ものぐさ日記

ひとり遊びが好きな中年童女の日常

ふいんき? 雰囲気

2009年09月25日 | 日本語・ことば
 きのう大学でヒンディー語を数十年教えている方から、電話で聞かれました。
 「ヒンディー語の『村』ってどう発音する?」

 ヒンディー語はデーヴァナーガリー文字という表音文字で綴り、ほぼ綴り通りに発音します。だから英語のように辞書に国際音声記号で発音記号を表記する必要がありません。

 ただ、「ほぼ」というのが曲者で、いくつか例外があります。潜在母音というのがあって、軽く「a」と発音する音は、その「a」を表記しないので、そこに「a」の音があるのかないのか、はっきりしないこともあります。ジャグディーシュ・チャンドラ・ボースの「ジャグディーシュ(जगदीश))」も、「ジャガディーシュ」とも読めなくもない。「シュ」の音を「ス」と発音するインド人はたくさんいますから、「ジャガディ(ー)ス」があながち間違いとは言えません。



 綴りと発音と一致しない単語もいくつかあります。

『村』という単語の綴りはアルファベットで書くと、【gaa~v】(「~」は鼻母音)なんですけど、最後の「v」は、ヒンディー語だと「w」と区別がつかなくて、さらに短い「e」「o」「u」という母音に変化しやすい半母音です。(ヒンディー語の母音には、通常短い「e」や「o」はない)

 だから、『村』は、【gaa~u(o)】と読めるはずですが、ヒンディー=日本語辞書には「『実際は【gaao~】と発音する」と載っています。私もそう習ったので、ずーっと「がーおん」と発音してきました。

 綴りと発音が必ずしも一致しないせいか、発音記号つきの辞書(ヒンディー=英語)もあります。その辞書で『村』を調べると、何と【gaa~v】と載っているではありませんか!

 それで、前述のヒンディー語の教師が疑問に思い、(ヒンディー語を職業としている)インド人に尋ねたところ、「『村』は【gaa~v】である」と言われたそうです。


 『著者』ということばは、今では「ちょしゃ」と読みますが、ちょっと前(50年くらい前)には「しょしゃ」と読むのが正しくて、「ちょしゃ」というのは、間違いだったとか。「早急」も「さっきゅう」がもともとの読み方ですが、最近では、「そうきゅう」と読んでも間違いにはならないそうです。漢字はもともと外国の文字で、日本人がどう読もうと、正しいも間違いもないような気もしますが(「さっきゅう」も「そうきゅう」も中国人には通じない日本語だし)、表音文字でも、綴りはそのままで発音だけ転訛することもあるんですねー。

 ヒンディー語の先生が尋ねた相手は、職業的にヒンディー語を使うプロなので、きっと「『村』は【gaa~v】」は本当なんだと思いますが、普通のインド人は私のように「がーおん」と発音しています。普通のインド人が「がーおん」と言っているから、「がーおん」で通じるわけですが、疑問に思い、確認する先生って、やっぱりプロだなぁ…と、再確認した一件でした。
 

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