映画館で見損なった映画『ドライブ・マイ・カー』を、WOWOWでようやく観ることが出来ました。以下は、感想であります。
上映時間が2時間59分なので、「間延びするかな?」と覚悟はしていましたが、意外にリズム感良く、ストーリー場面が変化していくので、一気に観ることが出来ました。
正直言って、評点をすれば5点満点の3.5点くらい。まぁ、一度くらいは観ても良い映画、というのが率直な評価。
まず、その低評価の原因の一つが、原作の村上春樹氏の作風にあります。とにかく、映画化には向かない作風なのであります。人間の奥の奥を深く抉ろうとするあまり、「極端な人物設定が多いこと」と、難しい状況を正確に伝えようとするために「高度に論理的で演繹的な説明、すなわち、くどいセリフのやり取りが多いこと」で、観る側に共感を持ってもらうことが難しくなってしまうのであります。
まず「極端な人物設定」という意味では、今回は主人公の亡くなる最愛の妻。主人公とは相性も抜群で、人も羨むほど美しい女性なのですが、一人娘を幼い時に失ってから二重人格のようになってしまい、主人公といる時は貞節な妻、一方、留守の時には次々と男を家に呼び込んで情事に耽るという、とんでもなく極端な人物設定となっています。
このあたり、村上春樹作品では、「ノルウェイの森」のヒロインは、美しく可憐だが、性器に異常があって性行為に難がある女性という人物設定でしたし、「海辺のカフカ」のヒロインは、中性的で清楚な人物なのですが、やはり人並み外れたエロチシズムを醸し出す不思議な存在でありました。
とにかく、村上春樹作品には、普通のヒロインが出てこない‼
ちなみに、第2のヒロインであるドライバーの女性の人物設定は、まだ共感が得られやすい内容でした。すなわち、貧しい母子家庭で育ち、札幌に通う水商売の母親のために、最寄りの駅まで、毎日車で片道1時間ほど車で送り迎えをしていた。しかも、中学に入った時から‥。もちろん無免許のまま、運転を覚えて母親の送り迎えを毎日行っていた。
仕事で疲れている母親は、少しでも凸凹な運転をすると怒鳴るし殴るから、まるで重力を感じさせないレベルまで運用技術を磨かざるを得なかった。結果として、その技術を身に着けたため、プロのドライバーとして自立が出来た。
こちらのヒロインには、十分に感情移入が出来ました。
なお、主人公は役者であり、演出家でもあるのですが、妻の不貞を知っていながら、夫婦関係が壊れることを恐れて、何も言えない人物。一方で、妻と不貞を重ねていた若い役者は、衝動を抑えられない直情的な人物。この両極端な人物設定にも、あまり共感ができず、感情移入が出来ませんでした。
『村上春樹作品の映画化は難しい』
これが、この映画に対する私の感想であります。