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日々の出来事から国際情勢まで一刀両断、鋭く斬っていきます。コメントは承認制です。但し、返事は致しませんのでご了承下さい。

成長に顔が緩む

2007-09-23 22:55:07 | Weblog
 かつて英会話を学びに来ていた青年と昼飯を食べた。

 彼は生徒の一人というよりは、在学中からいろいろな相談を受けてきたからいつも気にかかる存在で、やめてからもちょくちょく連絡を取り合う仲である。

 そんな彼は、2年ほど前まで酷い会社で働いていた。その会社は全ての従業員に給料を半額しか支払っていないのだ。それも、彼の場合、20万円が月給だったから毎月の手取りは10万円。両親の家から通うから生活できたものの、交通費も支給されておらず、その数年間は悲惨なものだった。他の従業員はと言えば、ほぼ全てが年金受給者で、「仕事があるだけでも良い」という考え方になってしまっているから経営者に対して声を上げることもなかった。

 労働基準監督署に相談するように助言したのだが、労基署というところ、彼のような若者をまともに扱わない。そこで、一度私がその労基署に怒鳴り込んで経営者に強く出るように要求したことがあった。

 しかし、その経営者は労基署をなめきっており、言うことを聞くことはなかった。

 会社を辞めてコンビニに職を求めた彼は、しばらくしてそのマジメな働き振りが認められて社員に昇格、店長になった。

 アルバイトを約30名抱えている人気店である。帰宅が午前様になることも少なくない。休みを取ることもままならない。そのせいでつい最近、彼女とも別れてしまったという。しかし、労基署通いをしていた当時と比べると、今は表情と態度に自信がうかがえる。ご飯を食べながら仕事のことを話す彼の成長振りに思わず顔が緩んでしまった。

JUDOは柔道ではない。

2007-09-23 22:20:17 | Weblog
 先日ブラジルで開かれていた世界柔道大会の判定がおかしいと日本のマスコミは大騒ぎをしていた。

 たまたま見た朝のTV情報番組では、「問題の場面」を何度も画面に映し出してコメンテイターやキャスターが声を揃えて「この判定、おかしい。日本人選手が勝ってる」と、大騒ぎをしていた。

 そのいずれもが柔道に詳しいとは思えない人たちである。中には、「私は柔道には詳しくはないですが、誰が見たって井上選手や鈴木選手が勝っていますよね」と言う女性コメンテイターまでいた。

 危険なことである。私もこれまで何度もコメンテイターなるものを務めたが、そのポジションがどれだけ世論への影響力があるのかを常に頭において発言してきた。だから、自信のないことには偉そうに口出ししたことはない。

 私はかつて柔道を習っており、今でも興味があって「世界の柔道」の流れに注目し続けている。その立場から言わせてもらうと、これらTVなどで発言する彼らの意見は無責任極まりない。

 まず、それらのコメンテイターたちは、柔道の判定基準を知らないことが問題だ。まあ、日本の柔道選手やコーチの中にも不勉強なものが多いから仕方がないのだが、「日本の柔道」は今や世界基準ではないことを頭にしっかりとどめておく必要がある。

 「え、柔道は日本の国技でしょ?」と言われるかも知れないが、もう柔道は国境線を越えて、「JUDO」であることを知っておいて欲しい。もちろん、ルールも私が若い頃に習ったものとは大きく異なっている。

 問題のシーンだが、井上、鈴木両選手はいずれも自分から技を掛けにいった。そして、その攻撃は強烈で、相手の体が大きく崩れてそのまま倒れ込んだように見える。倒れる寸前に相手が技を返しているが、苦しまぎれに放ったもので体勢は圧倒的に日本人選手に有利に見える。とても技を掛けたようには見えない。そんなものは技ではないはずだ、というのが日本の選手やマスコミで発言する人たちの見方だ。

 ところが、今の国際ルールでは、この場面は、どの審判が畳に立とうとも判断は同じで、井上、鈴木両選手が負けになる。返し技が、たとえ「死に体」から放ったものでも有効なのだ。これは、日本人選手だからどうのこうのと言うものではない。

 要は、日本の柔道界がそういった国際ルールの変更を理解し、運用についても研究を怠っているからこのようなことが起こるのだ。だから、マスコミがとやかく言うのは、結果的に、我々国民を「外国は寄ってたかって日本選手をいじめる」という考えに至らせようと扇動していることになる。

 もちろん、私は今の国際ルールが良いと言っているのではない。腕を突っ張り、腰を引いてくるくる回る「現代柔道」なんぞは柔道ではない、との思いもある。だが、国際柔道連盟という最高決定機関が決めた以上、それに従うしか方法はあるまい。それが嫌なら国際柔道連盟の流れを変えるべく動くか独自の国際組織を作ればいいのだ。

 日本は今、国際柔道連盟にほとんど影響力を持っていない。だから、柔道着の色を勝手に変えられたり、ルールを次から次に日本選手に不利なようにされてしまうのだ。

 それはなぜか。ひと言で言えば、先達の怠慢によるものである。東京オリンピックで柔道が初めて競技種目になっただけで「柔道が世界に認められた」と胡坐をかいて、その後連盟の仕事をきちんとしてこなかったツケが今になって回って来たのだ。

 今では国際柔道連盟の要職にも人材を送り込めなくなってしまった日本柔道の堕落の責任を追及せずして、被害者妄想意識を刺激して世論を煽るマスコミには、その辺りのことを少しは勉強せい!と言いたい。