歴代最高の邦画が『砂の器』『七人の侍』であるならば、歴代最高の洋画は何か?
と問われれば、ワタクシは間違いなく、『アラビアのロレンス』を挙げさせて頂きます。1962年に公開されたコロンビア配給の映画で、ご案内のとおり、巨匠デヴィッド・リーン監督作品です。
なぜ、『アラビアのロレンス』なのか?
大学1年生の時に、この映画を初めて新宿ミラノ座(もちろん、リバイバル上映でした)で観た際、そのスケールの大きさ、画像と音楽の美しさ、そして各キャラクターの素晴らしさに圧倒されてしまい、この映画に魅せられてしまいました。その後も、年に1回は必ず、この映画をフルで観ることにしておりまして、もうかれこれ、42年間続いております。
その間、ワタクシのお気に入りリストには、新たな映画が幾つも出入りしておりますが、結局NO.1の座には、ずっと『アラビアのロレンス』がドンと座っているのであります。
最も好きなキャラクターは、実は主役のロレンスではなく、オマー・シャリフ演じるハリト族の族長であるアリ。ロレンスを信じて、最後の一人になるまで行動を共にするハリト族の真の勇者。アラブの独立運動に身を投じて、時代の波に揉まれる人物を、新人オマー・シャリフが好演。アリ族長の冒頭の登場シーンは、ハリウッド映画の歴史の中でも、1位2位を争う名場面です。
次に好きなキャラクターは、アンソニー・クイン演じるハヴァイタット族の族長であるアウダ。アリの正反対の性格で、打算と狡猾さで族を率いる俗物的な人物。しかし、人たらしであり、人間としての魅力に溢れていて、ロレンスのことを評価しながら、同盟関係にある英国のことはもちろん、主君であるファイサル王子ですら、腹の底では信じていない。最も人間臭いアラブ人として描かれています。
そして、忘れてならないのが、アラブを率いてトルコと独立戦争を闘っている、アレック・ギネス演じるファイサル王子。近代兵器で武装しているトルコ軍に対して、ラクダと剣で闘う勇者であるとともに、同盟関係にある英国や仏国を、交渉で手玉に取る老獪な政治家でもあります。現在のヨルダンやサウジアラビアの王家の血脈に繋がる歴史的な人物がモデルでありますが、アラブ民族全体を束ねて背負って立つ、その気高い姿勢と、ロレンスをまるで道具のように使い、捨て去る冷酷さも兼ね備えており、その奥に秘める深遠な感情と表情を、あのアレック・ギネスがとても上手く演じています。
判りやすく言うと、「野心を内に秘めたオビ・ワン・ケノービ」=「ファイサル王子」という感じか。
これぞ、歴代洋画NO.1!
『アラビアのロレンス』は、ぜひ大画面で、また音響設備が万全の映画館でご覧下さい。オープニングやインターバルでの長い音楽演奏も、今の時代では大変新鮮に思えます。ご堪能あれ!!