目隠しをされ後ろ手に縛られ、ぬめった石の上に跪かされ、
青龍刀で首を落とされる夢を3ヶ月も続けて見た僕が、中国
大使館の武官趙宝智に掛け合い、上海に飛んだのは35歳の
夏であった。冗談ではなく、僕は1週間で日本へ強制送還され、
趙は其の責任で日本を去った。その事の顛末は「夢魔の葬列」
と題して500枚の小説に認め、僕の死後発表するよう愚息に
依頼してある。
夜毎見る夢に比べたら、現実の苦労など甘いものだが、それは
人知れぬことなので云っても詮無いこと。例えば頚椎の痛み、
突然の歯の痛み、何事も他人には計り知れない苦痛は、独りで
耐えるしかないのだ。
あの旅から、「ガラス工場にセレナーデ」という作品が生まれた
事も事実で、塞翁が馬ではないが、苦しみと喜びは光と影のように
表裏一体である。出来る事なら、苦しみは独りで背負い、他人には
喜びだけを見せたい、と思うのは痩せ我慢だろうか、それとも、
青臭いダンディズムだろうか。
今日から15周年記念第二弾、7月アトリエ公演の稽古を始める。
「ミッドナイトフラワートレイン」は初演から数えて5度目の舞台。
弁天マリアも5代目となる。看板女優は塩山みさこ嬢、目の覚める
ような、弁天マリアを期待している。
だが、先は長い、初日まで焦らずに役作りを楽しんで頂きたい。
今、いつ上演出来るかも分からないミュージカルと秋の本公演用の
新作を書いている。未発表の歌もずいぶん貯まった。
上海から帰った後も、そう云えば創作に没頭した。そして其の後に
眩いばかりの光が射して、僕は倒れ全身不随の悪夢が待っていた。
今度は倒れない。夢魔と刺し違える気はさらさらない。
僕は逃げ道を知った。あまり得意げに云うまい。今宵もまた、奴に
出会う。いつの日にか、夢魔の葬列を見送らん事を。
青龍刀で首を落とされる夢を3ヶ月も続けて見た僕が、中国
大使館の武官趙宝智に掛け合い、上海に飛んだのは35歳の
夏であった。冗談ではなく、僕は1週間で日本へ強制送還され、
趙は其の責任で日本を去った。その事の顛末は「夢魔の葬列」
と題して500枚の小説に認め、僕の死後発表するよう愚息に
依頼してある。
夜毎見る夢に比べたら、現実の苦労など甘いものだが、それは
人知れぬことなので云っても詮無いこと。例えば頚椎の痛み、
突然の歯の痛み、何事も他人には計り知れない苦痛は、独りで
耐えるしかないのだ。
あの旅から、「ガラス工場にセレナーデ」という作品が生まれた
事も事実で、塞翁が馬ではないが、苦しみと喜びは光と影のように
表裏一体である。出来る事なら、苦しみは独りで背負い、他人には
喜びだけを見せたい、と思うのは痩せ我慢だろうか、それとも、
青臭いダンディズムだろうか。
今日から15周年記念第二弾、7月アトリエ公演の稽古を始める。
「ミッドナイトフラワートレイン」は初演から数えて5度目の舞台。
弁天マリアも5代目となる。看板女優は塩山みさこ嬢、目の覚める
ような、弁天マリアを期待している。
だが、先は長い、初日まで焦らずに役作りを楽しんで頂きたい。
今、いつ上演出来るかも分からないミュージカルと秋の本公演用の
新作を書いている。未発表の歌もずいぶん貯まった。
上海から帰った後も、そう云えば創作に没頭した。そして其の後に
眩いばかりの光が射して、僕は倒れ全身不随の悪夢が待っていた。
今度は倒れない。夢魔と刺し違える気はさらさらない。
僕は逃げ道を知った。あまり得意げに云うまい。今宵もまた、奴に
出会う。いつの日にか、夢魔の葬列を見送らん事を。