酒を飲まない理由

　友人がノンアルコールの飲み会をやって楽しかったらしい。４２歳の大病以来酒を身体が受けつけなくなって、ずいぶん淋しい思いをしている。事あるごとに酒を飲まない理由を訊かれる。熊本の出身で酒が弱いとは口が裂けても言えないので、その場凌ぎで適当な理由を言って来た。そのうち、酒の席には呼ばれなくなり、付き合いの悪い奴になりさがっている。

　某新聞のインタビュー記事で、プロゴルファーのジャック・ニクラウスが「私はプロゴルファーなので酒は飲まない。酒は私の筋肉を固くする」と、言ったらしいのを読んで、これだ、と、思った。「僕は物書きだから、酒は飲まない。酒は僕の脳を固くするからね」どうも、アスリートの発言みたいな迫力に欠ける気がする。

「ほら、啄木とか、太宰とか中也みたいに早逝してもね」弁解がましいし、早逝の歳の何倍も生きている。第一、酒で脳が溶けるとかは形容するが、酒で脳が固くなるなんて聞いたことがない。

　今度ノンアルコールの飲み会がある時は誘って下さい。いったいどんな飲み会だろう？
女性も参加していたかは聞き忘れたが…。

確定申告

　貧乏作家ではあるが、納税義務を果たさねばと、税務署に確定申告とやらに行って来た。仮設相談所の前に６０人ほどの行列が出来ていた。中にも四十人ほど並んでいる様子だった。順番が来るまでは待たされたが、申告手続きはスムーズだった。親切な係官がコンピューターで瞬く間に書類を作成してくれたので、僕はその書類を提出するだけだった。面倒な手続きを予想していたので拍子抜けしたが、無事に終わってホッとした。