だが、ゾンビたちは腕だけではなく足も進化させていた。
折られた方の膝で地面をロケットのように蹴り出すと孔明を飛び越えてナオミに襲いかかった。
振り返った孔明は甲殻類の手を持ったゾンビが腕を車に突き刺すのを見た。
ナオミィー! わけのわからない叫び声を上げながら孔明はゾンビに向かって行った。彼らは、龍の逆鱗に触れたのだ。
自動車電話を掴んだ瞬間、カニばさみが上から降ってきてナオミは泣き出しそうになった。
次に、孔明に蹴り飛ばされたゾンビが前方に飛んでいくのが見えた。
ダメ、こんなところでビビってちゃ。
気を取り直して短縮ダイヤリストを見て#2を押した。
その時、かかってきたこともないのに#1に自分の名が書いてあるのに気づいた。
なぜと思ったが、電話はすでにビルを呼び出し始めていた。
五回ほどダイヤル音がして相手が出た。
「はい、こちらはビル・シャルダンです」
「ビル! ナオミよ。すぐにオーデトリアムまで、アルゴスを持って来て!」
どなった後で、テープが回っているのに気づいた。
「・・・・・・ただいま電話に出られません。御用の方はビープ音の後でメッセージを三十秒以内でお残しください」
XXXX野郎!
思わず罰当たりな言葉を吐いたが、怒りを押し殺しこれを聞いたらすぐ“アルゴス”を持ってオーデトリアムに来い! 孔明とわたしは死にかけてるのよとメッセージを残す。
ナオミが車から飛び出したとたん幻視が始まった。
目の前で一匹の真紅の龍が悪鬼の軍団と戦っていた。
彼の一撃一撃はゾンビの身体にめり込み蹴りは相手を引き裂いた。
だが、引き裂かれたゾンビの身体はぶくぶく泡だってすぐに再生を始めた。
ゾンビたちは悲鳴を上げるでも気絶するでもなしに黙々と孔明に襲いかかる。いかんせんグレードアップした連中たちは強過ぎたし一人で戦うには数が多過ぎた。
ああ、孔明が死んじゃう。
でも、どうやったらこの化け物たちと戦えるの?
今にも断末魔の叫びを上げてもおかしくないほどおびただしい量の血を流した怒り狂う龍は戦いをあきらめようとしなかった。
幻視が終わった時、そこに立っていたのはボロボロになった孔明だった。
「に、逃げろ、ナオミ・・・・・・」それだけ言うと孔明は、ばったりと倒れた。
ナオミは駆け寄った。
ちくしょう、なんて情けない。わたしって大切な友人さえ救えない。
悔し涙が流れた。その涙がいつも肌身離さず身につけている真珠のネックレスにかかった時、ナオミの体が七色の光につつまれた。
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