金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【円ドル相場の行方】 購買力平価で円高方向か? あるいは、国の成長力の差で円安方向か?

2022-08-19 05:15:24 | 金融マーケット

 たまには『金融マーケット』をテーマに。今のままだと『将棋と馬に関する説法話』になってしまいそう・・

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 一時期、140円台へ突入する勢いだった円/ドル相場ですが、今は130円台前半で落ち着いた動きとなっております。

 

 ところで、先般、日銀OBの方とお話した際、

◎為替相場に理屈はない。

◎敢えて唯一の理屈を求めれば『購買力平価』しかないが、短期的には全く役に立つ指標にならない。

の2点について意見が一致。そのあとも意気投合して、いろいろな話を致しましたが、それでも、自分は、運用するファンドを持っていた頃は、『ビックマック購買力平価』だけは信じていたと申し上げました。

 すなわち、NYでのビックマックの値段と、TOKYOでのビックマックの値段から計算される、円/ドル相場の理論値であります。かつては、これが結構当たっていたのです。20世紀のNYでは、ビックマックは3ドル以下が定番で、TOKYOでは300円前後。したがって、円/ドルの理論値は、100円前後をうろうろしていて、これがよく相場と符合していました。

 しかし、今はというと・・。NYのビックマックの値段は7ドルを下ることはありません。一方、TOKYOでは値上げ後でも400円前後。これで、円/ドルの理論値を弾くと、何と60円前後に‼

 

 先ほどの日銀OBの方が、この数字を見て、「少しは相場に反映されていけば良いのですが・・」と溜息をついていらっしゃいました。

 

 正直な感覚を申し上げれば、今の為替相場は、購買力平価のバランスパワーよりも、日米の名目成長率の差を反映している流れになっているため、簡単には方向感は変わらないと思います。むしろ、日本国内の物価上昇のスピードが、企業努力や政府の補助金などによって、各国よりも遥かにゆっくりであることが、余計に為替相場に悪影響を及ぼしている気が致します。

 企業側には、ある程度の価格上昇を許したうえで、その代わり、ちゃんと賃金上昇もセットすることを条件にしてもらえば良いのです。今のままだと、物価を含めた名目成長率の格差がさらに広がってしまい、日本と先進各国の成長力格差が取り返しのつかないレベルにまで行ってしまいそう。

 

 このまま、先進国の中で、別世界の物価水準と賃金水準を維持して、また昭和の時代のような、低コストによる世界の工場を目指すのならば、それはそれで良いですが、あのころのように、労働人口は湧き出てきませんから、足りない労働人口をアジア各国から輸入しないといけません。

 その覚悟もないまま、目先の消費者への気配りだけをしていると、本当に悲惨な成長力格差が、現実のものになってしまいますよ‼


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