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三日坊主

2006-10-26 10:09:26 | Weblog
 23歳の若者が久し振りに顔を見せた。

 大学を中退し、自分の夢を実現したいと通い始めた専門学校も通う気が失せてしまった。そんな自分が嫌になり、これまで支援してくれた親に対して顔向けができず、死にたいとまで思い悩んでいたという。

 私に会う前、両親に心の内を打ち明けて理解されたとのことで表情に深いかげりはなかったが、一人暮らしの栄養不足も手伝い、頬はこけていた。

 昼飯を食べながら話を聞いていると、「だらしない」自分へのやるせなさと、もうやり直すには遅いのではと焦る気持ちを強く感じた。

 「見切りの付け方の速さ」に関しては、私の右に出るものはいないだろう。「だらしなさや怠け癖」についても同様だ。

 私は「3日で大学を退学し、数ヶ月で『大宅壮一東京マスコミ塾』をやめてしまった自分の例を引き合いに出して、彼に「やり直し」は何度だって許されるという持論を説いた。

 怠けてしまうことについても、私の煩悩の多さや怠け癖を正直に吐露して、自分を死に追い込むようなことではないことを話した。「三日坊主、大いに結構」論も彼に紹介した。

 私は子供の頃から周囲に「お前は三日坊主だ」と言われ続けた。そして、自分も一時期、そう信じていた。だが、ある時、自分を見つめなおしていた時、「確かに幾つかのことで、三日坊主だったが、そうではない事もたくさんある。言いたい人には言わせておこう」と“開眼”、それからは三日坊主と言われる事が苦にならなくなった。

 だから、若者達には「やってみようと思ったら前に進んでみよう」「嫌になったらやめてもいい」と、自分のやりたいことに臆病にならずに、まずは挑戦してみる大切さを強調する。そして、周りから三日坊主と言われる事を気にかけるなと説いている。ただそれには一つだけ条件が付く。失敗したら、そのことに正面からもう一度向き合って問題点を探る努力だ。それは、5年後、10年後、必ず自分にプラスになって返ってくるからだ。

 私は20代の頃、大げさに言えば、やることなすこと全て上手くいかず、「何で俺の人生はこんなに失敗の連続なんだ」と嘆いていた。ただ、無意識ではあったが、負けず嫌いも手伝って失敗したことの「検証」を怠っていなかった。それが、30代に入って良い結果をもたらすことにつながったと信じている。

 彼の場合も、大学を中退したり、専門学校に嫌気が差したからといってそんなに悲観することではない。コンビニで働き自活していることからして生活力はある。自分の描いていた理想や親の期待したレヴェルとは程遠いかも知れぬが、人に後ろ指を指されることではない。また、将来の夢が消え失せたわけではない。だから、やり直しは何度でも許されるのではと話した。

 彼にどれだけの気持ちの変化を与えられるかは分からないが、別れる時は明るい笑顔であったから私の話から何かを感じ取ってくれたように思う。「青春とは悩むことなり」とは、若かりし頃、酔っ払った大人から言われた言葉だが、去り行く彼の背中に聞こえない小声でそっとかけておいた。