ものぐさ日記

ひとり遊びが好きな中年童女の日常

『華麗なるインド神話の世界』展

2013年01月06日 | 美術展・展覧会

 5年半ぶりにお会いする先輩を半ば強引に誘って、横浜ユーラシア文化館で開催中の『華麗なるインド神話の世界』展に行ってきました。

 といっても、インド神話の解説的展覧会ではなく、この展覧会のポスターのような形式の、大衆向けインド神様絵を始めた、ラヴィ・ヴァルマの作品(石版画)展です。今はもう、これこそインドの神様、という感じですが、19世紀に、西洋絵画の油絵の技法を学んだラヴィ・ヴァルマが、その手法を生かして神様を描き始めるまでは、こんなにリアルな神様はいなかったそうです。

 …というところまでは、「インド通信」のラヴィ・ヴァルマの関連記事などで読んでいましたが、この展覧会のおもしろいところは、これらの作品の所蔵者がすべて日本人だということ。独立運動の気運が高まるにつれ、ラヴィ・ヴァルマの絵は、「あまりにも西洋的すぎる」という理由で、一時人気が落ちたせいか、インド国内でも、今回展示されたくらいの点数を、1人で所有するコレクターは少ないとか。そもそも大衆向けの安価な石版画なので、神様の絵とはいえ、1世紀以上保存しておくのは困難だったと思います。そんな貴重なラヴィ・ヴァルマの作品を、日本人が愛し、日本に持ち帰り、大切に保存をしてたのです。このあたりの事情は、海外(特にボストン美術館)に流出した、浮世絵とよく似ています。

 そして、私にとってさらに興味深かったのは、その安価な印刷物が、ビーズや布で装飾されていたこと。日本人の収集家が、装飾を施したのではなく、インドで買った時点で、すでにビーズや布が貼り付けられていたそうです。上の、覧会のポスターの原画も、シヴァ、パールワティー、ガネーシャのそれぞれの来ているものと、シヴァが首にかけている花輪は布が、冠や腕輪、指輪などにはビーズが丁寧に貼り付けられています。印刷物ですので、中には、同じ作品が複数枚ありましたが、もともと所有していたインドの家庭家庭で、それぞれ好みの色を塗り直したり、ビーズや布で飾って、別の作品にしあがっているものもありました。最近のインドの神様絵には、ホログラムや電飾で飾られたものがありますが、家庭家庭で、カスタマイズしたものは見たことがありませんでした。

 ラヴィ・ヴァルマの人気にあやかり、宣伝用のポスターとして使われたというのもおもしろかったです。「ラクシュミー女神も使っている○○石鹸」とか。中には、サラスヴァティーを、パーマをかけた金髪で、うヴィーナの代わりにマンドリンを持たせた女性に置き換えたものもあって、びっくりぎょうてん。ラヴィ・ヴァルマの絵をお手本に、日本で作成したインド輸出用のマッチ箱のデザインもおもしろかったです。 

 『華麗なるインド神話の世界』展は、300円という良心的な入場料金ですが、同じユーラシア文化館の、1階では、『横浜におけるインド人のあゆみ』展、2階では、『アンコール遺跡のヒンドゥー神像』展をやっていて、どちらも入場無料です。1月14日まで。

 ちょうどギャラリー・トークのある日で、研究員の方から、詳しい解説を聞けてラッキーでした。解説を聞いて、ガネーシャは、商売や学問の神様というだけではなく、「あらゆる障害を取り除く」ということを思い出し、あわてて我が家のガネーシャ様のほこりを払いました。

 ガネーシャ様、今年はなにとぞよろしくお願いします。


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