ものぐさ日記

ひとり遊びが好きな中年童女の日常

『6人の容疑者』

2010年12月30日 | 

映画『スラムドッグ$ミリオネア』の原作、『ぼくと1ルピーの神様』の作者にして、現大阪神戸インド総領事のヴィカース・スワループの第2作目。『ぼくと1ルピーの神様』では、「ヴィカス・スワラップ」という名前になってしまっていましたが、2作目ではちゃんと「ヴィカース・スワループ」となっていました。翻訳者も出版者も前作と同じランダムハウス、子安亜弥さんですが、私のような読者がゴマンといたんでしょうね~(^^;)。

 

内容は、

政治家の息子で極悪非道なヴィッキーは、今まで犯した罪を父親の権力を利用し、すべて無罪判決を勝ち取ってきた。今回は規則通りに酒を断ったバーテンの女性をいとも簡単に射殺してしまった。殺されたバーテンダー、ルビー・ギルが美人の苦学生ということもあり、世間の注目を集めていたが、またしても無罪。その無罪を祝うパーティーで、ヴィッキーは何者かに射殺されてしまう。その時パーティー会場には、銃を持った6人が来ていた。ヴィッキーを殺したのは誰なのか。6人それぞれの生活を描く。

…といったもの。

一応、捕り物なんですけど、推理物ではなくて、6人の人生を描き出すのが目的の小説。まっことインドは広く、いろいろな人がいるもんです。

6人は、ヴィッキーの実の父親(UP州内務大臣)、ボリウッドの大物女優、グーグルの創始者と同姓同名の頭の悪いアメリカ人、アンダマン諸島からきたエンゲ族の若者、携帯電話泥棒、マハートマ・ガーンディーにとりつかれたUP州事務次官と、カーストも生活レベルも文化的背景もバラバラの人達。

ヴィッキーがルビー・ギルを殺害したエピソードは、1999年にデリーで実際に起こった事件を元にしているそうです。議員の息子のマヌー・シャルマが、酒を出すのを断った接客係を射殺したとかで、インド人なら誰でも知っている話だとか。たぶんインド人なら、「シャルマ」という名字を聞いただけで、ブラーフミン(バラモン)だということもわかるはず。ヴィッキーが他に犯した、車道に寝ているホームレスを車で轢き殺したとか、動物保護区でインドレイヨウの狩りをした、なんていうエピソードは、日本人の私でも、ボリウッド俳優、サルマーン・カーンのことをすぐに思い浮かべちゃうくらい。…恐ろしいことに、インドではそんな犯罪は日常茶飯事だということ。

こういう記憶に新しいゴシップや、舞台となるインドの地名、特にデリーの地名、パリカ・バザールやファブ・インディアといった商店街や有名店の固有名詞が次々に出てくるのが楽しい。30年後も読まれる小説ではないかもしれないけど、すぐに映画化される(実際すでに映画化が決定しています)エンターテイメント小説です。「スラムドッグ$ミリオネア」は原作をかなりソフトにしたイギリス映画だったけど、『6人の容疑者』も、このままでは映画にはできない激しい内容。できたらボリウッド映画で見たいけど、シャレにならないか?

 

 


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