家人から「チベットの問題教えて」と言われた。
専門外なのでこのブログでは触れずにいたが、この問題に無関心でいたわけではない。簡単な歴史と「私の視点」を説明した。
だが、今朝の朝日新聞を見て、俄然書く気になった。
確かに、チベットの現況については網羅されているが、チベットの問題そのものについては、首を傾げてしまう内容だ。「森を見ずして木を見る」とはまさにこのことだ。全体像を描かずに一部を切り取って説明している。昨日から今日にかけての記事を読んでも、チベット問題に疎い読者がきちんと理解できるとは思えない。
チベットの問題は、中央アジアにおける覇権争いが一番の核だ。18世紀から20世紀半ばまでは、ロシア(後のソ連)、清国、英国がこの地域を政争の場としてきた。第二次大戦後は、中国が占領したが、それに対してインド洋に影響力をつなげようとする(南下政策)ソ連が陰に陽に介入し、そこへ米国が加わって醜い覇権争いが続けられてきたのだ。
だから、単純に、中国がチベットを占領して、人権を蹂躙している、けしからんという話だけではないのだ。
確かに、中国政府の取ったチベットの占領政策は許されるものではない。清国や英国に翻弄されて疲弊していたところに、建国宣言したばかりの中国が「チベットは歴史的にいって中国の不可分の一部である」と主張して支配下に置いたが、元朝や清朝が支配していた時期が長かったからといって、チベットを自らの領土だと主張するにはあまりに無理がある。
だが、それを利用して中国を責めるアメリカのやり方にも強い憤りを感じる。「911」以降、アフガニスタンだイラクだと忙しかったブッシュ政権だが、その間に急速にその勢いを増してきた中国の勢いをそぐ手段の一つとして、チベット問題を使いだした。五輪前、しかも全国人民大会の開催にぶつけてこのような仕掛けをすることは、喧嘩を売るようなもの。したたかな中国のことだ。体勢を建て直したら必ずやアメリカに対して“報復”に出ることは間違いない。これが、今後の米中関係にどのような影響を及ぼすか、私は憂慮する。
中国がチベットをもはや手放すことは考えにくい。領土の西端にチベット以外にもウィグル(イスラーム教の影響が強い地域)という大きな爆弾を抱えているが、インドという長年のライヴァルとの関係を考えても手放すわけにはいかないだろう。
理想論と言われようが、中国は、やはり両自治区を、地元の人たちに返すべきだ。覇権争いの面からも、領土的にも両自治区を手放すことになれば、「アジアの盟主」としての存在に影を落としかねないと考えているのだろうが、人権問題をないがしろにして真のリーダーになれるはずがない。
嗚呼、それにしても、朝日さんよ。もう少し勉強しなさいよ。