な季節も残りわずかになった。
火をつけない、匂いもない、そういう蚊取り器もあるが、知らぬ間に無臭気体を吸い込んでその程度を感知できないものは、どこか不気味で使う気がしない。
やはりわずかに嫌な匂いのする煙が出て、どちらの方向に効果が強く及んでいるかを五感で知ることのできる渦巻き香が、何十年来のなじみも手伝って安心できる。
一晩中点けていなければならないほど蚊はやってこないから、ほどほどのところで消えてくれれたほうがよい。
途中で消すには、洗濯バサミではさんでおけばよいとも聞いたが、いまのプラスチック製洗濯バサミは、それには使えない。
止めるのが巧くいかなければ、途中で止めるのでなく、燃えきって終わりにすればよい。
適当な長さに折って使えばよいのだ。
だが、渦巻き香の箱に入っている香立ては、渦巻きの中心で支えて乗せるようになっていて、短く折った渦巻きの一部を挟んでも巧く止まらないときがある。
挟んだつもりが知らないうちにポトンと落ちないようにするには、しっかり挟むこと。
あのワニ口クリップなら、くわえて離さないからよいだろう。
そこで昔使っていた配線仮接続用のクリップ。
絶縁被覆を剥ぎ取って、香立て金具の先端にハンダ付け。
よし、これで今晩から蚊取り香落下の心配はなくなった。
蚊遣り豚の謎―近代日本殺虫史考 (ラッコブックス) | |
町田 忍 | |
新潮社 |