面白草紙朝倉薫VS安達龍真

夢と現実のはざまで

旅をする夢

2007年06月10日 | Weblog
 10年前に来た手紙に名前はなかった。久留米で出会った女子高生の名前を懸命に思い出そうとしたが、その顔は浮かぶのに名前はどうしても思い出せなかった。
 40年の歳月が過ぎても、18歳で作った歌は忘れない。
 
 村外れの水車小屋で50年ぶりに旅から戻った僕が酔いつぶれている。
 初恋の人は春に亡くなり、生家は朽ち果て、友もなく、さてさて、
 酔っ払って眠ろうか。という歌だった。

 青い春は短くて、苛立ち川のせせらぎは、
 海へ海へと急ぎます。
 海へ行けば何がある。何があるかはわからぬが、
 青い春の熱情が、私を海へと急がせる。

 今、四時半。
 絹糸のような雨が、庭をしっとりと濡らしている。
 白み始めた空を見上げたら、旅に出たいと思った。
 夏服に着替えて電車に乗ろう。何処かの岬に着いたら
 ハーモニカを吹こう。知っている限りの曲を吹いたら
 又、電車に乗って帰ろう。
 待つ人のいない家の明かりは点けたまま出かけよう。