金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【雑感】 二二六事件を別の視点で考えてみる

2020-02-28 07:05:13 | 雑感

 戦前の歴史の中で、最も忌まわしいクーデター未遂事件として、我々が学んだのが二二六事件です。この事件は、映画でもドラマでも、繰り返し繰り返し、様々な視点で描かれているので、実際に起こった事象については、私たちはほぼ正しい認識を持てているとは思っています。

 しかし、その時の時代背景について、いやむしろ、時代の空気のようなものを、我々は正しく理解しているかというと、そこまでには至っていないのでしょう。例えば、あの時代の大臣クラスの方々は、殆どが幕末の頃は貧しい下級武士だったが、明治になってから官僚や軍人を経て政治家となり、功成り名を遂げた方々ばかりです。

 もともと大名だった人など一人もおりません。その割には、一代でかなり立派なお屋敷を購入し、しかも別邸を幾つも持っていた方も少なくありません。有名な邸宅が今でも保存されていますので、江戸東京博物館や明治村で確認してみて下さい。

 明治・大正時代とはいえ、官僚や軍人の給与で、そんなに立派な邸宅を幾つも持てるはずはありません。政治家の給料も同じです。旧時代から近代国家へ衣替えする時、これは日本でも中国でもインドでも一緒だと思いますが、官僚や政治家にはインフラ整備を決める決定権があり、その周辺には多くの利権が存在しています。そして政商と呼ばれる人たちからは、その利権を狙った多額の賄賂が、官僚や政治家、あるいは一部の軍人の間を行き交うのは当たり前だったと思われます。こうした慣行は、時代が安定して成熟してくると粛清されることになりますが、日本でもそれが解消できたのは平成になってからでしょう。

 冒頭に申し上げたとおり、二二六事件は戦前の歴史の中でも、最も忌まわしい事件ですが、東北の貧農農家の娘たちが身売りを迫られたりした時代、大邸宅に住んでいる政府要人たちを「私腹を肥やす悪の元凶」として天誅の対象とすることに、多くの国民は違和感を持たない時代だった‥。その時代の空気を私たちは知らなすぎると思います。


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