ものぐさ日記

ひとり遊びが好きな中年童女の日常

印欧諸語

2008年05月17日 | 日本語・ことば
 通勤の友として、久しぶりに「イーリアス」を読み始めたら、おもしろい~!「イーリアス」、「忠臣蔵」、「マハーバーラタ」、「源氏物語」などは、ときどき、無性に読みたくなる本。いろいろな人が出てきて、なかなか覚えられないので、何度読んでも、読む度に新鮮というのも魅力(^^;)。

 「イーリアス」は、トロイア戦争の終盤戦のハイライト。最初に読んだのは、大学の「欧米文学思潮」という講座のテキストとして。もちろん日本語訳でしたが、叙事詩形式で読みました。レポートを書かなくちゃならなかったので、けっこう真面目に読みましたが、最近読み返すのは、小説の形にして、読みやすくなっている松平千秋訳の岩波文庫版(「イリアス」)です。

 トロイヤ戦争は、神(ゼウス)の思惑を考慮にいれなければ、「隣国の王子に寝取られた妻を取り戻して、男のメンツを守る」ために始まった戦争で、なんと10年間も続きました。寝取ったトロイア王家の王子の名はパリス、別名アレキサンドロス。「守る(alex-)男(andr-)」という意味だそうです。盗賊から羊を守ったところからついた名だそうで。

 一方のギリシア連合軍中、最強の武将であり、「イーリアス」の主人公とも言えるアキレウスの名は、「唇をつけない」…「a(否定詞)+cheilos(唇)→Achilleus」の説もあるとか。ヒンディー語でも、「a-」というのは、否定詞で、映画「その名にちなんで」の母、アスィーマーの名は、「a(否定詞)+simaa(制限、境界線)→asiimaa(境界のない、無制の)という意味です。

 へえええ、ギリシアでも、否定詞は「a」なんだ…と、驚きつつ、話の概要を復習しようと、高津春繁訳の、「ギリシア神話」をつまみ読みしていたら、「アマルティア」ということばが出てきたので、ぎょっとしました。アマルティアといったら、ノーベル賞を受賞した、ベンガル人のアマルティア・セーン経済博士のファースト・ネーム。「a(否定詞)+martya(死の-)→不死の」という意味?
 
 …と思ったのは、早合点で、ギリシア神話に出てくるヤギの名前は、「Amalthea」で、音が違っていました。
 
 ちなみに、フランスの首都も「Paris」ですが、ケルト系の「パリシィ族」に由来する名前で、トロイアのパリスとは直接関係がなさそうです。


 とはいえ、一口に「印欧語族」といいますが、「a」の音に、否定の意味が含まれていたり、かなり共通した語感があるような気がしました。パリはパリスと関係ないけど、「パリ」という音を聞くと、人の女房を横取りした色男のイメージが何となく重なる人もいるかも。私はイーリアスを読むと、トム・ヴァーレインを聴きたくなります。

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2 コメント

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Unknown (akberlin)
2008-05-22 23:23:43
パリスっていうと、パリスの審判、という美女コンテストの審査員をウハウハ状態で引き受けた、あの人ですか。うーん、肌もあらわな豊満な美女を3人、前にして
さあ、誰が一番キレイ?と。

「ア」がつくと否定形・・・「アシンメトリー」とかも
そうですね。元はヒンディーだったのか。インド・ヨーロッパ語ってそういうことかー。
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音っておもしろい (とーこ)
2008-05-23 09:14:35
akberlinさん

そうそう、そのパリスです。肌もあらわな(貫頭衣?)美女3人が言った、「自分を選んでくれたら、いいものあげるわよ~」の特典のひとつが、世界一の美女(人妻だけど)のヘレネだったんですねー。

「◎+○○○」→「○○○でない」という、否定の接頭詞は、語彙を増やすのには便利ですね。「im(in)+~」とか「un+~」も、「a+~」と、もとは同じかもしれませんね。ヒンディー語というか、元は、幻の印欧祖語?

もしかして、akberlinさん、「kberlin、じゃない」という意味…じゃないですよね(笑)。
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