財部剣人の館『マーメイド クロニクルズ』「第一部」幻冬舎より出版中!「第二部」朝日出版社より刊行!

(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

マーメイド クロニクルズ 第二部 第2章−2 四人の魔女たち(再編集版)

2020-05-22 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 魔界の住人とのちぎりをむすんだドルガ、メギリヌ、ライム、リギスの四人は、本来、死刑宣告にあたる魂百万裂き刑を受けてもおかしくはなかった。
 しかし、666年の禁固刑という驚くほど「寛大な」処置の秘密は、彼女たちの血筋にあった。
 死の神トッドの娘ドルガは、プルートゥの遠縁であった。略奪婚により娶った豊穣の女神デメテルの娘ペルセポネとプルートゥは不仲であり、ようやく生まれた日食の神コロネウロスも、第一次神界対戦の混乱に乗じて冥界をおそった魔界との闘いで行方不明であった。
 父親に似ない人気者で、実力も兼ね備えたコロネウロスを失って、元々暗かったプルートゥの性格がさらに悪くなったと言われる。そんな係累の極端に少ないプルートゥには、トッドは数少ない心を許せる間柄の一人であった。
 悩みの神レイデンの両性具有の娘メギリヌは、「明けの明星」と称えられた大天使ルシファーから堕天使となったサタンの遠縁であった。ルシファーの遠縁であるリギリヌを、冥界陣営で確保しておくことは人質の意味もあった。ただし、今や魔王サタンとなった彼がどう考えるかは、大きな疑問だったが。
 闘いの神カンフの娘ライムは、ゴルゴン3姉妹で唯一殺すことが可能だったメデゥーサの姉で不死のエウリュアレの遠縁で、ライム自身も不死であった。メデゥーサはかつてネプチュヌスの愛人だったが、ライムは美しかったころのメデゥーサにうり二つと噂された。
 責任の神シュルドの娘リギスは、その竪琴の音色が、神々や神獣さえ虜にしたオルフェウスの遠縁。オルフェウスは、アポロンの落とし子という噂があり、天界からの助命嘆願があったとされている。
 さまざまな理由で四人を死罪に処すことは遺恨を残す可能性があったために、冥界でのしたい放題の行動に対しても「異例の寛大な措置」が取られた。ただし、彼女たちは666年の投獄を寛大な措置とは考えていなかった。



(この不始末、どう始末をつけるつもりか?)ユピテルがプルートゥに思念を送る。
(四人の行き先はわかっておる。あやつらは、マクミラを心底から恨んでおる。人間界に向かったのは復讐のため。必ずやトラブルを起こすはず)プルートゥが不敵に答える。
(そしてナオミは、ほおっておいてもトラブルに引き寄せられる星の下に生まれたマーメイドか)ネプチュヌスが伝えたいことはわかったと応じる。


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