民主主義国家というのは、非常に不安定な仕組みであるため、トップを選ぶプロセスが極めて重要になります。ただ選挙投票でトップを決めれば最適な結果になるというのは幻想にすぎません。むしろ、そうした「選挙主義」の仕組みでは最も馬鹿げたプロセスになりがちで、「パッと見が良い人」「民衆受けする公約」を掲げるポピュリズム候補が、勝利を収める確率が高くなってしまいます。結果、政治も国家も不安定になってしまいます。
トップに相応しいトップを選ぶために、アメリカでは1年半もかけて大統領選を繰り広げます。さまざまな角度からふるいにかけて、大統領選に残る二人の候補に絞り込んだうえで、3~4回にわたる「テレビ討論会」を経て、国民全員による投票により決定します。そして、次の4年を託すトップが決まると、共和党支持者だろうが民主党支持者だろうが、新大統領を皆で祝福するのがシキタリであります。
しかし、日本の場合は、自民党の総裁選を2~3週間程度やって、それで決めてしまうプロセスがもう何十年も変わっていません。二大政党制を導入して、常に総選挙がトップを決める選挙にしようという試みもありましたが、第2党がだらしないため、それも再現が不可能な状況になっています。
上場企業のトップを決める方法では、「指名委員会」を導入する会社が増えており、次のトップに相応しい条件、「計画の実行力」「法務知見」「財務知見」「危機管理の知見」「ITの知見」「幅広い人的ネットワーク」「外部との交渉力」「外部への発信力」など、企業トップに必要な能力マップを定めながら、何十名の候補者の中から、数年かけて絞り込んで、最後は社外取締役が中心となって決定するというプロセスが定着し始めています。
もっと大事な、国家のトップを決めるプロセスが、2~3週間程度の、しかも急な準備で行う総裁選というのは、民主主義国家として、非常に残念な状況でなりません。
政権与党ならば、そろそろ「国家のトップに必要な能力マップ」を定めて、それに相応しいリーダーを育て、選んでいくプロセスを、広く国民に示すべきだと、私は、自民党の組織に求めたいと思います。
1年交代で、総理大臣が次々替わってしまう時代に逆戻りするリスクが、非常に高まっていると思わざるを得ません。