4月25日に出版された本なので、今さら何? と言われるかもしれませんが、「平成金融史」は面白い本なので紹介させて頂きます。
私自身も4月下旬に、平成時代を振り返るコラムを書きましたが、この本はまさに平成金融の混乱した状況を、極めてリアルに振り返ってくれています。住専問題から金融危機、柳沢金融担当時代から竹中プラン、リーマンショックから黒田バツーカまで、政治・行政・中央銀行からの視点も交えて、生々しい現実を伝えてくれています。
90年代から始まる日本の金融危機の歴史は、確かに準備不足が事態を大きくしたことは否定できませんが、このような事態は誰も経験したことがないため、目の前にある危機を対応する時、普段の延長線上で常識論をかざす人には全く解決力はないこと、そして一瞬の対応の遅れにより、想像できないようなスピードで問題が拡大することを教えてくれています。当時の日本の失敗をよく研究していたはずのアメリカでさえ、リーマンショック時には初期対応を間違えて、問題を加速度的に大きくしてしまいます。そして何時の時代でも、こうした混乱を収拾するためには、冷静かつ大胆な人間の判断と、一定の休止期間のおかげで、間一髪危機を乗り越えてきた事実を、この著書は教えてくれています。
リーマンショックからすでに10年が経過しましたが、その後の金融決済システムは24時間365日対応へ変わり、またスマホの普及により、銀行以外での電子決済が広がりつつあります。「危機」と呼ばれる事態は、いつでも不意にやってきます。そして、リアルタイム決済や24時間マーケットは、万一金融危機が発生した場合の対応のチャンスを、限りなく圧縮するものであることを忘れてはなりません。
金融危機が発生した場合の対応の難易度は、あの頃よりも格段に高くなっているのです。